全国のドクター8,924人の想いを取材
クリニック・病院 160,830件の情報を掲載(2021年6月18日現在)

  1. TOP
  2. 症状から探す
  3. 排尿障害の原因と考えられる病気一覧
  4. 溢流性尿失禁
  1. TOP
  2. 泌尿器の病気一覧
  3. 溢流性尿失禁
032

こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生

いつりゅうせいにょうしっきん溢流性尿失禁

概要

「自分で尿を出したいのに出せないが、少しずつ漏れてしまう」という状態。この病気には、排尿時に膀胱(ぼうこう)を十分に空にすることができなくなり、どんどん尿がたまる排尿障害が必ず前提としてある。排尿障害を起こす代表的な疾患には、男性に多く見られる前立腺肥大症や前立腺がんなどがある。他にも、糖尿病や子宮がんの手術後などに膀胱の知覚や排尿筋を支配する神経にダメージが生じ発症する神経因性膀胱や、子宮脱で尿道が圧迫されている場合などにもみられる。残尿があるとたまった尿に細菌が繁殖し尿路感染症が起こりやすくなったり、腎臓から膀胱への流れが妨げられ腎不全を引き起こしたりすることがある。

原因

通常、尿路の閉塞によって尿の流れが妨げられる、もしくは神経の損傷や排尿筋の筋力低下によって膀胱の収縮力が弱くなることが原因で起こる「排尿障害」が前提としてある。排尿障害を引き起こす疾患の代表的なものには、肥大化した前立腺が尿道を圧迫する「前立腺肥大症」や、結石により尿のスムーズな流れが妨げられる「膀胱結石」や「尿道結石」のほか、尿道の内側が狭くなるために尿が出にくくなる「尿道狭窄症」、糖尿病による末梢神経障害や、中枢神経の障害によって起こる「神経因性膀胱」などがある。また、女性の場合、子宮にできる良性腫瘍の「子宮筋腫」や、出産や加齢、肥満が原因となって、子宮や膀胱を支える骨盤底筋がゆるみ子宮や膀胱が体外に飛び出る「子宮脱・膀胱瘤」も原因の一つとなる。

症状

「自分の意思とは関係なく、ダラダラと尿が漏れる」といった症状のほか「排尿を始めるまでしばらく時間がかかる」「尿意があるのかどうかはっきりしない、尿が少しずつしか出ない(排尿の勢いが弱い)、力を入れないと尿が出ない、残尿感がある、などの症状が見られる。この状態を放置していると、膀胱にたまっている尿に細菌が繁殖して腎臓に達し腎盂腎炎を引き起こしたり、最悪の場合腎不全などの重篤な症状を引き起こしたりすることもある。また、尿もれによる下着の汚れや臭いが与える自分や周囲の人間への不快感により、円滑な社会生活が妨げられることも考えられる。

検査・診断

まず医師による問診により「どのような時に尿が漏れるか」を見極める。また、排尿の経過を「排尿日誌」に記録することで、排尿状態や尿失禁の程度を把握し、後の検査や治療の際に資料として役立てる。その後行われる具体的な検査には、膣の外側と内側から超音波を当てて尿道や骨盤底筋の動きを見る「内診・超音波検査」や、膀胱に細い管を入れ、そこから少量ずつ水を注ぎ膀胱や尿道の圧力を測定する「膀胱・尿道内圧測定」、測定器のついたトイレで排尿することで、その勢いと時間を測定する「尿流量測定」、超音波で膀胱内の尿量を測る「残尿測定」などがある。大量の残尿が認められる場合、溢流性尿失禁の可能性が疑われるので、尿検査で細菌感染があるかどうかも調べる。なお、長期にわたり症状が持続していた場合、腎臓で作られた尿がうまく流れなくなり、水腎症を来たしている場合もあるため、超音波検査などでその有無を確認する。

治療

前立腺肥大症などによって起こる「尿路の閉塞」が原因の場合、通常は手術で肥大した前立腺の一部または全体を摘出し治療する。しかし、薬の服用により前立腺の縮小や肥大を止められる場合があるので、手術を避けることも場合によっては可能。なお、膀胱収縮を抑制する作用がある抗コリン薬のように、前立腺肥大症の治療に不用意に用いると、膀胱にたまった尿が出せなくなる尿閉や溢流性尿失禁を来たす薬品もあるので投薬の際は充分な注意が必要だ。再発性の尿路感染症や腎臓で作られた尿がうまく流れなくなる水腎症といった合併症を予防するため、カテーテルを膀胱内に挿入して膀胱から一定時間ごとに尿を排出する「間欠導尿」という方法をとることもある。

予防/治療後の注意

溢流性尿失禁を予防するには、その原因となる病気を予防する、または、進行しないよう心がけることが重要だ。例えば、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病との関連も指摘されている前立腺肥大症の場合、普段の食習慣や運動習慣を見直すことが予防につながる。また、抗コリン薬や抗ヒスタミン薬などは、溢流性尿失禁の原因にもなり得るので、気になる場合は医師や薬剤師に相談する必要があるだろう。また、この疾患を持つ人が尿を出し切ろうとして腹部に力を入れ過ぎることは、膀胱や尿道にさらなる負担をかけることになるので充分な注意が必要である。

032

こちらの記事の監修医師

東京医科大学八王子医療センター

泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生

1994年東京医科大学医学部卒業。同大学病院、癌研究会附属病院(現・がん研究会有明病院)勤務、杏林大学医学部付属病院泌尿器科講師などを経て2014年より現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。