
こちらの記事の監修医師
国立大学法人 大阪大学医学部附属病院
泌尿器科科長 野々村 祝夫 先生
にょうろかんせんしょう尿路感染症
最終更新日:2022/04/22
概要
2つの腎臓で尿が作られ、膀胱を経由して対外に排出されるまでに通る道(尿路)が細菌などに感染することをさします。通常、健康な人の尿には感染性のある細菌は存在していないため、尿の出口付近で細菌に感染してしまうことが原因だといわれています。炎症部位によって2つに分類され、尿の出口から膀胱までの尿道が感染する「下部尿路感染症」には、膀胱炎や尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎など特徴があります。一方、下部尿路感染症が悪化し、膀胱から腎臓までの尿管が感染する「上部尿路感染症」には、腎盂腎炎などが挙げられます。さらに、急に強い症状が出る「急性」と徐々に症状が出てくる「慢性」に分類される他、結石やがんによって引き起こされる「雑性尿路感染症」、小児が発症した場合の「小児尿路感染症」などもあります。
原因
尿の出口から細菌が侵入し、膀胱や腎臓に達して増殖することが主な原因となっています。中でも大腸菌の感染が多く、他にはウイルスや真菌、寄生虫などが原因となることもあります。これらの原因は、通常ならば侵入したとしても排尿時に一緒に排出されるため、必ずしも病気を引き起こすわけではありません。しかし、トイレを長時間我慢し続ける他、結石やがんなどで尿路に閉塞が生じたり、適切な排尿を妨げる機能障害があったりした場合などに、細菌が増殖しやすくなることがわかっています。
症状
膀胱炎などの下部尿路感染症の場合、排尿時に痛みを感じる排尿痛をはじめ、頻尿や残尿感、血尿、尿の濁りなどが見られます。症状が悪化し、腎盂腎炎などの上部尿路感染症になると、38度以上の発熱が出てくることがほとんどです。さらに、腎臓は背中側の左右にあることから、腰痛や背部痛などの痛みを感じることもあります。また、吐き気や嘔吐、体重低下、食欲不振などが現れるケースもあります。新生児や乳児の場合には、発熱や「機嫌が悪い」といった症状に限定されるのに対して、2歳以上の小児は成人と同様に排尿痛などを感じるのが特徴です。高熱の場合は腎盂腎炎の可能性もあるため注意が必要です。
検査・診断
まずは尿検査を実施します。そこで尿に細菌が増えている際にそれを退治するために増加する白血球の量をチェックします。健康な人でも尿の出口付近に細菌や白血球などが存在する場合があるため、途中からの尿を取って検査することが大切です。多くの白血球が発見された場合、膀胱炎と診断されます。さらに、発熱や腰痛、背部痛などが見られる場合には腎盂腎炎と診断します。その他、必要に応じて細菌の種類を特定する培養検査や血液検査、画像検査も行います。
治療
発熱を伴わない場合、抗菌薬の服用により24時間以内に症状の改善が見込めます。3日間服用すれば完治も期待できます。その間、水分をたくさん取ることも重要です。一方、発熱を伴う腎盂腎炎の場合、1週間から2週間程度の抗菌薬の服用が必要になります。入院による点滴治療となるケースも少なくありません。なお、症状が良くなったとしても、処方された薬は最後まで飲みきることが大事です。途中でやめてしまうと再発につながる恐れもあります。また、残尿が多く、腎臓に尿や細菌がとどまっている場合には膀胱内視鏡を使ってカテーテル治療を実施することや緊急手術で尿を排出する場合もあります。なお腎盂腎炎の場合、炎症と細菌の増殖を抑えるために、腎臓のある背中側を氷枕などで冷やすことも有用だといわれています。
予防/治療後の注意
たとえ尿路に細菌が侵入したとしても、基本的には排尿時に一緒に対外へと排出されます。そのため、日頃から水分をたくさん取り、排尿を我慢せずにいることが大切です。また、尿の出口付近を清潔に保つことも欠かせません。特に女児の場合、排便の際には前から後に拭くように指導してください。

こちらの記事の監修医師
泌尿器科科長 野々村 祝夫 先生
1986年大阪大学医学部卒業。1990年同大学大学院医学系研究科博士課程修了。その後は東大阪市立中央病院(現・市立東大阪医療センター)泌尿器科勤務や、米国国立衛生研究所留学を経て、1994年に大阪大学医学部泌尿器科の助手に。2010年より教授を務める。2018年4月に大阪大学医学部附属病院の副病院長に就任した。同年8月からは大阪大学総長補佐も兼任している。
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