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慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授 青木 大輔 先生

こちらの記事の監修医師
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
教授 青木 大輔 先生

しきゅうがん 子宮がん

概要

子宮がんは子宮にできる悪性腫瘍の一般的な総称です。子宮は下部の筒状の「子宮頸部」と上部の袋状の「子宮体部」とに分けられますが、できた場所によって、それぞれ「子宮頸がん」「子宮体がん」に分類されます。子宮頸がん子宮体がんでは病態がまったく異なるため、近年では子宮がんで一括りにはせず、「子宮がん」と呼称されることもなくなってきています。子宮頸がんは子宮の入り口付近に発生することが多いので診察や検査で発見されやすいがんです。子宮体がんは子宮の内膜から発生することから子宮内膜がんとも呼ばれます。国立がん研究センターによると、日本の新規患者数は子宮頸がんが年間約1万1,000人、子宮体がんが年間約1万6,000人です。若い人に多いのが子宮頸がんで20歳代から増加して30歳代後半がピーク。一方の子宮体がんは40歳ごろから増加して50から60歳代がピークです。どちらのがんも、早期発見が重要となります。

原因

子宮頸がん子宮体がんは発生原因が異なります。子宮頸がんのほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされることがわかっています。HPVは性的接触によって感染します。90%の人では免疫の力で排除されますが、10%の人では排除できずに感染が持続します。そのうちの一部が、がんになる前の「前がん病変」を経て、悪性の子宮頸がんに進行します。一方、子宮体がんの発生にはエストロゲンという女性ホルモンが関わっています。このホルモンは子宮内膜の発育を促す働きを持っていますが、多過ぎると子宮内膜増殖症という病気につながり、その一部が前がん病変を経て子宮体がんに進展します。子宮体がんになりやすいのは、未出産、肥満、月経不順、乳がんや更年期障害で過去にエストロゲンの単独療法を受けたといった要素を持つ人です。ただ、高齢者の子宮体がんはエストロゲンとは無関係で、遺伝子の異常などで前がん病変を経ずに発症すると推測されています。

症状

子宮頸がんは早期ではほとんど自覚症状がありません。子宮頸がん検診で見つかることも多い病気です。進行するに従って異常なおりもの、月経以外の出血、性行為の際の出血、下腹部痛などが出てきます。一般的に「子宮がん検診」と呼ばれているものは子宮頸がん検診です。子宮頸部をこすって細胞を採取し顕微鏡で調べる細胞診という検査を行いますが、前がん病変の発見にもつながるため、20歳以上の方であれば2年に1度、必ず受けて下さい。一方、子宮体がんの主な症状は不正性器出血です。子宮体がんは早期でも出血が見られることが多いので、閉経後や更年期に不正出血があるときは特に注意しましょう。

検査・診断

問診で子宮頸がんを疑ったときは、まずがん検診と同様の細胞診検査を行います。これでがん、または前がん病変の疑いがあるときは、専門施設でコルボスコープという拡大鏡による病変部の観察と、子宮頸部の組織を採取しての病理組織検査を行い、前がん病変の程度やがんがどの段階にあるのかの診断を行い、ある程度進行していれば、画像検査や内視鏡検査で子宮の周辺臓器・組織、リンパ節、他の臓器への浸潤や転移を調べます。子宮体がんを疑ったときは、子宮の内部に細い器具を挿入して、子宮内膜の組織を採取して病理検査を行います。高齢者などでこの検査が困難な場合は、超音波検査で診断することもあります。がんであればMRやCTといった画像検査でがんの大きさや広がり、転移を調べるのは子宮頸がんと同様です。

治療

子宮頸がんは、前がん病変の段階で見つかることがありますが、この段階から治療できます。その場合、子宮頸部の一部を切除する子宮頸部円錐切除術で将来的な妊娠の可能性を残せます。がんのステージ(進行期)が進むと子宮全摘出が基本で、さらに進むと周辺組織を含めて広く切除する必要が出てきます。がんが子宮頸部にとどまって小さなうちは子宮体部と卵巣を温存して妊娠可能性を残す方法もあります。がんが周辺組織に広がっている場合は放射線治療、薬物治療と併用し、さらに進行した場合や再発した場合は抗がん剤や分子標的薬による薬物治療を行います。子宮体がんは子宮と卵巣、卵管をすべて摘出する手術が基本です。ステージが進めばより広範囲の切除を行います。子宮頸がんでも子宮体がんでも進行度が高く手術ができない場合は、抗がん剤が選択されます。また、術後の再発リスクを下げるために抗がん剤による薬物治療を行う場合もあります。再発時は主に抗がん剤が選択されます。

予防/治療後の注意

子宮頸がんにはヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種という予防法があります。世界70か国以上で国のプログラムに組み込まれ、日本でも定期接種ワクチンに位置づけられています。日本では接種後に多様な症状が報告され、自治体による積極的勧奨が中断されていますが、日本産科婦人科学会をはじめ多くの学会が勧奨再開を要望しています。子宮体がんは特別な予防法はありません。禁煙、バランスの取れた食生活、適度な運動という一般的な病気の予防を心がけましょう。

慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授 青木 大輔 先生

こちらの記事の監修医師

慶應義塾大学医学部産婦人科学教室

教授 青木 大輔 先生

1982年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学医学部産婦人科にて研修。1988年より2年間、アメリカのLa Jolla Cancer Research Foundation(現・Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute)で博士研究員として活躍。帰国後は国立東京第二病院(現・独立行政法人国立病院機構東京医療センター)にて研鑽を積んだ後、1991年より慶應義塾大学医学部産婦人科で助手・専任講師を務める。2005年より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医などの資格を持つ婦人科疾患のスペシャリスト。