
こちらの記事の監修医師
学校法人昭和大学歯科病院
顎顔面口腔外科 准教授 鎌谷 宇明 先生
ぜっつうしょう舌痛症
最終更新日:2022/02/16
概要
中高年の女性に好発する疾患で、口腔灼熱症候群の舌に限られる場合を舌痛症と呼ぶ。いわゆる口腔の粘膜に明らかな病変がないにも関わらず、常に舌の痛みを感じる疾患である。舌に何らかの原因がある場合には、器質的要因がある二次性舌痛症と呼んでいる。
原因
現時点において、はっきりとした原因はわかっていない。 この疾患の発生機序は、心因的な要因が原因とされており、精神科の疾患の分類で持続性身体表現性疼痛障害あるいは慢性疼痛に相当するとされている。近年の研究の結果、心理的要因と末梢および中枢神経障害性疼痛が複合する状態であるとされている。
症状
女性の患者が大多数を占め、主に更年期以降の患者である。そのため、原因としてエストロゲンの減少や、中高年のうつや神経症などの精神科領域の疾患の関与が疑われている。実際に、心理テストで不安障害と判定されたり、舌痛症の約4割は精神疾患で通院中との報告があったりもする。痛みは一般的に舌の前方2/3が多い。痛みの性質はヒリヒリする、焼けるような・やけどをしたような、または痺れた感覚と訴えることが多い。痛みは安静時に増悪し、会話や食事の際、何かに集中していると痛みは忘れてしまうという傾向がある。睡眠中に痛みを訴えることはない。随伴症状として味覚や口腔乾燥感を訴えることもある。
検査・診断
1日2時間以上は痛みがあり、それが3ヵ月以上も続いている場合で、臨床的に明らかな原因となる病変を認めないと舌痛症と診断される。二次性舌痛症の場合には、耳鼻咽喉科、内科、皮膚科や歯科、歯科口腔外科を受診し、その原因となる舌の不随意運動、ウイルスや真菌による粘膜炎、口腔扁平苔癬(へんぺいたいせん)や天疱瘡、類天疱瘡などの粘膜疾患、鉄やビタミンB12欠乏症による貧血、義歯や補綴物や歯の鋭縁などを治療しないと症状は消失しない。そのため、ウイルスや貧血に関する血液検査、天疱瘡や類天疱瘡に関する血液検査や病理検査、真菌の培養検査、義歯や歯に関する診察などが行われる。舌の粘膜の疾患が否定された場合には、精神科や心療内科の医師による診察が必要となることもある。
治療
原因がわかっていない疾患であることから、根本的な治療法はまだ確立されていない。器質的要因のない、いわゆる舌の粘膜の病変が認められない場合や、精神的要因が併存する場合には、精神科や心療内科へ紹介されることがある。心因性のストレスなどが影響していると考えられる場合は、抗うつ薬、抗てんかん薬などによる薬物療法が行われる。また漢方薬を用いた治療を行う医療機関もある。病気にしっかりと向き合うことで痛みをコントロールし、不安を緩和することで舌痛の症状を抑制するために「認知行動療法」が行われることもある。認知行動療法については、薬物療法と相互補完的に行われることが多く、専門的な知識や経験が必要であることから、精神科や心療内科の医師、さらに臨床心理士などによる適切な治療を受ける必要がある。このように舌痛症は歯科や歯科口腔外科での治療は困難で、医師の治療を受けることが適切となるが、歯科疾患があれば虫歯や義歯の不具合を治すなど、口腔内を清潔に保てるように歯科医師の治療を受ける必要がある。
予防/治療後の注意
精神的な疾患との関連性が考えられているため、ストレスのかからない暮らしを心がけ、不安やうつなどがあれば、精神科や心療内科で治療を受けることが舌痛症の予防にもつながる。また、歯科医師による虫歯や歯周病、義歯の治療や定期的な歯科疾患の予防処置を受けるなど、口腔内を清潔に保つことも重要である。

こちらの記事の監修医師
顎顔面口腔外科 准教授 鎌谷 宇明 先生
1995年東北大学卒業。1999年東北大学大学院修了。高知医科大学、鶴見大学を経て2016年より現職。日本口腔外科学会口腔外科専門医。
都道府県からクリニック・病院を探す
関東 | |
---|---|
関西 | |
東海 | |
北海道 | |
東北 | |
甲信越・北陸 | |
中国・四国 | |
九州・沖縄 |
関東 | |
---|---|
関西 | |
東海 | |
北海道 | |
東北 | |
甲信越・北陸 | |
中国・四国 | |
九州・沖縄 |