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東京慈恵会医科大学森田療法センター 名誉センター長 中村 敬 先生

こちらの記事の監修医師
東京慈恵会医科大学森田療法センター
名誉センター長 中村 敬 先生

うつびょううつ病

概要

脳のシステムにトラブルが生じたせいで起こる、「憂鬱(ゆううつ)な気分」を主な症状とする病的な精神状態をうつ病という。うつ病は「興味や喜びがなくなる」、「疲れやすくなる」、「活動性が減少する」などの主症状が表す通り「精神と体の両面にわたり生命力が低下する病気」なので、しばしば身体的な症状を伴うこともある。通常憂鬱な状態は、本来人間が持つ自然治癒力で時間とともに和らいでいくものだが、これが改善しなくなったり、さらに悪化して仕事や家事、勉強、人との関わりなど、日常生活への支障が出てくれば「病気」として捉えられることになる。

原因

うつ病の原因は一つにはしぼり切れない。生活の中で起こるさまざまな要因が複雑に結びつきうつ病の「要因」となっている。最もきっかけとなりやすいのは「環境要因」だと言われている。環境要因には「家族や親しい人などの死や別れ」、「仕事や財産、家庭など、大切なものの喪失」、「人間関係のトラブル」、「環境の変化」などが挙げられる。また、性格の傾向もうつの発生要因の一つだ。「脳のエネルギーの欠乏」をうつ病と呼ぶのだとすると、「義務感が強い、仕事熱心、完璧主義、几帳面、凝り性、他人への配慮を大切にする」といった、エネルギーの放出が多い人間は、うつ病の発症リスクが高いと言える。他にも、遺伝的要因や慢性的な疾患によって、「セロトニン」や「ノルアドレナリン」などの、脳内で人の感情に関わる情報を伝達する物質が正常に機能していないことも要因として考えられる。

症状

うつ病の主要な症状としてまず挙げられるのが「楽しみや喜びの喪失」「良いことが起きても憂うつな気分は変わらない」「趣味が楽しめない」というものだ。こういった症状が2週間以上継続することをうつ病と呼ぶ。こういった症状を早い時点で自覚できれば、未然に発症を防ぐことにつながるが、これらの症状は生活習慣病とも似ており、なかなか自覚しにくい場合があるので、不安な場合は専門医に意見を仰ぐことが重要だ。また、新しいうつ病自覚のための尺度として注目されているのが「睡眠」だ。「寝つくまでに30分以上かかる、途中で何度も目が覚める、朝異常なほど早く目が覚める、熟睡感がなくなる」といった自覚症状があれば、まずは生活習慣を見直し、脳のエネルギー欠乏を未然に防ぐこともうつ病回避の方法の一つだ。

検査・診断

診断にあたりまず医師は、患者の尿や血液、体温や血圧、体重測定などを行い、現在の抑うつ状態が身体的な疾患によるものなのかを確認する。また、何か薬を服用している場合も抑うつ状態との関連を探る。その後、身体的な疾患の場合と同じような要領で「現在の悩み」や「生活の中での変化」などについて問診を行う。患者の家族などが診察に同席している場合、周囲から見た患者の状態について質問されることもある。医師はこの際、会話の内容だけでなく表情や全体的な様子からも病状を判断する。なお、うつ病の診断基準の参照には、アメリカ精神医学会がまとめた診断基準である「DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)-5」を用いている。

治療

うつ病の治療には「休養」、「薬物療法」、「精神療法、カウンセリング」の3つの柱がある。「休養」の場合、仕事を減らす、残業を控えるといった軽いレベルから、仕事を一定期間休んで自宅療養したり入院したりというレベルまで、患者の状態によって大きな幅がある。「薬物療法」の場合、セロトニンやノルアドレナリンなど感情の調節に関わる神経伝達物質が正常に機能するようサポートする「抗うつ薬」を使用する。抗うつ薬は、服用から効果の発現までおおむね2週間ほどかかることが特徴だ。すぐに効果が出ないからと言って服薬を自分の判断で止めたりせずに、主治医の指示に従って一定期間服用する必要がある。現在抗うつ薬は副作用が少ないものも開発されているが、眠気や胃腸症状などを自覚することがあるので、それらの症状がつらい場合は医師に相談し、指示を仰ぐ。「精神療法・カウンセリング」には「認知行動療法」、「対人関係療法」、「森田療法」などさまざまな治療法があるが、どれも共通しているのは「患者自身が治療へのモチベーションを維持し続けなければならない」という点だ。医師との信頼関係を築き、二人三脚で治療を進めていく姿勢が重要となる。

予防/治療後の注意

うつ病の治療の期間は「急性期、回復期、寛解後」の3段階に大別される。そして、急性期にいちばん重視すべきなのが休養、回復期は薬物療法と生活指導、寛解後の再発予防には精神療法・カウンセリングだといわれる。うつ病が寛解した後、自己判断により早期に服薬を中止してしまうと、うつ病が再発してしまうこともあるので、薬を減らすタイミングは主治医とよく相談し、根気強く再発予防に努めることが重要だ。

東京慈恵会医科大学森田療法センター 名誉センター長 中村 敬 先生

こちらの記事の監修医師

東京慈恵会医科大学森田療法センター

名誉センター長 中村 敬 先生

人間心理に関心を持ち、大学は哲学科へ進んだが、より実践的な学問を求めて東京慈恵会医科大学へ入学。1982年に卒業し、同精神医学講座へ入局。同大学院修了。 第三病院院長兼同精神神経科診療医長を経て、現在は東京慈恵会医科大学森田療法センター名誉センター長と学校法人慈恵大学参与を務めている。