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千葉大学医学部附属病院 認知行動療法センター センター長 清水 栄司 教授

こちらの記事の監修医師
千葉大学医学部附属病院
認知行動療法センター センター長 清水 栄司 教授

ふあんしょう(ぐん)/ふあんしょうがい不安症(群)/不安障害

概要

「不安」は何が怖いのかよくわからなくて漠然としている場合の感情であるのに対し、「恐怖」は何が怖いのか対象が明らかです。不安症群は、恐怖や不安の病気(不安症)が複数集まった一つのカテゴリー(群)です。英語ではAnxiety disordersという複数形で、以前は不安障害と和訳されていましたが、よりわかりやすく、誤解や不快感を与えない表現として「不安症」という呼称が広まりつつあります。不安症は、1.全般不安症、2.パニック症、3.広場恐怖症、4.社交不安症、5.限局性不安症、6.分離不安症、7.場面緘黙などがあります。「不安」は、人を含む動物が危険(脅威)を感じたときに起こる感情です。不安を感じると、自律神経系が交感神経系優位となって、胸がどきどきしたり、息がはあはあと荒くなったり、汗をびっしょりとかいたりという身体反応(闘うか逃げるか反応)が見られます。遺伝や経験、環境などの影響で人によって不安の感じやすさ(不安感受性)の差はありますが、誰もが感じる感情です。不安が日常生活に支障を来すほどに過剰に起きるようになったり、ふさわしくない状況で生じたりする場合、不安症と診断されることがあります。

原因

不安症を発症する原因はまだよくわかっていません。不安のなりやすさは、ある程度遺伝するともいわれています。一方で、育った環境や経験の影響も大きいとされています。不安症の患者は、不安や恐怖を感じる脳の部位(扁桃体)が過剰に活動していることを明らかにする研究も報告されています。

症状

症状は、それぞれの不安症によって異なります。全般不安症は、いろいろなことが次から次へと不安になって、四六時中、心配するのをやめることができず、リラックスできずに苦悩する病気です。パニック症は突然、激しい動悸、息切れ、呼吸困難、発汗、吐き気、めまい、ふらつきなどの「パニック発作」が起きて、その時の恐怖感が忘れられず、また同じようなパニック発作が起きるのではないかと恐ろしくなり、さまざまな日常生活の障害が起こる病気です。広場恐怖症は、突然、苦しくなったときに助けを得られない状況にいることへの恐怖から、電車やバスなどの公共交通機関に乗ることができなくなったり、広い場所や自宅に一人でいられず、誰かに一緒にいてもらわないといけなくなったりしまう病気です。社交不安症は、人と関わる対人(社交)場面が怖くなってしまって、不登校や引きこもりにつながってしまうこともある病気です。限局性恐怖症は、一つの対象に対する過剰な恐怖で、動物(ヘビ、クモなど)、自然環境(高所、雷、水など)、血液・注射、嘔吐、窒息などの恐怖症があります。

検査・診断

不安症は、基本的に医師の問診によって診断します。しかし、動悸、息切れ、呼吸困難、発汗、吐き気、めまい、ふらつきなどの身体反応が、身体的な疾患によって起きている場合を除外する必要がありますので、身体診察、血液検査、心電図検査などを行う場合もあります。問診によって、不安・恐怖・苦痛などの精神症状、動悸や息切れなどの身体症状の有無や程度、どんなタイミングで症状が出て、どんな行動を取るのか、思い当たる原因があるのかなどを聞き取ります。不安症のタイプによって診断基準は異なりますが、不安によって強い苦痛が生じ日常生活に支障が出て、それが長期にわたるか何度も繰り返されているような場合は不安症が疑われます。問診の結果から、不安症のどの病気に当てはまるかの診断も実施します。

治療

身体疾患が原因でなければ、不安症に対する治療は薬物療法、あるいは認知行動療法と呼ばれる精神療法(カウンセリング)が中心となります。薬はSSRIと呼ばれる抗うつ薬がよく使用されます。認知行動療法は、週1回50分前後で16回ほどを目安に、医師や公認心理師などの治療者(セラピスト)とマンツーマンで行う個人療法と集団療法があります。不安を生じさせるような考え方や行動の癖に気づいて、バランスを取れたものに見直すようにしたり、不安な状況に段階的に慣れていくような練習をしたりといった治療を行っていきます。

予防/治療後の注意

不安症は、分離不安症や場面緘黙のように小さな子どもにも見られるので、周囲の大人が不安症だと気づいてあげることが重要です。限局性恐怖症は、その対象に近づかないようにすれば治療は必要ないという場合もありますが、限局性恐怖症から始まって、次に社交不安症や全般不安症につながってしまうケースも。「怖がり」は性格であって病気ではないと患者本人も家族も誤解し、不安症だと知らないまま相談をせずに数年一人で苦しむ状態が続いていた、ということが多く見られます。保護者は不安症の可能性について注意を払ってください。また、過剰な不安を和らげようと、大人ではアルコールを乱用したり、子どもではネットやゲームに依存したりするなど、依存症を併発することもあります。依存症のもとにある不安症も見逃さないようにしましょう。

千葉大学医学部附属病院 認知行動療法センター センター長 清水 栄司 教授

こちらの記事の監修医師

千葉大学医学部附属病院

認知行動療法センター センター長 清水 栄司 教授

1990年千葉大学医学部卒業、同年より千葉大学医学部附属病院入局。1997年千葉大学大学院医学研究科博士課程(内科系精神医学)修了。医学博士。プリンストン大学(米国)分子生物学講座客員研究員を経て、現在、千葉大学大学院医学研究院(認知行動生理学)教授。千葉大学子どものこころの発達教育研究センター長も兼務する。認知行動療法の専門家として教育研究実践を進める。日本認知・行動療法学会、日本不安症学会の理事も務める。