こちらの記事の監修医師
神尾記念病院
院長 神尾 友信 先生
めまい めまい
最終更新日:2024/01/31
概要
一般に「めまい」と言われるものには、さまざまな症状があります。天井や自分の周囲がぐるぐる回る、体がぐらぐら、ふわふわした感じ、気が遠くなりそうな感じ、目の前が真っ暗になる感じ、物が二重に見える、などです。立ち上がったときに目の前が暗くなるような場合は「立ちくらみ」と呼ぶこともあります。このような「めまい」の原因になる病気は一つではありません。代表的なものは、耳の奥の内耳という部分にある、体の姿勢を保つ器官が何らかの異常を来して起きる内耳性のめまいです。また、脳卒中や心臓疾患、低血圧など血管の病気、脳・神経の病気、薬、外傷などが原因になることもありますから、原因に応じた治療を行うことが重要です。
原因
めまいの原因の一つは、内耳にある身体の平衡感覚を司る三半規管、前庭(耳石器)の異常で、これにもさまざまな種類があります。中高年の人が起床時や寝返りを打ったときによく起きるのが良性発作性頭位めまい症で、耳石器から剥がれた耳石が三半規管内を浮遊していることが原因です。また、30~50歳代に多いメニエール病は、内耳を満たしている内リンパ液が過剰にたまる「内リンパ水腫」が原因とされています。突発性難聴、前庭神経炎もめまいを引き起こします。一方、循環器系の病気によってもめまいが起こります。一つは低血圧によるもので、朝の血圧が下がり過ぎる起立性低血圧は「立ちくらみ」が大きな特徴です。高血圧の薬の量が多過ぎるときも同じような症状が出ることがありますし、精神科の薬や睡眠薬などの副作用であることも考えられます。また、脳梗塞、脳出血の病変が小脳や脳幹に及んだ場合は、一症状としてめまいが起きることがあります。脳梗塞、脳出血は命にかかわる病気ですから、他に症状がないか十分に注意してください。
症状
内耳性のめまいを起こす病気には、良性発作性頭位めまい症、メニエール病、突発性難聴などがありますが、これらの病気に共通する症状は、天井や自分の周囲がぐるぐる回るといった回転系のめまい症状です。メニエール病と突発性難聴は、聴覚器官である蝸牛にも異常が起きますので、耳鳴り、難聴といった症状を伴います。一方、循環器系の病気によるめまいは、ふわふわした感じ、気が遠くなりそうな感じ、目の前が真っ暗になるといった症状が多いのですが、回転系のめまいが出る場合もあります。最も気をつけなければならないのは、命の危険がある脳梗塞や脳出血です。片側の手足が動かなかい、ろれつが回らない、激しい頭痛といった症状を伴う場合は、直ちに脳卒中を専門とする医師のいる病院を受診してください。
検査・診断
めまいの症状で耳鼻咽喉科を受診した場合は、問診でめまいの症状がどのようなものか、いつ出るのか、その経過はどうなのか、他の症状が出ていないか、他に持病はないかなどを確かめた後、内耳の病気が疑われる場合はさらに詳しい検査を行います。この検査には、大きく分けて体のバランスを調べる検査と、眼球の動きによって内耳の平衡器官の異常を調べる検査(眼振検査)があり、それぞれ何種類かの検査方法があります。また、めまいの原因として脳卒中や循環器系の病気が疑われるような場合は、神経内科、脳神経外科、循環器内科などでMRIやCTなどさらに専門的な検査が必要となります。
治療
良性発作性頭位めまい症では、めまい止めの薬やエプリー法という理学療法が行われます。エプリー法は三半規管を浮遊する耳石の位置を確かめ、めまい治療に精通した医師の指導のもとで、頭をゆっくり回転させる運動を行い原因となる耳石を三半規管の外に出す治療法です。これにより多くの場合は症状の改善が見込めます。前庭神経炎は薬による治療が中心となります。突発性難聴は早期に治療が開始できれば、薬で治癒が期待できる場合が多いのですが、進行してからでは治りにくいため、早い段階で耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。メニエール病は完治が難しい病気ですが、利尿薬による治療、鼓膜喚起チューブの挿入、中耳腔への薬物注入、手術、加圧治療、生活指導や自律訓練などによって症状を和らげるための治療を行っていきます。一方、脳卒中が原因となっている場合は、一刻も早く専門の医療機関で診断を受け、重症の場合はt-PAという薬の投与や脳血管のカテーテル治療を緊急に受ける必要があります。
予防/治療後の注意
内耳の病気によるめまいは、適度な運動が予防や再発防止につながります。人間の体のバランスは耳と目がセンサーとなって保たれていますが、片方の耳の器官に異常が出たときは他の器官で補うように脳が調整する働きがあります。体を動かしているほうが、その脳の調整機能が活発になるからです。耳鼻咽喉科の医師に運動について相談してみましょう。また、耳鼻咽喉科でめまいの診療を受けても原因がわからないような場合は、循環器や脳神経の病気である可能性がありますので、内科でめまいの相談をしてみましょう。
こちらの記事の監修医師
院長 神尾 友信 先生
千代田区神田で創業100年を越える神尾記念病院の4代目院長。先代院長急逝により2009年から院長代行を務め、2010年1月に院長に就任した。「患者に安心感・満足感を感じてもらえる医療」の提供に日々努めながら、病院全体のチームワークを高めることにも力を注ぐ。鼻腔・副鼻腔手術のスペシャリスト。
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