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ふくろうの森耳鼻咽喉科 院長 中村 健大 先生

こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生

とっぱつせいなんちょう突発性難聴

概要

前触れもなく突然片耳(まれに両耳)の聞こえが悪くなる病気。耳には、音の振動を脳で感じるための電気信号に変換する機能がある。音から生じた鼓膜の振動が鼓膜の奥の小さな骨(耳小骨)を伝わり内耳に到達し、内耳で振動が電気信号に変換され、聴神経を伝って脳に到達し、音として認識されるが、これらの過程が障害されると難聴が生じる。難聴には大きく、外耳から内耳に音が伝わらなくなる伝音難聴と、内耳で音から変換された電気信号が脳にうまく伝わらなくなる感音難聴の2種類があり、突発性難聴は感音難聴の一種である。この症状が出る人の年齢層は幅広いが、特に40~60代に多く見られる。聞こえにくさの程度は人によって違うため、まったく聞こえない場合もあれば、高音だけが聞こえなくなる場合もある。

原因

音を感じ取って脳に伝える役割をする有毛細胞が何らかの原因で傷つくことで突然片耳または両耳が聞こえなくなる。有毛細胞が傷つく原因として、内耳の血行不良やウイルス感染などが有力視されているが、詳しいことははっきりしていない。ストレス、過労、睡眠不足などがあると起こりやすい。複数の原因が組み合わさって起こるとも考えられている。糖尿病の影響があるという説もある。

症状

突発的に難聴が起こる、難聴が感音性である、原因が不明であるという3つの特徴がある。難聴は片耳に起こることが多く、自然に症状が回復したり悪化したりすることは少ない。難聴の程度は人によってさまざまで、まったく聞こえない人もいれば、高音が聞こえないが日常会話に支障はない人もいる。後者の場合、難聴に気づくのが遅れる場合もある。難聴の発生と前後し、耳の詰まった感じや、めまい、耳鳴り、吐き気などを伴うこともある。少しずつ聞こえなくなったという場合は突発性難聴ではない。

検査・診断

まず、症状を問診で確認したあと、鑑別のために聴力検査や画像診断を行う。もし突発性難聴が疑われれば、似た症状が見られるほかの病気との鑑別のために、頭部MRI検査を行う。ごくまれに聞こえや平衡神経に腫瘍ができる聴神経腫瘍などの疾患が隠れている場合もあるので、治療と並行して原因を調べることも必要。

治療

副腎皮質ステロイド薬の内服や点滴投与による薬物療法が基本となる。内耳の血行を良くするために、血管拡張薬やビタミンB12製剤、代謝促進剤などを使用する場合もある。ストレスの影響とみなされる場合には、安静にする。糖尿病などの合併症がある場合は妊婦など、ステロイドの全身投与が難しい場合や、初期治療による回復が乏しい場合には、耳の中にステロイドを注入するステロイド鼓室内(鼓膜の内側)注入療法を行うこともある。難聴の度合いが高度である場合、高気圧酸素療法を行うこともあるが、施行可能な施設は限られている。発症後1週間以内に適切な治療法を受けることが大切。

予防/治療後の注意

発症してから約1ヵ月程度で聴力が固定してしまうため、早期発見・早期治療が何より重要である。突発性難聴の患者の中には完治する人もいるが、中には回復しても難聴が残る人や治らず終わる人もいるといわれている。特に、発症してから2週間以上経過した場合や高度難聴を認める場合、回転性のめまいを伴う場合や、患者が高齢者または10歳以下の子どもであれば、予後が悪くなる可能性があるので特に注意が必要である。発症後1週間以内に治療を受けることが重要である。1週間以内に適切な治療を受けることで約40%の人が完治し、50%の人には何らかの改善がみられる。症状に気づいたらできるだけ早く受診することが最も重要といえる。突発性難聴は再発をしないことが特徴の一つだが、再発した場合にはメニエール病聴神経腫瘍、心因性難聴などの疾患の可能性が考えられる。

ふくろうの森耳鼻咽喉科 院長 中村 健大 先生

こちらの記事の監修医師

ふくろうの森耳鼻咽喉科

院長 中村 健大 先生

2006年杏林大学卒業。同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科や佼成病院を経て、2020年に開業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。専門分野は耳鼻咽喉科一般。