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北里大学 泌尿器科学教室 岩村 正嗣 主任教授

こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授

まんせいじんふぜん慢性腎不全

概要

血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が、数ヵ月から数年をかけて徐々に低下してしまった状態。一般的に腎臓の機能が正常な状態の3分の1以下に低下した状態をいう。腎機能が低下すると、血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、機能がかなり低下するまで、自覚症状がほとんどないのが特徴。急性腎不全は適切な治療を行えば腎機能回復の可能性はあるが、慢性腎不全になると腎機能の回復は見込めない。腎臓の機能が10%以下となった末期腎不全では、透析療法や腎移植が必要になる。慢性腎不全は病名ではなく、腎臓の機能が低下した病態のことを指す。腎不全に至るまでの軽度の機能低下の段階では回復の余地があり、早期から治療を始めることが望まれる。

原因

慢性腎不全に至る原因としては、さまざまな腎臓疾患があり、糖尿病が原因の糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎(糸球体の炎症によってタンパク尿や血尿が長期間続く病気の総称)、腎硬化症などが多い。

症状

初めに夜間の排尿、疲労、倦怠感、貧血などの症状が現れる。腎機能の低下が進むと、吐き気や食欲不振、むくみ、かゆみ、皮膚の色素沈着、呼吸困難、高血圧など尿毒症と呼ばれる症状が現れ、けいれん、感覚の喪失、手足のしびれなどの神経症状のほか、心不全、肺水腫など致命的な合併症も懸念される。また、骨がもろくなるため、骨折なども起こしやすくなる。

検査・診断

診断には血液と尿の検査が不可欠になる。血液検査は腎臓の状態を確認できるほか、その症状が急性か慢性かを特定するのにも役立つ。また、超音波検査などにより、腎臓の形や血管の異常がないか、体のほかの部分に異常がないかも確認する。腎臓の機能低下が認められた場合には、腎臓の組織検査も行う。組織検査は局所麻酔をして、背中から特殊な針を刺し、腎臓の組織を採取して腎機能低下の原因となっている病気を診断する。

治療

一度低下した腎臓の機能を元の状態に戻すことはできないため、腎機能のさらなる低下や腎不全の合併症を予防し、透析療法への移行を遅らせるための対策を行っていく。治療は薬物療法や食事療法のほか、腎臓の負担を減らす日常生活の心がけも重要になる。慢性腎不全の特効薬はなく、腎機能の低下の程度や原因となる病気、合併症などに応じて、降圧薬や利尿薬、免疫抑制剤、漢方薬などを使用。必要であれば心不全または貧血に対する治療薬も使用する。食事療法は、タンパク質・塩分・カリウム・リンの摂取制限やカロリーと水分の適切な摂取が基本となる。末期の腎不全では透析療法や腎臓移植を行う。透析療法には、血液透析(機械に血液を通し、老廃物などを取り除いて血液をきれいにして再び体内に戻す方法)と腹膜透析(お腹に透析液を入れ、自分の腹膜を使って血液をきれいにする方法)がある。他の人の腎臓を移植する腎移植は、末期腎不全の唯一の根治療法となる。日常生活においては、過度の運動を避ける、過労を避けて疲れをためない、冷えに注意する、風邪などの感染を予防する、脱水を予防する、といったことに留意する。

予防/治療後の注意

治療を行ったとしても、最終的には大半の場合病状は進行するが、腎機能が低下する速さは、腎不全の原因と腎不全のコントロールの良否によって多少異なる。慢性腎不全は自覚症状がないまま進行するため、尿検査でタンパク尿や血尿が出た場合は症状がなくても放置せず、医師に相談することが重要。糖尿病高血圧症もリスク要因となるため、生活習慣を改善することも予防につながる。

北里大学 泌尿器科学教室 岩村 正嗣 主任教授

こちらの記事の監修医師

北里大学 泌尿器科学教室

岩村 正嗣 主任教授

1983年北里大学医学部卒業後、北里大学病院泌尿器科で研修を受け、大学病院のほか神奈川県内を中心に総合病院で診療。米国ロチェスター大学留学。 1995年北里大学病院泌尿器科主任に就任。同科長、副院長を経て2018年7月から2021年6月まで病院長を務めた。現在は北里大学医学部泌尿器科学教室主任教授。 専門は副腎・腎・腹腔鏡・ロボット支援手術。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。