日帰りで受けられる
透析のためのシャント手術
ひらくクリニック
(世田谷区/仙川駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
腎臓には血液の余分な老廃物を取り除き、きれいにする働きがある。慢性腎不全など腎臓病が進み、この機能が落ちると、人工的に体外に血液を取り出し、きれいにしてまた血管に戻す透析治療が必要になる。その人工透析を行うために必要なのがシャント手術だ。透析治療は必要になると一生付き合っていかなければならない治療で、シャント手術も一度だけとは限らず、複数回行うことが多い。そのたびに入院して手術ということになれば、経済的にも日常生活にも大きな負担がかかる。「ひらくクリニック」では患者の負担を軽減するため、このシャント手術を日帰りで行っている。同クリニックは毎日午後は腎臓病を専門に診療し、手術も日々実施している。吉田啓院長に、日帰りシャント手術について、詳しく話を聞いた。
(取材日2021年6月17日)
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qシャントとはどういったものですか。
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A
透析治療では、一度にたくさんの血液を取り出し、機械を通して老廃物を取り除き、きれいな状態にして、また体内に戻します。シャントというのは、透析治療を行うために、患者さんの動脈と静脈をつなぎ合わせ、動脈の血を直接静脈に流して、血流の多い血管を作ることを指します。普通の血管では多くの血液を一度に取り出せないので、血流の多い血管を作る必要があるのです。手首の近くに作るのが標準的なやり方ですが、その部分の血管が細い場合は、もう少し心臓に近い部分の太い血管をつなぐこともあります。このシャントを作る手術がシャント手術です。透析治療のためには欠かせない手術ですね。
- Q人工血管を使う場合もあるのですか。
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A
一般には、患者さん自身の血管をつないでシャントを作りますが、血管が細くてそれができない方の場合は人工血管を使用します。人工血管を皮下に通すことで、自分の血管が細い方でも人工血管に針を刺して透析を行うことが可能となります。時間は通常のシャント手術では1時間ほどですが、人工血管を使ったシャント手術は2時間ほどかかります。人工血管を使用するかどうかは、事前の検査で決定します。
- Q手術は日帰りでできますか。
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A
つなげた血管がちゃんと透析治療に使える太さになるまで、約2週間ほどかかります。一般の病院では、手術後患者さんに2週間入院していただき、経過観察します。でも当院では手術したその日に帰宅していただいています。そして2週間後にまた来院していただき、経過を診ながら抜糸するというやり方をしています。入院せずに済めば、経済的負担も少なく、お仕事を休む必要もありません。また入院による精神的なストレスもかかりません。もちろん、術後何かあったら不安だという方には入院していただいていますが、ほとんどの方は日帰りを希望なさいます。また当院では毎日手術を行っていますので、手術まで何週間も待つ、ということもありません。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1術前検査
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エコー検査で静脈と動脈、それぞれの太さを見て、シャント手術の方法を判断する。血管が太いほうが手術はしやすく、多くの人は自分の血管をつなぐ通常のシャント手術が行えるが、一部の血管が特に細い場合は人工血管を用いたシャント手術になる。どちらも日帰り手術が可能。院内はバリアフリーなので、検査室まで車いすのまま入れる。初診後すぐに手術する患者もいれば、後日改めてという患者もいる。
- 2手術
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患部の付近に部分麻酔をして、動脈と静脈をつなぎ合わせる手術を行う。血管が細い人に用いる人工血管は太さ5ミリほどで、やわらかい素材でできている。患者が痛い思いをしないように麻酔の状態にも配慮。部分麻酔なので先生と話をしながら、リラックスして手術を受けることができる。自分の血管をつなぐ通常のシャント手術なら1時間ほどで終了。人工血管を使用する場合は2時間ほどで終了する。
- 3休憩後帰宅
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ほとんどの人は休憩をとらず、終了後そのまま帰宅できるという。術後2時間ほどで麻酔が切れるので、痛みがあった場合のため痛み止めが処方される。入浴は、絆創膏を貼った患部を濡らさないようにすれば、翌日から可能。その後は抜糸まで通院する必要はなく、通勤も可能。通常の生活が送れるのが日帰り手術のメリットだ。
- 4抜糸・メンテナンス
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2週間後に抜糸。つないだ部分の血管が透析治療できるまで太くなっているかをエコーで確認する。その後のメンテナンスでは、まず3ヵ月後に来院し、エコー検査を行い、つないだ部分の血管が狭くなっていた場合はカテーテル治療を行う。変化がなければ次は半年後、1年後と検査間隔を延ばしていく。1年後にも変化がなければ、トラブルがあったときのみ来院すればよい。
- 5シャント拡張術
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つないだ部分の血管が狭くなってきた場合、血管の拡張手術を行う。部分麻酔をし、先端にたたんだ風船(バルーン)のついたカテーテルを挿入。血管の狭くなっている部分で、風船を膨らませ、血管を拡張する。シャント拡張術は日帰りででき、1時間ほど。3ヵ月後にエコー検査を行い、血管が狭くなってきたら、シャント拡張術を繰り返す。シャント拡張術の間隔が3ヵ月未満になったら、より心臓に近い場所にシャントを作り直す。