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公立学校共済組合 関東中央病院 皮膚科部長 鑑 慎司 先生

こちらの記事の監修医師
公立学校共済組合 関東中央病院
皮膚科部長 鑑 慎司 先生

えんけいだつもうしょう円形脱毛症

概要

頭髪の一部、もしくは複数箇所で類円形に脱毛する疾患である。一般的には10円玉程度の脱毛というイメージがあるが、頭部全体に広がるものや、まゆ毛やまつ毛、体毛などに及ぶ重度のものまである。ストレスが発症のきっかけになることがあるが、アトピー性皮膚炎などのアレルギーや膠原病甲状腺疾患などに合併する例もある。円形脱毛症は自己免疫が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまうため、白血球の一種であるリンパ球が、毛根を包む組織である毛包を攻撃することで脱毛が起こるといわれている。なお、完全に発毛しても、再発することがある。

原因

円形脱毛症の原因にはさまざまな説が提唱されているが、現在有力なのは「自己免疫疾患」「アトピー性疾患」「精神的ストレス」「出産後の女性ホルモン値の変化」「遺伝」などだ。まず「自己免疫疾患」だが、これは免疫に異常が生じ、自分の体の一部分を攻撃してしまうことを指す。これによる脱毛は、免疫細胞であるTリンパ球が、何らかの原因で毛根を包む毛包を攻撃することで起こる。「アトピー性疾患」は、円形脱毛症の患者の多くがこの素因を持つことから原因の一つと考えられている。「精神的ストレス」が原因とされる要因は、ストレスで異常をきたした交感神経が血管を収縮させ、頭皮への血流を悪化させることが根拠のようだ。また、女性特有の要因である「出産後の女性ホルモンの減少」だが、これによる脱毛は、妊娠中通常の100倍以上に増加した女性ホルモンが出産後元の数値に戻ることにより生まれたギャップで起こるといわれている。とはいえ原因不明なことも多い。

症状

円形から斑状の脱毛斑が頭部のみならず毛髪があるあらゆる部位に生じる。通常自覚症状はないが、脱毛する前に軽い痒みや違和感、淡い発赤を伴うことがある。活動期には病巣内外に切断毛、毛包内黒点、容易に抜ける病毛(感嘆符毛)がみられるため、診断の決め手となる。重症例では、眉毛、睫毛、髭、その他全身のあらゆる種類の毛が脱落する。爪甲の小さな点状陥凹が出現することがある。

検査・診断

視診・触診による頭皮、毛穴の確認や、毛髪の抜けやすさや毛周期ごとの毛包の割合を検査する「抜毛テスト」、毛根およびその周囲の組織を小さく採取する皮膚生検の結果などから診断する。通常、健康な毛根はボウルのように丸い形をしているが、円形脱毛症で毛根が傷ついている場合は、その部分が先細りになっているため、重要な判断基準となる。また、血液検査などを行い、甲状腺疾患全身性エリテマトーデス関節リウマチなど自己免疫疾患、アトピー性疾患、貧血、亜鉛欠乏症や梅毒など、何かほかの病気がもとになっているかどうかも確かめる。この場合、もとの病気の治療をしなければ、脱毛症状の根本的な解決にならないからだ。

治療

根治に至る治療法はまだ確立されていないが、現在行われている治療には、脱毛斑に炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを注射する「ステロイド局所注射」、人工的にかぶれを起こす薬剤を塗って発毛を促す「局所免疫療法」、ステロイド内服や抗ヒスタミン薬、セファランチンやグリチルリチン、メチオニン、グリシン複合剤など内服薬を飲む方法、ステロイドや塩化カルプロニウム、ミノキシジルなどの有効成分が含まれた外用剤を使用する方法、ドライアイスや液体窒素などを脱毛斑に当て発毛を促す「冷却療法」、紫外線を当てる「紫外線療法」、近赤外線を当てる「スーパーライザー療法」、点滴で大量のステロイドを3日間投与する「点滴静注ステロイドパルス療法」などがある。軽症例では、1年後には約80%が治癒するといわれている。

予防/治療後の注意

ストレスをためないことや適度な運動を推奨する意見がある。その一方で突然急激に悪化することが時々あり、それを予防するのは困難である。

公立学校共済組合 関東中央病院 皮膚科部長 鑑 慎司 先生

こちらの記事の監修医師

公立学校共済組合 関東中央病院

皮膚科部長 鑑 慎司 先生

2000年3月東京大学医学部医学科卒業。同大学附属病院の皮膚科で研修後、2006年3月に同大学院博士課程を修了。その後同大学附属病院皮膚科助教や、関東労災病院皮膚科にて医長を務める。Oregon Health & Science University博士研究員、東京大学医学部附属病院皮膚科講師などを経て、2012年4月より現職。日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本レーザー医学会レーザー専門医。