こちらの記事の監修医師
千葉大学医学部附属病院
アレルギー膠原病科 中島 裕史 先生
ぜんしんせいえりてまとーです(えすえるいー) 全身性エリテマトーデス(SLE)
最終更新日:2021/12/28
概要
全身性エリテマトーデスは、免疫が自分自身の皮膚、関節、腎臓や心臓など、全身の組織や臓器を攻撃してしまう膠原病(こうげんびょう)と呼ばれる病気の一つです。日本全国に6~10万人の患者がいると推定されていますが、男女比は1:9と圧倒的に女性が多いことが特徴です。特に20歳代から40歳代の若い女性がよく発症しますが、最近は発症年齢が高齢化してきています。エリテマトーデスとは赤い皮疹のことで、多くの患者にこの特徴的な皮膚症状が出ることから名づけられました。全身性エリテマトーデスは国が指定する難病です。
原因
全身性エリテマトーデスは、免疫が自分自身の体を攻撃してしまう病気です。本来、免疫は異物が体内に侵入したときに、それを異物と認識して結合する抗体(こうたい)を作って攻撃、排除しようとします。しかし、全身性エリテマトーデスを発症すると、自分自身の細胞の核の成分を異物と認識する抗体が作られます。その抗体に、異物と認識された自身の細胞の核成分や、抗体による攻撃を助ける「補体(ほたい)」という成分が結合して免疫複合体ができます。これが体の中で増え、皮膚や臓器に沈着して炎症や臓器の障害を引き起こすと考えられています。ただ、なぜそうなるのかというメカニズムや、引き金になる要因ははっきりとわかってはいません。遺伝的な要因、紫外線、ウイルス、細菌、特定の薬剤、性ホルモンなどさまざまな要因が複雑に絡みあって発症するのではないかと推測されています。
症状
発熱、倦怠感、食欲不振などの全身症状と特徴的な皮膚の症状、関節の症状が多くの患者で見られます。皮膚症状で有名なのは頬にできる赤い皮疹で、チョウが羽を広げるような形をしている蝶型紅斑(バタフライ・ラッシュ)です。円盤状の赤い皮疹が顔面、耳、上腕、体感にできることもあります。手指、肘、膝の関節炎も多く、日によって痛みの場所が変わることが特徴です。ほかに脱毛、日光過敏症、痛みのない口内炎などを伴うこともあり、進行すると腎臓、神経、心臓、肺、消化器、血管などにも病変が起こり、重い障害を残すこともあります。特に腎臓はループス腎炎と呼ばれる難治性の病態を示し、透析が必要になる場合もあります。臓器障害が出るのかどうかは、人によってさまざまです。
検査・診断
医師による診察と、血液検査、尿検査、胸部エックス線などの画像検査などを行います。全身性エリテマトーデスに特徴的な皮膚、関節症状と全身症状を確認し、細胞の核に反応する抗体(抗核抗体)があるか、貧血や白血球減少などの血液異常があるか、免疫学的な異常があるか、腎臓などの臓器に異常が見られるかなどを調べ、他の膠原病、感染症などとの鑑別を行って、全身性エリテマトーデスと診断します。軽症の場合、関節リウマチと区別がつきにくいこともありますので、かかりつけ医に大きな病院を紹介してもらい、リウマチ科、腎臓内科、皮膚科などで膠原病の診療経験が豊富な医師の診断を受けることをお勧めします。
治療
自分自身を攻撃する免疫を抑える治療を行います。治療の中心はステロイド(副腎皮質ホルモン薬)で、重症度や病気の広がり、患者の体重などから薬の種類や用量を決めて使用します。ステロイドだけで治療が難しい場合や、ステロイドの副作用が強い場合は、さまざまな免疫抑制薬を使用します。世界で標準的に用いられていたヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)が2015年から日本でも使用可能になり、2017年からはリンパ球が抗体を作るのを強力に抑える作用を有する生物学的製剤も発売されました。ループス腎炎に効果が見込める薬もあります。全身性エリテマトーデスを完治させることは難しいですが、こうしたさまざまな薬を組み合わせて使用することで、症状がほとんどない寛解(かんかい)という状態の維持をめざしていきます。
予防/治療後の注意
全身性エリテマトーデスは慢性疾患で、症状が良くなったり、悪くなったりを繰り返す病気です。定期的な受診を欠かさないことと、主治医や薬剤師の指示に従ってきちんと服薬を続けることが、長期間良い状態を維持することにつながります。症状が改善しても、服薬を自身の判断で中断すると悪化してしまう可能性が高いです。薬の副作用が出ることもありますが、この場合も自己判断で服薬をやめてしまわずに、主治医に連絡して指示を受けるようにしてください。
こちらの記事の監修医師
アレルギー膠原病科 中島 裕史 先生
1988年宮崎医科大学(現・宮崎大学)医学部卒業後、千葉大学医学部旧第二内科に入局。1999年千葉大学大学院医学研究科修了。米国国立衛生研究所(NIH)留学を経て、現在は千葉大学大学院医学研究院アレルギー・臨床免疫学教授とアレルギー・膠原病内科科長を務めている。日本アレルギー学会アレルギー専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医。
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