
こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授
ばいどく梅毒
最終更新日:2021/12/27
概要
梅毒トレポネーマによる感染症。性交渉をきっかけとしてうつることが多い。感染すると数週間の潜伏期間を経てから、全身症状を引き起こす。初期は症状が軽度なため、発見が遅れることもあるが、早くに治療を開始できれば治すことができる。逆に早期に治療を行わないと症状が悪化し、大動脈瘤、髄膜炎や神経障害(神経梅毒)などが生じて命にかかわる重篤な状態になる場合もある。また大人に限った病気ではなく、母体が感染していると胎児も感染してしまい、先天梅毒と呼ばれる症状が出現することもある。日本での患者数は長らく減少していたが、2010年を境に増加傾向が続いている。
原因
梅毒トレポネーマという細菌に感染することが原因となる。梅毒にかかっている患者の粘膜や皮膚と直接接触することが感染経路のため、基本的には性交渉を介して人から人へと感染していく。オーラルセックスやアナルセックス、キスでも感染する恐れがある。梅毒トレポネーマが体内に侵入して感染すると、数時間以内にリンパ節へ達し、血流に乗って全身へ広がり症状を引き起こす。梅毒にかかっていても症状が現れない時期があるが、たとえそうした時期であっても人にうつす危険性が高いので注意したい。この他に、妊娠中の母親が感染すると、胎盤を経て胎児が感染する先天梅毒の原因となる。この場合は、早産や死産を起こすリスクが高まる上に、新生児に奇形が現れる可能性もある。また出産時には問題が見られなくとも、その後成長する段階で何らかの病気を発病するケースもある。
症状
病状は1期(感染から約3週間)、2期(1~3ヵ月)、後期(数年から数十年)の3段階に分けられる。1期では、主に陰部や肛門、口などの感染した部位にしこりや潰瘍ができたり、股の周囲のリンパ節に腫れが起きる。この後こうした症状は一度治まるが、数ヵ月後に2期の症状として、手のひらや足の裏、全身に赤い発疹やぶつぶつ(梅毒性バラ疹)が出る。ただし、かゆみや痛みは感じないことが多い。2期の症状も1期と同様に数週間で自然となくなるが、梅毒トレポネーマはそのまま体内に潜伏したままとなる。そして数年後の後期になると、やわらかいゴムのような腫瘍が体中にできる。この時点でも治療を行わないと全身の臓器に障害が広がり、大動脈瘤、髄膜炎や神経障害(神経梅毒)などが生じ、命にかかわる重篤な状態になる場合もある。
検査・診断
問診を行ったあと、TP抗原法やSTS法といった血液検査をして、血液中の抗体を確認する。また、潰瘍などの症状がある部分から細菌を取り出して培養検査を行う場合もある。検査を受けられる医療機関は、皮膚科、感染症科、泌尿器科、産婦人科などに加え、自治体によっては保健所でも検査ができ、無料で受けられる地域もある。なお、感染後すぐは検査を受けても梅毒トレポネーマを検出できないので、感染したと思われる時点から4週間程度経ってから検査を受けるようにしたい。
治療
ペニシリン系抗菌薬を用いて治療することが基本となる。個々の状態によっても異なるが、病状の1期であれば2~4週間ほど、2期であれば4~8週間ほど通院しながら、1日3回の薬の服用を毎日続ける。梅毒は治療しなくても症状が消えてしまう期間があるが、自然に治ることはない。薬の服用中に症状が見られなくなったとしても、自己判断で途中でやめてしまうことは避けたい。あくまでも医師の指示に従い、最後まで薬を飲み切ることが大切。なお後期になると、それぞれ発症した病気によって対応していくが、重症化してしまうことも多い。梅毒は初期段階で治療を早く始めれば治る病気であり、後に障害が残ることもない代わりに、後期の段階で生じた脳や心臓などの機能障害は、治療後も完全に改善することはない。このため、早期に発見して治療することが重要なポイントとなる。
予防/治療後の注意
性交の際はコンドームを着用することが予防につながる。また、複数のパートナーと性交渉を持つと、自分が感染したり、相手に感染させるリスクが高まってしまう。もし梅毒に感染してしまったら、性交したパートナーも検査と治療が必須である。治療によって完治した後でも、再び感染する場合もあるために注意が必要。近年は梅毒にかかる人が急増しており、特に20代、30代の若い世代がその中心となっている。予防に努めると同時に、少しでもおかしいと思う症状があれば、できるだけ早く検査を受けるようにしたい。

こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授
1983年北里大学医学部卒業後、北里大学病院泌尿器科で研修を受け、大学病院のほか神奈川県内を中心に総合病院で診療。米国ロチェスター大学留学。 1995年北里大学病院泌尿器科主任に就任。同科長、副院長を経て2018年7月から2021年6月まで病院長を務めた。現在は北里大学医学部泌尿器科学教室主任教授。 専門は副腎・腎・腹腔鏡・ロボット支援手術。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。
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