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東京医科大学八王子医療センター 副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

きゅうせいしんふぜん急性心不全

概要

心臓には全身に血液を送り出すポンプの役割があり、1分間に60~80回、1日にすると10万回以上拍動して血液を身体に送り出し続けている。心臓は、そのほとんどが心筋と呼ばれる筋肉でつくられており、だいたいこぶしぐらいの大きさで重さは300g弱である。心不全とは、動きや機能の異常から心臓がポンプの役割を果たせなくなって、息切れやむくみが生じ、それらの症状がだんだん悪化して命に関わる状態へ向かう病気である。心臓病などがなかった人に急激に心不全の症状が出た場合を「急性心不全」と呼ぶ。また、心不全は「左心不全」と「右心不全」に分けられる。右心不全の多くは左心不全に引き続いて生じ、併発すると「両心不全」となる。

原因

根本的な原因は患者によってさまざまで明確でないこともあるが、多くの場合は虚血性心疾患の存在が関与している。また、心不全につながる、心臓機能の衰えの原因の一つとして高血圧が挙げられる。高血圧の状態が続くと、高い圧力で血管の壁が押されるため、血管への負担も重くなる。また常に強い圧力に逆らう形で血を送り出すことになるため、ポンプとなる心臓への負担も大きくなり、心不全へつながることもある。そのほか、風邪や過労などの不調、ストレス、高血圧をそのままに放置していたり、薬を中断したり、貧血を起こしたりすることなどが引き金になるともいわれている。

症状

左心不全の症状としては、心臓から体に必要な酸素や栄養が送り出せず、坂道や階段を上る際に息が切れやすくなったり、疲れやすくなったり、といった症状が現れる。また呼吸困難や手足の冷え、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)などが見られる。超重症になると突然倒れて意識を失ってしまい、いびきやうめき声を発したり、口から白またはピンク色の泡が出たりすることもある。右心不全が起こると、全身の血液が心臓に戻ってこられなくなるので、全身のむくみを生じる。体の中で血がうまく流れないことでおなかが張ったような感じがある腹部膨満の症状や、苦しくて眠れないという症状、足の全面や足首などを指で押すとくぼみができるような、さまざまなむくみ症状が出現する。両心不全においては、全身の臓器が活動するために必要な血が届かなくなり、例えば、体の中でできた老廃物を尿として体外に出す機能を持つ腎臓に届く血の量が減ると、尿の量が減り、水分が体の中にたまって、むくみや体重の増加といった症状が出る人もいる。

検査・診断

左心不全の症状が見られる場合、胸部のエックス検査をして、心臓や肺の様子や、肺に水がたまっていないかを調べたり、心電図検査で心臓の波形を確認したりする。心エコー検査では、実際に心臓の動きを確認して、心臓の壁の状態や、心臓を通る血液の逆流を防ぐ弁の様子、心臓のポンプ機能について調べる。また血液検査によって、血液中に血管を広げて尿を出すよう臓器に働きかけるホルモンが増えていないか確認することもある。このホルモンは心臓から出されており、心臓が自分の負担を軽くして身を守るためのもので、量が多く出されているほど、症状が重いといわれている。右心不全の診断については、動悸や息切れ、むくみなどがあるかどうか、という問診から始まり、聴診器で実際に心臓の音を聞いて、雑音や、普段は聞こえない異音がないか確認することが多い。

治療

呼吸困難が見られる場合は、まず酸素吸入を実施する。加えて利尿剤や血管拡張薬、強心薬を使用し、心臓の負担軽減を図る。心不全を引き起こす原疾患はさまざまあり、治療方法も原疾患により異なる。高血圧に逆らう形で血を送り出すために心臓に負担がかかっている場合や、頻脈や貧血などが見られる場合は、心臓を取り巻く環境の負担を減らすための治療が必要である。また冠動脈が詰まったり、流れが悪くなったりして心臓に栄養が足りなくなる狭心症心筋梗塞が原疾患であれば、冠動脈を広げるカテーテルを血管に入れたり、詰まった血管の先にバイパスのように新しい血管をつなぐバイパス手術が行われる。心臓の弁に原因があれば、その弁を修復したり、取り換えたりする手術が検討される。

予防/治療後の注意

日ごろから心臓への負担を減らす日常的な取り組みが予防には有効。高血圧脂質異常症糖尿病心不全を引き起こすと指摘されており、これらの疾患を持つ場合は医療機関での治療が大切だ。エスカレーターではなく階段を使う、車を使わずに行ける距離は歩いて移動する、運動する習慣をつけるなど適度に身体を動かす努力も有用である。また禁煙したり、お酒を控えたり、油ものや塩辛いものは極力控えたりして、野菜が多い食生活を心がけ、食べ過ぎや飲み過ぎにも注意するなど日ごろからの心がけが予防になる。

東京医科大学八王子医療センター 副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

こちらの記事の監修医師

東京医科大学八王子医療センター

副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

1989年東京医科大学医学部卒業。東京医科大学病院、神戸市立中央市民病院などを経て2007年オランダ・カタリーナ病院に留学。 帰国後は東京医科大学病院へ。2015年八王子医療センターに赴任。2016年より循環器内科教授、2017年副院長に就任。日本循環器学会循環器専門医。