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東京医科大学八王子医療センター 泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生

こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生

ふくあつせいにょうしっきん腹圧性尿失禁

概要

咳やくしゃみ、重い荷物を持った時、運動時などに腹部に強く圧力がかかることによって起こる尿漏れ。尿道を締める尿道括約筋など骨盤底の筋肉の緩みから生じる。出産経験のある高齢の女性に多く、女性ホルモンの低下、肥満、骨盤内の手術、尿道や子宮の位置異常などが挙げられる。男性の場合は、前立腺の手術の際に尿失禁を防ぐ尿道括約筋が傷つけられることで、術後に腹圧性尿失禁が発生することがある。生命に直接の影響はないが、外出などに不安を感じ、生活の質が低下するため、高齢のせいと諦めたり、恥ずかしいと我慢したりせずに泌尿器科を受診しよう。

原因

女性の尿失禁の中で最も多い。週1回以上経験している女性は約500万人以上といわれている。原因としては、出産、加齢、閉経後の女性ホルモンの低下、肥満や便秘、骨盤内の手術など。そして、尿道や子宮の位置異常などのために尿道を閉じる機能を持つ尿道括約筋をはじめとする骨盤底の筋肉の力が弱くなることが大きな原因と考えられる。骨盤底の筋肉が緩むと膀胱の出口が下がり、腹圧がかかった時に尿道が通常より大きく動いてしまい、尿が漏れやすくなる。荷重労働や排便時に腹部に力を入れたり、喘息も骨盤底筋を損傷する原因に。男性の場合は、前立腺の手術の際に尿道括約筋が傷つけられたり、術後に尿道括約筋が低下したりして、腹圧性尿失禁が発生することがある。男性よりも女性の方が多い原因として、出産のほか、膀胱から尿道までの長さと形体が挙げられる。

症状

咳やくしゃみをしたとき、大笑いしたとき、急に立ち上がったとき、階段昇降、重い荷物を持ったとき、運動時などに腹部に力を入れたときに、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまう。切迫性尿失禁(急にトイレに行きたくなり、間に合わず漏らしてしまう)を合併する場合も。原因の大きな一つである骨盤底の筋力の緩みと関連して、骨盤内の臓器が垂れ下がって腟から脱出する骨盤臓器脱を認めることもあり、膣から脱出した膀胱や子宮が股の間に球状に触れることがある。

検査・診断

症状の確認や問診だけで診断できる場合もある。排尿日記を数日間記録し、尿失禁の回数や量(重さ)、排尿状態を把握して評価する。また、骨盤臓器脱などの有無も確認。一般的には患者の体に負担のない検査で診断可能。尿の成分や感染症を調べる検尿、水分摂取後に約1時間決められた動作や運動を行い、検査前後のパッド重量を計測し、尿失禁の重症度を判定するpadテスト、排尿後に膀胱内に残っている尿の量を測定する残尿検査など。必要に応じて、内診台での診察、ストレステスト、Qチップテスト、チェーン膀胱尿道造影検査、尿流動態検査、膀胱鏡検査、脳や脊髄の画像検査などを行う場合もある。

治療

軽度の場合は、骨盤の筋肉を鍛える骨盤底筋体操を用いて改善を図る。臓器が下がるのを防ぎ、尿道や肛門を締める力やコントロールする力をつけることで、尿漏れを防ぐ。肥満や急激に体重が増えた人は、減量が有効なことも。ほかに、膀胱を緩め、かつ尿道を締める働きのあるβ受容体刺激薬などを内服する薬物療法がある。重度の場合は、尿道の周りにコラーゲンを入れる手術や尿道を締める機能を補助する手術などを行うことも。尿道の下にテープを通して尿道を支えるTVT手術やTOT手術は、体への負担が少なく、長期成績も優れている。骨盤臓器脱を認める場合は、メッシュを用いて修復するTVM手術を同時に実施。前立腺全摘除後の症状として重度の腹圧性尿失禁がある人は、人工尿道括約筋の植え込み術も行う。

予防/治療後の注意

緩んだ骨盤底筋を鍛える体操を朝・昼・夜・就寝前と各20回程度、合計40~100回、毎日行う。3ヵ月以上の継続で3人のうち2人に効果があるといわれている。方法は、仰向けやよつんばい、座った姿勢で、リラックスして呼吸を止めずに肛門や尿道、膣を縮め、5つ数えてからゆっくり力を抜く。腹筋運動は症状悪化の恐れがあるという説も。腸が便で満杯になった状態を放置しておくと、膀胱にさらなる刺激を与える可能性があるため、便秘の予防が重要。肥満や喫煙も影響があるといわれているので注意する。

東京医科大学八王子医療センター 泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生

こちらの記事の監修医師

東京医科大学八王子医療センター

泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生

1994年東京医科大学医学部卒業。同大学病院、癌研究会附属病院(現・がん研究会有明病院)勤務、杏林大学医学部付属病院泌尿器科講師などを経て2014年より現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。