PSA検査の値に異常があれば
まずは前立腺がん検査を知ろう
やすだ泌尿器科クリニック
(門真市/古川橋駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
近年最も増加しているがんの一つとして注目されているのが前立腺がんだ。50歳以上から増え始め、特に80歳以上では半数以上に潜在性の前立腺がんがあるといわれるほど。日本における前立腺がん患者の数はそもそもあまり多くなかったが、増加の原因は「高齢化」や「食生活の欧米化」のほかにも、健康診断で行われる「PSA検査の普及」も挙げられるだろう。「しかし、PSAの値が高いからといって、すべてが前立腺がんの兆候とは言い切れません」、そう話すのは「やすだ泌尿器科クリニック」の安田宗生院長。静かに進行するがんから健康寿命を守るには、早期発見・早期治療がなくてはならない。今回は、健康診断のその先にある「クリニックで行う前立腺がん検査」について、安田院長に具体的に教えてもらった。
(取材日2020年8月4日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q前立腺がんとは、どのような病気ですか?
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A
前立腺とは精液の一部である分泌液を作っている臓器です。初期症状には頻尿や残尿感などがあります。治療は開腹手術のほか、放射線療法、ホルモン療法などさまざまで、最近は腹腔鏡やロボットを使った低侵襲な手術も進歩しています。50代以降に増え始めるのですが自覚症状が乏しく、近年は早期発見をめざし血液検査の際に腫瘍マーカーのPSA検査を行う人が増えています。しかし、PSAはほかの前立腺の病気でも高い値を出します。健康診断の際にPSA値で引っかかったら、まずは早めに専門とする泌尿器科で検査してもらい、前立腺炎や前立腺肥大など、ほかの病気かどうかも含めて診断してもらうことが重要です。
- Q頻尿や尿失禁など排尿障害も前立腺の病気と関りがあるのですか?
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A
はい、あります。そもそも前立腺や膀胱、尿道は隣り合っているため、前立腺に異常があると、膀胱に負担がかかったり、尿道が圧迫されたりして、頻尿や残尿感、血尿、尿漏れといわれる尿失禁が起こるのです。そのため、前立腺がんとはまったく別の病気である前立腺肥大や前立腺炎であっても、現れる症状は同じなのです。PSA検査においても、前立腺に病気があるかどうかを調べる検査ですから、前立腺肥大症や前立腺炎でもPSAの値は上昇します。病名の確定には、細かな問診や基礎疾患の確認、採血検査、直腸内触診、エコー検査、MRI検査を行って、総合的に判断する必要があるのです。
- Q排尿障害も含め、普段の生活で気をつけるべきことはありますか?
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A
膀胱や前立腺などの泌尿器は非常にデリケートで、体調やメンタル、生活習慣病などの影響を受けやすい臓器です。これらのことが原因で、頻尿などの排尿障害が起こるため、脂っこい食べ物を避ける、塩分・糖分を控える、冷えを防ぐなどの、行動が大切です。前立腺の病気は放っておくと、腎機能低下やがんが骨に転移することもあります。また排尿障害は生活の質の低下を招きます。気になることがあれば、早めに泌尿器科に行きましょう。ほかにも、同じ症状が出る病気として膀胱炎や過活動膀胱が有名ですが、排尿障害を再発させないための骨盤底筋体操や膀胱訓練の指導も行っています。まずは気軽にご相談ください。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診票の記入
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当日の申し込みも可能だが、電話やインターネットから予約を取ってから来院。クリニック受付で問診票を受け取り、記入する。内容は基礎疾患や普段飲んでいる薬のほか、排尿の状況など。会社の健康診断や血液検査の結果があれば持参するのがベター。診察の前には尿検査を行うため、事前にトイレを済ませずに来院するほうがよい。
- 2診察室にて問診を受ける
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診察室で問診を受け、受診理由を伝える。特に気になる症状があれば、時期や症状などを正確に話すことが重要。医師からは血尿や残尿感、痛みなど排尿障害の有無や、既往歴、現在治療中の病気がないかといった質問がなされる。生活習慣が影響することもあるので、仕事内容やライフスタイルなどを聞かれることもある。まだPSA検査をしていない人や、健康診断での採血データがあっても結果次第で採血を行う。
- 3採血検査・直腸内触診
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事前に食事制限をする必要はないため、その場で採血が可能。血液検査では特に腫瘍マーカーのPSA、腎機能、肝機能の値を中心に測定。また、問診内容に応じて直腸内触診を行う場合もある。直腸内触診では医師が肛門から指を入れて前立腺の大きさや硬さを確かめる。通常は弾力があるものだが、ごつごつとして固い場合などは病気の可能性もあるそう。なお、血液検査の結果は3~4日後になる。
- 4エコー検査
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エコー検査では前立腺の大きさや膀胱の状態をチェック。ほかにも尿路結石や腎腫瘍、慢性腎臓病などを発見するのに有用な検査で、前立腺以外の臓器による症状が影響していないかを診る。ベッドの上に寝ころび装置を当てると、体の中の状態が画像になって映し出される。侵襲性のない検査なので、患者の負担も少なくリラックスして受けることができる。必要に応じてMRI検査の予約を行う。
- 5MRI検査を受け、がんの確定診断のため前立腺生検へ
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MRI検査を受け、がんの疑いの強い部位があれば、がん確定検査として針生検を行う。肛門に親指大の器具を入れ、そこから出した針で、がんが疑われる部位や好発部位をねらって6ヵ所以上から組織を採取する。がんが判明した時は手術や放射線療法の適応となれば連携する総合病院に治療を引き継ぐが、術後管理や併用してホルモン療法の適応となれば引き続きクリニックで治療することも可能。