
こちらの記事の監修医師
順天堂大学医学部附属浦安病院
血液内科長 野口 雅章 先生
たけつしょう(せっけっきゅうぞうかしょう)多血症(赤血球増加症)
最終更新日:2022/02/25
概要
血液は、赤血球、白血球、血小板、血漿という成分からできており、多血症はこの中の赤血球が異常に増えてしまう疾患のことをいう。赤血球が少なくなる貧血とは反対の病気といえ、進行するとともに血液が濃くなって流れが悪くなり、さまざまな症状が現れる。すぐに命に関わるような状態に陥るケースはあまりないが、時に重大な合併症を引き起こすことがある。原因によって真性多血症(真性赤血球増加症)、二次性多血症(二次性赤血球増加症)、ストレス多血症(ストレス赤血球増加症)といくつか種類があり、健康診断などで血液の数値を指摘されて発見されることが多い。
原因
真性多血症の原因は血液中の遺伝子異常(JAK2など)にあり、血液を作り出している造血幹細胞の中にある特定の遺伝子に異常が起こり、際限なく赤血球が作られてしまうことで起こるといわれている。二次性多血症は、慢性的に酸素が不足している状態や、腫瘍などが原因と考えられている。例えば喫煙や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、睡眠時無呼吸症候群、心疾患、腎臓がん、脳腫瘍など。標高が高い地域での居住やトレーニングが原因になることもある。そしてストレス多血症はその名のとおりストレスがきっかけとなって起こる。ただ、真性多血症や二次性多血症とは違って赤血球の数が増えるのではなく、血液中の他の成分が少なくなるために相対的に多血症になっている状態。そのため相対的赤血球増加症とも呼ばれ、多くは肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が原因といわれる。急性の場合は、脱水で血液中の水分が失われたことが原因となって起こることもある。
症状
初期の段階では特に症状が出ないことがほとんど。進行すると顔が赤くなる、目や口の粘膜が充血する、風呂上がりに体がかゆくなるなどの症状が現れる。さらに、赤血球が増えると血液が濃くなりドロドロとしてくるので、全身に十分な酸素や栄養を送り届けられなくなり、頭痛、めまい、耳鳴りなどが起こる。そして血栓症の患者に多く見られるのが血栓(血の塊)で、血流に乗って心臓や脳に達すると心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険があり注意が必要。そのほかにも合併症として、粘膜や皮膚で出血が起こりやすくなったり、骨髄が硬くなって血液がうまく作られなくなる骨髄線維症や急性白血病を併発したりする。
検査・診断
まず血液検査で血液中の成分の濃度を調べ、ヘモグロビンやヘマトクリット値という赤血球の成分の数値が異常に高ければ多血症を疑う。場合によっては白血球や血小板の数が増えていることもある。また、これだけでは真性多血症なのか二次性多血症やストレス多血症なのか正確に判断できないため、エリスロポエチンというホルモンの値を調べたり、血液を作り出している骨髄液を調べたり、古くなった血液を壊している肝臓が腫れているかどうか、より詳しい検査を行う。さらに、二次性多血症では腫瘍が原因となっているケースもあるため、必要に応じてCT検査やMRI検査などの画像検査を行い、最終的な診断結果を出す。
治療
真性多血症の場合は、体内から血液を抜き取る瀉血(しゃけつ)という治療を行い、血液量を減らすことで赤血球の数をコントロールするのが一般的な治療法。また、血液を作り出す造血幹細胞の働きを抑えるために分子標的剤(JAK2阻害剤)や抗がん剤を使うこともある。さらに、脳梗塞や心筋梗塞は命に関わるため、原因となる血栓ができるのを防ぐために血液をサラサラにする抗血栓薬を服用する。ただし年齢や既往歴などの問題で使えない人もいるので、ケースに応じて選択する。二次性多血症では、そもそもの原因となっている慢性閉塞性肺疾患(COPD)や睡眠時無呼吸症候群、心疾患、腫瘍などの治療や禁煙などの生活改善が必要となり、瀉血(しゃけつ)や抗血栓薬による治療も必要に応じて行う。ストレス多血症は、ストレスの原因を排除し、生活習慣を整えることで改善が期待できる。これらの治療のほか、頭痛やめまい、体のかゆみなど全身の症状を緩和する治療も行っていく。
予防/治療後の注意
経過観察中に心筋梗塞や脳卒中などの合併症を発症することがあるため、手足のしびれやまひ、息切れ、胸の辺りの締めつけるような痛みなどが現れたら放置せず、できるだけ早めに受診することが大切。そして、こうした合併症のリスクを減らすために、たばこを吸うようであれば禁煙し、適度な運動と栄養バランスの取れた食生活を心がけること。また、血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は、手術や抜歯の際に注意が必要なため、あらかじめ医師に病気のことを伝えるようにする。治療薬は適切に決められたとおり服用し、通院すること。

こちらの記事の監修医師
血液内科長 野口 雅章 先生
1983年順天堂大学医学部卒業。膠原病内科に所属し、免疫分野の診療経験を積んだ後、血液内科へ転向。亀田総合病院で移植医療を学び、順天堂大学医学部附属静岡病院を経て2000年から現職。2013年に教授就任。日本血液学会血液専門医、日本内科学会総合内科専門医。
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