こちらの記事の監修医師
国立大学法人 高知大学医学部附属病院
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
まんせいへいそくせいはいしっかん(しーおーぴーでぃー)慢性閉塞性肺疾患(COPD)
最終更新日:2022/02/24
概要
慢性閉塞性肺疾患(COPD=Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、タバコの煙などの有害物質を長期間吸い続けることにより、呼吸がしにくくなる病気です。2017年の厚生労働省の患者調査では、日本のCOPD患者数は約22万人で、毎年1万4000人以上が亡くなっています。また、医療機関を受診せず、あるいは他疾患に隠れてしまっていてCOPDの診断を受けていない人が多いため、530万人もの潜在患者が存在するといわれています。COPDは喫煙を原因とする肺の生活習慣病。最初は軽い運動での息切れや咳、痰が続くといった症状ですが、徐々に進行して日常生活もままならなくなり、呼吸不全や心不全という命の危険にもつながる病気なのです。
原因
COPDは、有害物質を肺に吸い込むことで起こる病気。大気汚染なども原因の一つですが、何といっても「タバコ」が原因となることが最も多く、日本ではCOPDの90%以上が喫煙を原因とし、喫煙者全体の20%程度がCOPDを発症するといわれていますが、喫煙を継続し年齢を重ねるにしたがって頻度が非常に高くなります。COPDは、有害物質が長期にわたり肺を刺激することで気管支に炎症が起きて細くなり、痰も多く分泌されて空気の流れが悪くなるというメカニズムで起こります。また有害物質により肺胞の壁が破壊されて、肺は弾力のない肺気腫(はいきしゅ)という状態になり、酸素と二酸化炭素のガス交換が障害されます。こうなると、酸素を取り込み二酸化炭素を排出する機能が低下して、呼吸が苦しくなってしまうのです。日本の喫煙者数は1970年代をピークに低下していますが、COPDは長い期間を経て発症するため、高齢者を中心に患者数はまだ高いレベルで推移しています。
症状
COPDの代表的な症状は、階段の上り下りや少し長めに歩いたときに息切れを感じる、咳や痰が長い間続くといったもの。風邪をひいたときにも同じような症状が出ますから、見過ごしてしまうことも多いのです。また、一部患者には、ゼーゼー、ヒューヒューという喘息のような症状が出ることもあります。COPDは放置していると、だんだんと悪化してしまう進行性の病気です。進行すると、少し体を動かしただけでも息が苦しくなって日常生活に大きな影響が出るようになり、呼吸不全、心不全といった命に関わるような状態になってしまいます。また、肺だけではなく、全身性の炎症や心血管疾患、糖尿病、骨粗しょう症などの発症にも影響するとされています。
検査・診断
まず、問診で喫煙歴と自覚症状を聞き取ります。年齢が40歳以上で10年以上の喫煙歴があり、慢性的な咳や痰、体を動かしたときに息切れを感じるなどの症状があればCOPDが疑われます。そうした人にはスパイロメーターという機器で呼吸機能検査を実施。息を吸ったり吐いたりする検査ですが、さまざまな肺の病気がこれでわかります。思い切り息を吸って吐き出したときの息の量を努力肺活量といいます。また、そのとき最初の1秒間で吐き出せた量を1秒量といいますが、1秒量を努力肺活量で割った値を1秒率といい、この値が70%未満のとき、COPDと診断されます。COPDでは息が吐き出しにくく、時間がかかってしまうからです。測定した1秒率の値を、同じ年齢、性別、体格の日本人の標準的な値と比べることで重症度も判断できます。さらに、必要に応じて胸部エックス線、胸部CTなどの画像診断で患部の状態を詳しく調べることもあります。
治療
現在のところ、COPDを根治させて元の健康な肺に戻すことはできませんが、適切な治療により現状が改善できれば、将来的なリスクを減らすことは望めます。COPDになる最大の原因は喫煙ですから、まだ喫煙を続けている人にはまず禁煙を指導し、禁煙補助薬による治療を行います。COPDの薬物治療では、気管支を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬を中心に使用し、複数の吸入薬を組み合わせて使うことが多いです。痰を抑える薬や、重症の場合は吸入ステロイド薬が使われることも。薬物療法以外では、呼吸法のリハビリテーションがあります。COPDが進行して呼吸不全に陥った場合は、持続的に酸素吸入を行う在宅酸素療法が行われます。また、薬物治療で症状が改善しない場合、膨張した肺の一部を切除する外科手術が検討される場合もあります。
予防/治療後の注意
COPDの発症を予防する最大の手段は禁煙です。近年では禁煙治療を行う医療機関も多いので、喫煙者はかかりつけ医や呼吸器内科の医師に相談してみてください。また、COPDはインフルエンザや細菌性肺炎を併発すると悪化することが多く、これらの疾患もCOPD患者では重症化しやすくなるため、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。患者本人への感染を予防するために、その家族や介助者の接種も推奨されています。日常生活では、体重が落ちないように栄養管理を行うこと、そして歩行などの適度な運動を継続することも重要です。
こちらの記事の監修医師
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
1983年富山医科薬科大学医学部卒業後、同大学第一内科入局。シカゴ大学、愛媛大学第二内科、広島大学第二内科(分子内科学)を経て、2007年より現職。2014年から4年間附属病院病院長。2020年より日本呼吸器学会理事長。専門は呼吸器内科学。
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