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こちらの記事の監修医師
隈病院
院長 宮内 昭 先生

こうじょうせんがん甲状腺がん

概要

甲状腺は喉仏の下にある縦横4~5㎝の、正面から見ると羽を広げたチョウの形をした臓器のこと。この甲状腺にできた悪性の腫瘍が甲状腺がんです。がん組織の状態により、甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がん、甲状腺低分化がん、甲状腺髄様がん、甲状腺未分化がん、甲状腺リンパ腫などに分類されます。女性に多いがんです。甲状腺がんは適切な治療により完治が見込める病気ですが、未分化がんの治療は難しく、ほとんどの患者が1~2年以内に亡くなります。がんの種類によって増殖、浸潤、転移などの性質が異なり、放射性ヨウ素の有効性も異なるので、手術などの治療の前に正確な診断をつけることが重要です。

原因

甲状腺がんを発症する原因やメカニズムは詳しくわかっていません。大多数の甲状腺がんの発症原因は不明ですが、一部の甲状腺がんは遺伝性(家族性)であることがわかっています。甲状腺髄様がんは遺伝による発症が認められており、RETという遺伝子に異常があると発症しやすいことがわかってきました。また、甲状腺乳頭がんも遺伝による発症が確認されています。遺伝性のがんは、比較的若いうちに発症することが特徴です。家族に複数の甲状腺がんの患者がいる人は一度、専門の医療機関にご相談ください。また、チェルノブイリ原発事故の被ばく者の調査などから、小児期に大量の放射線を被ばくすると甲状腺がんになりやすいことが知られています。

症状

甲状腺の腫瘍は、良性の場合も悪性の場合も、初期はほとんど自覚症状がありません。腫瘍が大きくなると、首にしこりや腫れを自覚するようになります。がんが甲状腺の近くにある発声をコントロールしている神経(反回神経)や気管、食道にまで広がると、声がれ(嗄声)、呼吸困難感、食べ物の飲み込みにくさ、誤嚥、痛み、血痰などの症状が出る場合があります。また、甲状腺全摘手術を受けた後には、甲状腺ホルモン薬を服用し甲状腺ホルモンを補充します。これを補充しないと、甲状腺機能が低下し、眠気、記憶障害、抑うつ、皮膚乾燥、脱毛、むくみ、声がれ、徐脈などさまざまな症状が出現しますが、きちんと服用すればこのような心配はありません。

検査・診断

甲状腺の腫瘍が疑われる場合は、問診で症状や病歴を聞いた後、視診、触診で首のしこりを確かめ、血液検査と超音波検査を行います。超音波検査で、腫瘍の大きさと超音波所見より、必要に応じて、超音波で観察しながら皮膚から細い針を刺して腫瘍細胞を吸引し、顕微鏡で調べる細胞診という検査(超音波ガイド下穿刺吸引細胞診)を行って悪性か良性か、組織型のタイプは何かを診断します。甲状腺がんの約90%を占める甲状腺乳頭がんは細胞診で診断が容易です。このがんはリンパ節転移が見られることもありますが、進行はおおむねゆっくりで、甲状腺とリンパ節の切除による治療が可能です。甲状腺濾胞がんは細胞診で良性か悪性かを言い難い場合があり、そのような場合は濾胞性腫瘍と呼ばれ、外科的切除による病理組織診断を行うかどうか考慮します。濾胞がんではリンパ節転移は少なく、骨や肺へ転移することがあります。甲状腺髄様がんは乳頭がんより少し性質が悪く、リンパ節転移、遠隔転移がやや高頻度です。甲状腺未分化がんは進行が極めて早く、浸潤、転移も高頻度であり、最も治療が難しいがんです。甲状腺リンパ腫は放置すると進行が早く、かつては死亡例も多かったのですが、抗がん剤や放射線治療により最近は治療成績が著しく向上しました。

治療

甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんの治療は、甲状腺の切除手術が基本で、必要に応じて首や気管などのリンパ節を取る手術を加えます。補助的に放射性ヨウ素を使用したアイソトープ治療を行うこともあります。甲状腺切除は全摘手術と一側の甲状腺を切除する片葉切除術があります。手術合併症の率、術後の甲状腺機能や再発リスク、その後の治療などに違いがあります。主治医とよく相談しましょう。術後の甲状腺機能低下症治療や再発予防のために甲状腺ホルモン剤を服用することもあります。甲状腺髄様がんには遺伝性のものと、非遺伝性(散発性)のものがあります。遺伝性髄様がんには甲状腺全摘が必要です。散発性髄様がんでは腫瘍の広がりに応じて甲状腺片葉切除または全摘手術が行われます。いずれもしばしばリンパ節を取る手術(リンパ節郭清)を行います。甲状腺未分化がんは手術、化学療法、放射線、分子標的薬という新しい薬を組み合わせた治療を行いますが、それでも進行が早く多くの患者が1~2年以内に死に至ります。悪性リンパ腫は放射線と化学療法を組み合わせて治療します。最近は治療成績が著しく向上しました。

予防/治療後の注意

甲状腺がんに限らず、一般的にがん予防には禁煙、節酒、バランスの良い食事、適度な運動、感染予防などが効果的とされています。また、早期にがんを見つけて治療することが大切ですので、家族に複数の甲状腺がんの患者がいる人や、慢性甲状腺炎(橋本病)に罹患している人は、早めに専門の医療機関で検査されると良いでしょう。甲状腺がんで手術を受けた後に甲状腺機能が低下している場合は、医師の指示を守り、薬の服用を続けてください。食事は普通に取れますが、ポピドンヨード製剤での毎日のうがいは控えるなど、大量のヨード摂取は避けるよう心がけましょう。低リスク微小甲状腺乳頭がんに対しては、直ちに手術を行うよりも定期的にきちんと経過を見る(積極的経過観察)のほうが望ましい場合が少なくないことも知っておきましょう。

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こちらの記事の監修医師

隈病院

院長 宮内 昭 先生

1970年大阪大学医学部卒業後、同大学医学部第二外科へ入局。1979年には米国ウィスコンシン大学への留学を経験した。帰国後は香川医科大学第二外科講座の講師、助教授を務める。1998年隈病院の副院長となり、2001年より現職。2019年から国際内分泌外科学会(IAES)の会長に就き、内分泌領域の専門家として国際的に活動している。日本外科学会外科専門医。