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こちらの記事の監修医師
横浜新都市脳神経外科
院長 森本 将史 先生

あくせいりんぱしゅ悪性リンパ腫

概要

悪性リンパ腫は血液がんの一種で、白血球の一種であるリンパ球ががん化したもの。リンパ節やリンパ管、脾臓、胸腺、扁桃などリンパ系の組織で発生することがある。リンパ腫の種類を大きく分けると、腫瘍内に大型腫瘍細胞の見られる「ホジキンリンパ腫」と、それが見られない「非ホジキンリンパ腫」の2種類があり、その中でさらに種類が細分化される。B細胞と呼ばれるリンパ球に由来するホジキンリンパ腫は遺伝が関与しているといわれ、20~30代の若い患者が多い。一方、悪性度の高い非ホジキンリンパ腫は高齢の患者が多く、ウイルス感染などが原因だといわれている。

原因

健康な状態では、リンパ球の中でがん細胞が生まれても、それを免疫細胞が排除するのでがんにはならない。だが、免疫力が落ちるとリンパ球の中でがん細胞が過剰に増えてしまい、悪性リンパ腫が発症すると考えられている。ただし、その詳しいメカニズムはまだはっきりと分かっていない。細胞内の遺伝子が変異してがん遺伝子が活性化したことや、ウイルスや細菌に感染したことなどが発症に関係している可能性が高いといわれている。悪性リンパ腫の発症に関わるウイルスは、エイズを引き起こすHIVウイルスや胃がんの主原因であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、C型肝炎ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、EBウイルスなど。また、免疫の働きが弱い人がかかることが多い。その他、除草剤、害虫駆除剤などの農薬や、有機溶剤、殺虫剤、動物性たんぱく質や脂肪の過剰摂取も発症に関係している可能性がある。

症状

初期段階では、首や脇の下、足の付け根などリンパ節の多い部分で痛みのないしこりが現れることが特徴。まれに痛みがあるがほとんどの場合痛みを伴わない。症状が進行すると発熱や全身の倦怠感、体重減少、皮膚の赤み、腫れ、かゆみ、嘔吐などさまざまな症状が出てくる。また、しこりが気道や血管、脊髄などを圧迫すると、気道閉塞や血流障害、まひなどを引き起こすことも。また、悪性リンパ腫がほかの臓器や器官へ広がっていくと、それぞれの転移先特有の症状が出現。肺や気道など胸部では呼吸困難や気道閉塞、咳、肝臓では黄疸や腹水、骨では骨痛などが起こる。

検査・診断

まずは症状や既往歴などについて問診し、腫れているリンパ節を確かめるために触診を行う。血液検査や尿検査のほか、リンパ節を採取して顕微鏡で観察する病理検査、骨髄の中にリンパ腫の細胞があるかどうかを確かめる骨髄検査・髄液検査などの検査をする。診断が確定した後、リンパ腫が体内に広がっているのかを確認したり、治療法を決定したりするためにCTやMRIなどの画像診断検査やPET検査(陽電子放射断層撮影)などを行う。悪性リンパ腫が広がっている場合は、転移先の臓器に合わせて内視鏡検査や脳脊髄液検査などをする。ウイルスに感染すると合併症が起こりやすくなるので感染の有無を調べることもある。

治療

主な治療法は化学療法と放射線治療だが、悪性リンパ腫の種類と進行度合いにより治療法が違う。ホジキンリンパ腫では、抗がん剤などを用いる化学療法と放射線治療が、非ホジキンリンパ腫では化学療法による治療が中心となる。治療は適切な病理診断や全身状態を考慮して決定。ゆっくりと進行する病型で、何年間も症状がなく病巣の大きさもほとんど変わらない場合は、経過観察だけで特に治療をしないこともある。入院または通院で行われる化学療法では抗がん剤や、がん細胞だけを選んで攻撃する分子標的薬を使用。薬は全身に届くため、検査ではわからなかった発生部位・臓器への効果も期待できる。放射線治療は、病巣が1ヵ所だけのときなどに単独、または化学療法と併用して行う。化学療法や放射線療法による体へのダメージが大きいときは、あらかじめ採取しておいた造血幹細胞を移植することもある。

予防/治療後の注意

はっきりとした原因がわかっていないため、確実な予防法はない。しかし、定期的に健康診断を受け、早期発見することが大切である。また、脇の下や首のリンパ節が腫れたときは放置せず、早めに医療機関で受診すること。悪性リンパ腫は再発しやすい。もともとかかっていた病型から別の病型に変わって再発することも。そのため、寛解した後も3~6ヵ月ごとに診察を受け、再発や全身状態を調べる必要がある。ただし、気になる症状があるときは次の通院日を待たずに受診すること。

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こちらの記事の監修医師

横浜新都市脳神経外科

院長 森本 将史 先生

1993年京都大学医学部を卒業。国立循環器病研究センター脳神経外科、ベルギーのCenter for Transgene Technology and Gene Therapyなどで手術と研究の研鑽を積み、2011年より横浜新都市脳神経外科病院にて院長を務める。専門分野は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血をはじめとする脳卒中疾患。この分野において数多くの治療を手がける施設の長として、日々脳外科手術を行いながら外来では予防も提唱している。著書に「読みやすい わかりやすい 脳梗塞35の重要ポイント(現代書林)」などがある。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会脳血管内治療専門医。