
こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
脳神経外科科長 教授 神保 洋之 先生
のうどうみゃくりゅう 脳動脈瘤
最終更新日:2022/01/04
概要
脳内の動脈の一部が、こぶのように膨らんだ病気を脳動脈瘤と呼びます。脳動脈瘤が破裂してしまうと、くも膜下出血という死亡率の高い深刻な病気を引き起こします。命が助かったとしても重い後遺症が残ることも多く、社会復帰できる確率は3分の1といわれます。昔は、破裂して初めて脳動脈瘤があったことがわかったのですが、近年はMRIやCTなどで破裂しないうちに発見できるようになりました。日本神経外科学会が行った全例調査結果によると、未破裂動脈瘤が破れる確率は1年間で0.5%~3%といわれています。こぶのできた場所と大きさによって確率は異なります。未破裂動脈瘤は、手術やカテーテル治療で破裂しないように治療することも可能になっています。
原因
脳の動脈にこぶができる理由は、まだ、明確にはわかっていません。高血圧、血流分布の異常、あるいは喫煙や遺伝的な要因などによって、血管壁にストレスがかかり、慢性的な炎症などを起こして血管壁が変形するのではないかと推測されています。一般的には血管が枝分かれした部分に多く発生し、2ヵ所以上にできることも珍しくありません。また、脳動脈瘤が破れる理由についても、よくわかっていませんが、こぶに血液が流れ込んで風船のように膨らみ、血管壁が薄くなって破裂すると考えられています。ただ、発生したときに血管壁が耐えられずにすぐ破れてしまうもの、いったん安定した後に血管壁が変化して破れるもの、安定化して破れにくいものなど、いろいろなパターンがあります。これまでの調査で、細長いこぶ、いびつな形状のこぶは動脈壁の変化を来しやすく、破れやすいことがわかっています。
症状
脳動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血となり、突然の激しい頭痛や意識障害に陥ります。頭痛は、今までに経験したことのないほどの激しい痛みです。死亡率が高く、後遺症が残ることも多い病気ですから、一刻も早く救急車などで脳卒中の救急診療を受け入れている病院に行ってください。一方、未破裂の動脈瘤は、自覚症状のない場合が多いのですが、頭痛やめまいなどの症状が出て、MRIやCT検査の検査で見つかることがあります。ものが二重に見える症状が出ることもあります。これらの症状は、未破裂動脈瘤が大きくなって、周囲の神経を圧迫して起きると考えられています。
検査・診断
脳動脈瘤を発見することができるのは、CTやMRIによる検査です。脳動脈瘤の破裂、すなわち、くも膜下出血は、出血した部分がCT画像で白い塊として映ります。一方、未破裂の動脈瘤が見つかることが多い検査はMRI装置を使用した検査です。その中でもMRAという検査は脳血管の形状を詳細に調べることができるため、未破裂動脈瘤を見つけることはもちろん、大きさや形まで確認できます。無症状であっても、脳ドックで発見できるケースもあります。MRA検査は造影剤を用いることなく行うため、患者は比較的楽に検査が受けられます。ただ、未破裂動脈瘤が見つかっても必ず治療が必要ということではありません。一般的に小さな動脈瘤は、経過観察となりますが、5~7mm以上の動脈瘤では、年齢を考慮して、できた部位、形状などで破裂するリスクを判断して外科的介入の必要性を決めていきます。
治療
脳動脈瘤の治療法には、大きく分けて、開頭して行うクリッピング手術とカテーテルによる血管内治療のコイル塞栓術があります。クリッピング術は動脈瘤の入口部分を金属製のクリップで挟んで中に血流が入り込まなくする治療法です。同じ箇所での動脈瘤の再発はほとんどありませんが、長期間経過を追跡することが推奨されます。頭の皮膚を切開し、頭蓋骨を外して手術するので体への負担は血管内治療と比べ、大きい治療法です。コイル塞栓術は、脚の付け根もしくは腕血管からカテーテルという細いチューブを入れて動脈瘤まで導き、中に細いコイルを入れて埋め尽くします。コイルと血液が固まり、こぶの中には血液が流れ込まなくなります。頭を切開する手術に比べて体への負担が少なく、脳の奥深くにあるこぶにも治療が行いやすいメリットがありますが、コイルの入れ方が不十分だと再治療が必要というデメリットもあります。これらの方法で治療できないような大型の動脈瘤には、前後の血管をクリップで挟んで血流を止めてしまい、代わりにバイパス血管を設ける手術、こぶのある血管に極めて細かい網目状の金属筒を入れて、こぶをふさいでしまうカテーテル治療などの方法があります。
予防/治療後の注意
見つかった動脈瘤が大きくなる、破裂する危険因子として考えられているのは、高血圧、大量の飲酒、喫煙です。禁煙して飲酒量を抑えるとともに、血圧を測定し、高血圧の人は医師の治療と指導を受け、生活習慣を改善してください。動脈瘤ができる原因ははっきりしていませんが、脳梗塞など他の脳血管疾患の発症を防ぐためにも、血管そのものが硬くもろい状態にならないように、高血圧、高脂血症、糖尿病など血管に強いストレスがかかる生活習慣病を治療していくことが大切です。

こちらの記事の監修医師
脳神経外科科長 教授 神保 洋之 先生
1988年昭和大学医学部卒業。脳卒中の外科、頭蓋底外科、脊椎・脊髄外科の分野を専門に豊富な診療実績を積み重ね、血管内皮細胞障害の基礎的研究にも従事。 2008年より東京医科大学八王子医療センターに勤務。2015年現職に就く。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。
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