
こちらの記事の監修医師
愛知医科大学病院
感染症科 教授 三鴨 廣繁 先生
せんけいこんじろーま 尖圭コンジローマ
最終更新日:2022/01/04
概要
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルスを原因とする性感染症の一つで、性器の周辺にとがった形のイボが見られることが特徴です。男女どちらも発症し、日本の有病率は10万人当たり30人程度ですが、徐々に女性が増加しつつあります。痛みやかゆみなどの自覚症状が出ないことも多く、イボが小さかったり、見えにくい場所にあったりすると、感染に気づかないことも多い病気です。自然治癒することもありますが、イボが増殖、増大すると、痛み、かゆみ、出血などの症状が出やすくなり、原因となるパピローマウイルスの種類によって、時には悪性化する可能性もあるため、性器周辺のイボに気づいたら早めに医療機関を受診してください。特に女性では、外陰部に尖圭コンジローマが存在すると、子宮がんなどの原因となる子宮頸部のヒトパピローマウイルス感染も見つかりますので、注意が必要です。
原因
ヒトパピローマウイルス(HPV)には多くの種類があり、それによって感染症を起こす部位が異なります。尖圭コンジローマを引き起こすのは主にHPV6型と11型で、これらは発がんリスクの低いタイプのウイルスです。しかし、子宮頸がんの発症リスクが高いHPV16型や18型などの悪性型のウイルスタイプと同時に感染することもあります。HPVは皮膚や粘膜の小さな傷から人体に侵入して増殖します。尖圭コンジローマの感染経路は、主に性行為およびその類似行為の際に、感染者のイボの中にあるHPVが、相手の粘膜や皮膚に接触して侵入するケースがほとんどです。そのため患者の大部分は性生活の活発な10歳代後半から40歳代ですが、まれに、母子感染、育児中の偶発的な事故、性的虐待により、乳幼児に感染が認められることもあります。ウイルスの潜伏期間は人によってさまざまですが、感染機会から数週間~数ヵ月で発症することが多いとされています。
症状
男性では陰茎、尿道、陰嚢、女性では腟、腟前庭、大小陰唇、会陰部、子宮口、また男女ともに肛門や口腔などに特徴的なイボができます。イボは、初めはやわらかいふくらみ程度ですが、徐々に先端が角化してやや尖った感じに変化し、乳頭、カリフラワー、鶏のとさかなどと表現される独特の形状を示します。色はピンク色から褐色です。初期はイボができる以外に自覚症状のないことが多いのですが、かゆみ、痛み、不快感などを伴うことがあります。イボが大きくなると、こすれて痛みや出血が見られることもあります。性器にイボができる病気は他にもありますが、尖圭コンジローマのイボは不規則な形で、あちこちにできることが特徴です。
検査・診断
尖圭コンジローマのイボは、乳頭状、カリフラワー状、とさか状といわれる特徴的な形状をしているため、多くの場合は専門の医師の視診によって診断をつけることが可能です。しかし、まれに良性のHPVだけでなく、悪性化するHPVが混じっていることもあるので、特にイボが大きく、多発しているような場合は患部の組織を採取し、遺伝子を調べるPCRなどの遺伝子検査や顕微鏡で調べる病理検査を行うこともあります。拡大鏡を使用した子宮頸部の検査や、内視鏡による肛門内部の検査を併用する場合もあります。イボの外科的治療を行う場合は、その準備のために必要な血液検査なども実施します。
治療
イボが大きくなると痛みなどの症状が出たり、治癒後に傷痕が残ったりするため、外用薬を用いた治療や外科的治療を行います。日本では、2007年に尖圭コンジローマへの効能効果を持つ薬が承認されましたので、まず、この薬の使用を検討します。注意しなければならないのは、この薬を塗った状態で性交してはならないことです。外科的治療方法では、メスによるイボの切除、レーザーで患部を焼いてしまう蒸散術、液体窒素を用いて患部を凍らせてしまう治療などがあり、イボの大きさや数、場所、これまでの治療の有無や回数などによって治療方法を選択します。尖圭コンジローマは、治療によってイボがなくなっても再発する例が多いため、数ヵ月〜2年程度は通院して経過観察を続けることが重要です。
予防/治療後の注意
感染予防には性交の際にコンドームを使用することが必須ですが、性器以外の場所への感染まで完全に防げるわけではありません。性交渉の相手を限定するとともに、もし、パートナーが感染していた場合は、自身も検査を受けましょう。もう1つの予防法はワクチンです。現在、日本で接種できるHPVワクチンの中で4価ワクチンという種類は、子宮頸がんの原因となるHPV16型、18型に加え、尖圭コンジローマの原因となるHPV6型、11型に対しても感染予防効果があります。HPVワクチンは思春期の女性を対象としたB類定期接種ワクチンに位置づけられています。

こちらの記事の監修医師
感染症科 教授 三鴨 廣繁 先生
1983年名古屋大学文学部卒業後、岐阜大学医学部に進学。1994年岐阜大学大学院医学研究科博士課程修了。岐阜大学医学部附属病院勤務医、ハーバード大学チャニング研究所研究員、岐阜大学生命科学総合研究支援センター嫌気性菌研究分野助教授などを経て、2007年8月より現職。専門は感染症学、臨床微生物学、化学療法学。医学博士。日本感染症学会感染症専門医、日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本東洋医学会漢方専門医。
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