
こちらの記事の監修医師
医療法人社団済安堂 井上眼科病院
井上 賢治 院長
ぶどうまくえんぶどう膜炎
最終更新日:2022/02/25
概要
ぶどう膜とは、眼球の中心部をぐるりと包み込むように広がっている膜。目の中へ入る光の量を調節する虹彩、目のピントを合わせる毛様体、酸素・栄養を運ぶ脈絡膜の3つから構成されており、血管やメラノサイトが豊富なため、その名前のとおりぶどうの実のような色をしている。このぶどう膜に何らかの原因で炎症が起きた状態を、ぶどう膜炎という。目がかすむ、まぶしく感じるといった症状が見られることが多く、虫が飛んでいるように見える場合も。原因は細菌などによる感染症や免疫異常が挙げられるが、原因不明のことも多い。失明を起こす可能性が高いため、点眼、内服、注射、点滴などで視力低下につながらないように炎症を抑える治療が行われるが、良くなったり悪くなったりを繰り返して長引くことがある。白内障や緑内障などの合併症を伴いやすいのも特徴。
原因
比較的わかりやすい原因が、細菌、ウイルス、カビなどの感染。また、さまざまな臓器に小さな腫物ができるサルコイドーシスや、髄膜炎、皮膚の白斑、白髪、目の奥の痛みといった症状が起きるフォークト-小柳-原田病、全身に炎症などの症状が繰り返し現れるベーチェット病によるものも多く、「3大ぶどう膜炎」として知られている。サルコイドーシス、フォークト-小柳-原田病、ベーチェット病は、いずれも過剰な免疫反応により自らの組織を誤って攻撃してしまう病気だが、発症のメカニズムはまだわかっていない。また、全身性エリテマトーデスなどの膠原病(皮膚、関節、血管などの炎症が全身に及ぶ免疫異常による病気)、糖尿病、関節炎、腸疾患、皮膚疾患、脳神経疾患、耳鼻咽喉科疾患、血液疾患、悪性腫瘍なども、ぶどう膜炎の原因になることがある。
症状
眼球全体の炎症によって、眼球に鈍痛が起きたり、近くを見るときに痛みを伴ったりする。ぶどう膜の前のほうの炎症が強いときは、強い充血、視界にかすみがかかったように見える、目の前にごみのようなものが浮いているように見える(飛蚊症)といった症状が続く。さらに網膜の炎症が強くなった場合や緑内障・白内障を伴う場合は、視力低下が起きることも。ほかにも、物がゆがんで見える、いつも以上に光をまぶしく感じる、物が小さく見えるといった症状も、ぶどう膜炎の代表的な自覚症状。原因が自己免疫疾患であった場合は、疾患それぞれの症状が全身に現れる。
検査・診断
「最も内科的要素の強い目の病気」ともいわれるぶどう膜炎は、正しい診断のために、さまざまな眼科的検査に加えて、血液検査や胸部エックス線検査、免疫反応を見るツベルクリン検査といった内科的要素の強い全身検査も併せて行うことが多い。目の検査としては、蛍光する性質を持った特殊な造影剤を腕から注射し、その造影剤がどのように眼底の血管に流れているかを撮影して炎症の様子を確認する「蛍光眼底造影検査」が用いられるのが一般的だ。近赤外線を照射して目の断面図をミクロンレベルで繰り返し高速撮影するOCT検査(光干渉断層撮影)で、さらに詳しくぶどう膜の状態をチェックすることも。また、患者からの消化器症状(下痢、腹痛など)やベーチェット病の症状(皮膚が弱くなりカミソリ負けをするなど)といった自己申告が、原因を突き止めるための重要なキーワードになることがある。
治療
炎症を抑えることが治療の中心になる。視力低下につながるダメージを残さないよう、ステロイド薬を炎症の状態に合わせて点眼で用いることも多い。散瞳薬を用いて瞳孔を広げ、炎症によって虹彩と水晶体がくっつくのを防ぎ、痛みを和らげることも。目の奥の炎症が強い場合は、免疫抑制薬(体の免疫反応を抑える薬)も併せて使うことがある。また、症状が全身に及ぶことも少なくないため、飲み薬を使ったり、目の周りの組織にステロイド薬を直接注射したりすることも多い。
また、原因がベーチェット病などの場合は、これらの病気を完全に食い止める治療法が確立されていないため、いかに軽症化するかを課題として対症療法を行っていく。
予防/治療後の注意
ステロイド薬は炎症を抑える強い作用があるが、もう治まったからといって自己判断で急に飲むのを中断すると、かえって副作用が強く現れる。また、炎症が再燃したり長引いたりすると目の機能を大きく低下させる要因になるため、症状が治まった後も、医師の指示に従って少しずつ薬の量を減らしていく。また、ステロイド薬の使用中は眼圧上昇などの副作用が出ていないかを定期的な検査でチェックする必要があり、予後も経過を見ていかなければいけない。予防することは難しいが、過労やストレスが発症のきっかけになることがあるため、心身ともにできるだけストレスフリーで過ごせる工夫をするのも重要だ。

こちらの記事の監修医師
井上 賢治 院長
1993年千葉大学医学部卒業後、1998年東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学部附属病院分院(現在は本院に統合)眼科医局長、名戸ヶ谷病院眼科部長、井上眼科病院附属お茶の水・眼科クリニック(現:お茶の水・井上眼科クリニック)院長を経て、2008年に同院母体である医療法人社団済安堂の理事長に就任。2012年から井上眼科病院院長を兼務。日本眼科学会眼科専門医。
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