こちらの記事の監修医師
国立大学法人 高知大学医学部附属病院
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
さるこいどーしすサルコイドーシス
最終更新日:2022/02/24
概要
サルコイドーシスは、体の多くの器官に肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれる炎症細胞の異常な塊ができる原因不明の病気で、国から難病に指定されています。肉芽腫は、肺、胸部リンパ節、目、皮膚などでの発生頻度が高いものの、神経、筋肉、心臓、腎臓、骨、消化器など全身のほとんどの部位に発生します。日本での罹患率は2004年度の臨床調査個人票を用いた調査で人口10万人あたり1.7人と報告され、女性が男性の2倍発症し、年齢では20~30代と50~60代の2つにピークがあります。この病気は予後や症状の個人差が非常に大きく、多くの患者は治療しなくても症状が自然に治まる反面、1~2割は重症で難治となります。肉芽腫の発生臓器により、症状もさまざまです。胸部エックス線検査で見つかることが多いことから、サルコイドーシスの全身的な診療は呼吸器内科が行うことが多いようです。
原因
サルコイドーシスの原因ははっきりとわかっていません。何らかの原因(抗原)によって免疫系が刺激されて異常反応を起こすことで、肉芽腫病変ができると考えられています。しかし、その原因となる物質については、結核菌説、溶連菌説、ウイルス説、ニキビの原因菌であるアクネ菌説などさまざまな説があります。また、遺伝的な要因も関係するのではと考えられています。
症状
症状は肉芽腫が発生した器官により異なります。日本では、自覚症状がほとんどない段階で健康診断の胸部エックス線検査で偶然発見されるケースと、目の自覚症状で発見されるケースが多くなっています。目ではぶどう膜に炎症が起き、物がかすんで見える、まぶしい、蚊が飛んでいるように見える、充血などの症状が出ます。肺では進行すると咳や息切れが出てきます。皮膚では瘢痕浸潤、結節性紅斑などの病変が表れます。特に顔や手足、胸、背中、腹部や臀部などに、痛くもかゆくもない赤い斑点ができるのが一番多いパターンです。他にも、心臓、神経、筋肉、腎臓、骨、消化器などさまざまな器官に病変ができます。この病気で命を落とすことはまれですが、心臓に病変ができた場合は不整脈や心不全の原因となるため注意が必要です。
検査・診断
健康診断の胸部エックス線検査や、目、皮膚などその他の臓器の症状などからサルコイドーシスが疑われる場合、追加のエックス線検査、ガリウムシンチグラフィ、FDG-PET検査、血液検査などを行い特徴的な所見が見られるかどうかを確かめます。気管支鏡で肺胞を洗浄した液を回収して、液中の細胞や成分を調べる検査を実施することもあります。左右の肺の間あたりのリンパ節の腫れ、免疫反応に関係する数種類の生理活性物質の値の上昇などがサルコイドーシスでよく見られる所見です。また、サルコイドーシスは全身性の疾患ですから、各臓器での症状に加えて発熱、体重減少、疲れ、痛み、息切れなどの全身症状が起こります。それらを総合的に判断して診断を行います。
治療
サルコイドーシスは現在のところ原因不明で、病気そのものを治癒させるような根治療法はありません。しかし、治療を行わなくても自然に症状が治まることもあるため、症状が軽い場合はそのまま慎重に経過観察を続けるのが一般的です。全身的な治療を行う場合は、ステロイドや免疫抑制薬、抗菌薬などを使って治療が進められます。各臓器の症状に対しては、必要に応じてそれぞれ炎症や痛みを抑える治療が行われます。特に注意を要するのが、心臓に病変があるサルコイドーシスです。不整脈や心不全といった生命に危険を及ぼす病気につながりますので、循環器内科で心電図検査、心エコー、造影MRI、FDG-PET検査など心臓の詳しい検査を行った上で、薬物治療やペースメーカー、心筋アブレーションといった治療を行うこともあります。目のサルコイドーシスは眼科で、ぶどう膜の炎症を点眼薬やステロイドの内服で治療します。この場合、他の臓器に異常がないかどうか、定期的に内科で検査を受けることをお勧めします。
予防/治療後の注意
日常生活ではできるだけ無理をせず、規則正しい生活を行って、ストレスを避けることが大切です。サルコイドーシスの診断を受けても無症状であれば特別な治療を受ける必要はありませんが、半年に1度程度は定期的な検査を受けるようにしてください。特に心電図などで心臓に異常がないか調べることが重要です。女性の患者は出産後にサルコイドーシスが悪化することがあるため注意が必要です。薬物治療を受けている女性が妊娠・出産を希望する場合は主治医とよく相談しましょう。
こちらの記事の監修医師
呼吸器・アレルギー内科 教授 横山 彰仁 先生
1983年富山医科薬科大学医学部卒業後、同大学第一内科入局。シカゴ大学、愛媛大学第二内科、広島大学第二内科(分子内科学)を経て、2007年より現職。2014年から4年間附属病院病院長。2020年より日本呼吸器学会理事長。専門は呼吸器内科学。
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