
こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院 婦人科
田中 京子 先生
ふにんしょう不妊症
最終更新日:2022/01/04
概要
妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合をいう。卵子が育たない・排卵できない「排卵因子」、精子が子宮に入るまでに障害がある「頸管因子」、卵管が狭い・詰まっていて受精卵が子宮に届かない「卵管因子」、卵子が育たない・受精卵が着床しない「子宮因子」、精子の数が少ない・運動率が低い「造精機能障害」、射精ができない・勃起障害(ED)による「性機能障害」などがあり、男女双方に原因が考えられる。加齢により、男女とも妊娠する・させる力(妊よう性)が低下するため、なるべく早めに産婦人科へ訪れ、治療した方が効果的だ。
原因
女性側では、卵子が育たない・排卵できない「排卵因子」、精子が子宮に入るまでに障害がある「頸管因子」、卵管が狭い・詰まっていて受精卵が子宮に届かない「卵管因子」、卵子が育たない・受精卵が着床しない「子宮因子」、精子を異物と捉えて排除する「免疫因子」など。男性側では、精子の数が少ない・運動率が低い「造精機能障害」、射精ができない・勃起障害(ED)による「性機能障害」のほか、精索静脈瘤、クラインフェルター症候群などの病気も。男女双方に原因が考えられる。また、子宮内膜症の合併や、骨盤腹膜炎などの既往歴があると妊娠しにくい。女性は30歳を過ぎると徐々に妊娠の確率は減り、35歳以上になると卵子の質が低下し、子宮内膜症の合併が増加。男性も35歳ごろから徐々に精子の質が低下する。病気や加齢などの原因では、治療が遅れると成果が下がり、リスクが高まるため、早めに治療した方が効果的の場合もある。不妊のカップルは約10組に1組といわれ、現在、妊娠を考える年齢が高齢化しているため増加傾向にある。原因がない場合もある。
症状
健康な男女が妊娠を希望し、避妊をしない継続的な性行為があっても1年間妊娠しない場合「不妊症」と定義される。女性側では、生理周期の不規則や量・腹痛、膣分泌物の変化、極端な肥満や痩せ、性感染症などの症状がみられる場合がある。男性側では、ヒゲがまばらで胸が少し大きいクラインフェルター症候群、糖尿病や甲状腺機能低下症などの病気の症状も。他の疾患と異なり、多くの場合は痛みも不快感もないため特定が難しい。
検査・診断
女性に対しては、内診、女性ホルモンの分泌や甲状腺の機能などを調べる血中ホルモン測定検査、卵管の詰まりや子宮内の形に異常がないかを調べる子宮卵管造影検査、子宮内膜症や子宮筋腫、クラミジア感染症などの病気の有無を調べる超音波(エコー)検査、子宮鏡検査、頸管粘液検査、フーナーテストまたはPCT(性交後、腟内・子宮口の頸管粘液内の精子を注射器で回収し、顕微鏡にて観察)など、月経周期のそれぞれの検査に合ったタイミングで実施。子宮内膜症や子宮筋腫の疑いがある場合は、追加でMRI検査や腹腔鏡検査を行う場合も。一方、男性に対しては、精子の数や運動率を調べる精液検査、血液検査、尿検査、精巣検査、超音波(エコー)検査などを行う。
治療
基礎体温や超音波(エコー)検査をもとに排卵日を予測する「タイミング法」から始め、徐々にステップアップしていくことが多い。排卵障害の場合、薬によるホルモン治療が行われることも。数周期行っても妊娠しない場合は、以降は保険適用外となるが、排卵日に合わせて精子を直接子宮に注入する「人工授精」を、それでも結果が出ないときは、卵巣から卵子を取り出し体外で精子と受精させ、受精卵を子宮に移植する「体外受精」や「顕微授精」といった生殖補助医療(ART)を行う。卵管狭窄・閉塞の場合は、卵管を開通させる卵管癒着剥離術や卵管形成術を、子宮内膜症の場合は、腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術を行う。男性側では、勃起障害に治療薬を用いたり、乏精子症の治療や、無精子症で精管閉塞がある場合は、精路再建手術を行うか精巣精子採取術と顕微授精を組み合わせる。現在日本では、約40万件以上の生殖補助技術が行われている。
予防/治療後の注意
女性側では、極端な肥満や痩せの場合は、食事や運動などで適正体重を保ち、月経の改善につながる。喫煙は卵巣の老化を早め、体外受精の成功率が低下するので禁煙を。クラミジアなどの性感染症の予防。男性側では、勃起障害(ED)の場合は、肥満、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の改善。喫煙は精子数を減少させるため禁煙する。加齢により、男女とも妊娠する・させる力(妊よう性)が低下し、高齢になると妊娠しても子宮内膜症の合併や流産などのリスクが高まる。不妊症の治療は早い段階で行うほど効果的。夫婦でライフプランを考え、なかなか妊娠しないと思ったら、躊躇したり不安を感じるよりも早めに専門家に相談することが大切といえる。

こちらの記事の監修医師
田中 京子 先生
慶応義塾大学卒業後、同大学病院、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て、東邦大学医療センター大橋病院の准教授へ就任。日本産婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格を持つ。
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