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東京医科大学八王子医療センター 副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

しんきんしょう心筋症

概要

心臓の筋肉に異常があること。これにより、全身へ血液を送り出すためのポンプ機能などが低下してしまう。明らかな原因疾患がわからない「特発性心筋症」と何らかの疾患に関わっているという原因が特定できる「特定心筋症」(虚血性心筋症や弁膜症性心筋症、筋ジストロフィーに伴う心筋症など)に分かれるが、一般的に心筋症とは特発性心筋症のことを示す。また、特発性心筋症の中には、特発性拡張型心筋症や肥大型心筋症など、難病に指定されているものも。人によって症状やタイプ、重症度などが異なるため、適切な診断と治療が重要になる。

原因

心筋症のタイプにより原因は変わってくるが、はっきりとした原因がわからないケースが多い。特発性拡張型心筋症の場合、心臓の筋肉へのウイルス感染や免疫異常との関連性が疑われているが、明らかな原因はまだ解明されていない。その一方、肥大型心筋症では、心臓の筋肉の収縮に関わるタンパクの遺伝子変異が主な原因ということがわかってきている。そのほか、特発性心筋症は、心筋梗塞狭心症などの虚血性心疾患、心臓にある弁に障害が起きて機能が低下する弁膜症、飲酒、周産期、サルコイドーシス(原因不明の多臓器疾患)、筋ジストロフィーなどとの関連性も考えられている。

症状

症状は多彩である。動悸や息切れ、疲れやすさなどの症状が現れてくる。咳やたんの出る回数が増えたり、走った後に息苦しさを感じたり、足がむくんだりすることも。症状が進むと呼吸困難が悪化して、横になって寝ることができなくなり、動いていなくても息苦しさを感じるようになってしまう。そのほか、めまいや動悸、失神などの症状が出てくることもある。さらに、心筋症によって不整脈脳梗塞などが引き起こされ、命を落とす危険性もあるため、注意しなければいけない。なお、心筋症の症状が軽い場合、このような自覚症状がほとんどないケースもある。

検査・診断

心臓の形や大きさ、心筋の厚さ、収縮力などを調べるために、心電図や超音波(エコー)検査、胸部エックス線検査など、さまざまな検査を行っていく。胸部CT検査やMRI検査、心臓カテーテル検査(細長い管であるカテーテルを用いて、心臓の血管・心腔に造影剤を注入し、エックス線検査を行うこと)、心筋シンチグラフィー(放射性同位元素を用いて心筋に流れ込む血液の流れを観察すること)などが行われることも。また、心筋症に伴い、不整脈が重症化していないかを確認するために、ホルター心電図をしたり、血液検査にて心不全の場合は高い値が出るBNPの測定を行ったりする。

治療

いずれのタイプの心筋症であっても、心臓の働きを助けるための薬物療法が基本となる。例えば、心臓の機能低下による突然死を防ぐために、心不全の治療でも使われているβ遮断薬などを処方。薬物療法だけでは改善が見られない場合、心臓にペースメーカーを入れて心筋の機能改善を図る心臓再同期療法が行われることも。心臓の機能が著明に低下した心筋症では心臓移植が必要となることもある。

予防/治療後の注意

治療後は、心臓への負担をかけない生活を心がけていくことが大切。また、生活習慣病と密接な関係がある動脈硬化が心筋症を引き起こすこともあるため、食生活の改善や適度な運動なども求められる。例えば、水分や塩分の取りすぎは心臓への負担をかけるため、注意が必要。なお、完治が難しい病気であるため、長い期間にわたって薬を飲み続けることが重要。医師の指示に従い、自己判断で服用をやめたりしないこと。

東京医科大学八王子医療センター 副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

こちらの記事の監修医師

東京医科大学八王子医療センター

副院長/循環器内科科長/教授 田中 信大 先生

1989年東京医科大学医学部卒業。東京医科大学病院、神戸市立中央市民病院などを経て2007年オランダ・カタリーナ病院に留学。 帰国後は東京医科大学病院へ。2015年八王子医療センターに赴任。2016年より循環器内科教授、2017年副院長に就任。日本循環器学会循環器専門医。