こちらの記事の監修医師
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院
菅原 英和 院長
きんじすとろふぃー筋ジストロフィー
最終更新日:2022/01/04
概要
手や足を動かすための筋肉の組織が壊死と再生を繰り返す遺伝性の筋疾患の総称。進行性で、筋力の低下や筋の萎縮などをもたらす。有病率の正確な統計はないが、人口10万人あたり約20人の患者がいると言われており、難病に指定されている。発症年齢や進行具合、遺伝形式などにより、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィーなどに分類される。人種や国によって有病率が異なるが、比較的多いのはデュシェンヌ型筋ジストロフィー。日本では福山型先天性筋ジストロフィーの患者が他国よりも多い。
原因
筋線維に必要なたんぱく質がつくられず、壊れやすくなったり変性したりすることによって、筋力が低下し運動機能に不具合が生じる。同じような筋疾患は他にもあるが、筋ジストロフィーの場合はその多くが遺伝性であるのが特徴。遺伝子の変異は親から引き継がれる場合もあるが、突然変異によって生じることもある。遺伝子の変異から細胞の機能障害を生じるまでのメカニズムや、遺伝の仕方はタイプによって異なる。例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーはX染色体劣性遺伝という形式を取り、男児に多く現れる。似た症状の筋ジストロフィーでも遺伝子変異の場所が違ったり、同じ変異でも症状が違ったりすることもあり、また責任遺伝子が判明していないタイプも少なくない。タイプによって症状の経過やリスクが異なるため、病型を正確に見極めることが必要。
症状
病型によって症状の経過は異なるが、主な症状としては手足の筋肉の萎縮による関節の運動制限(拘縮)や運動障害が見られる。また呼吸機能障害、嚥下機能障害、心筋障害、骨代謝異常、甲状腺機能障害、難聴など、さまざまな合併症を引き起こすことも多い。例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィーは、4歳前後に転びやすく、走れないことで判明する。10歳頃には歩行が困難になり車いすを使用しはじめ、呼吸困難や心筋症を併発することもある。先天性筋ジストロフィーの場合は乳児期より発症し、顔を含む全身の筋力が低下。発達遅滞などによって判明する。運動発達のピークは5、6歳で、その後筋委縮により退行する。
検査・診断
筋肉が破壊されると酵素の数値が上昇するため、血液検査ではこれらの数値を調べる。健康診断などで受ける血液検査によって病気が明らかになることもある。筋肉に針状の電極を刺して筋肉や神経の異常を調べる「針筋電図検査」を行い、さらに筋肉組織の一部を採取して顕微鏡で観察する筋生検などを行うことにより、疾患の種類が特定できる。鑑別診断としてCT検査やMRI検査などの画像診断を行う場合もある。そのほか、遺伝子検査で保因者か否かを判定することもでき、発症率が高い病型の筋ジストロフィーに関しては、遺伝子診断を比較的簡単に実施することが可能。
治療
現在、根本的な治療薬はなく、症状の悪化を遅らせるための処置が中心となる。具体的には、ステロイド剤の投与など。新薬の開発も随時進められている。筋力トレーニングなどのリハビリテーションも有効で、専門家の指導のもと、早い時期から関節稼働域訓練などを行うことによって体の変形や痛みを予防することができる。背骨の変形に対しては、必要に応じて整形外科手術が行われる。呼吸機能維持のためにはリハビリテーションを行ったり、自力での呼吸が難しくなった際には鼻マスクの人工呼吸器を取り入れることが重要。食べ物などが器官に入ると誤嚥性肺炎の危険性があるため、飲み込む力が低下したら胃ろうなどを用いる。心機能の低下に対してペースメーカーを導入することもある。病状やリハビリテーションの内容、ケアの方法は進行するたびに変化するので、定期的に機能評価をし、合併症を発症していないかどうか検査する必要がある。
こちらの記事の監修医師
菅原 英和 院長
1992年東京慈恵会医科大学を卒業。消化器外科を志望していた同大学での研修医時代、「プラスの医療」といわれるリハビリテーション科の医学的部分に興味を持ちリハビリテーション科に転身。東京都リハビリテーション病院を皮切りに大学病院や都立病院のリハビリテーション科勤務を経て、2010年同院に着任、2016年院長に就任。医学博士、日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医。
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