運動障害がある子どもたちの成長を
家族とともに支え見つめ続ける
たわだリハビリクリニック
(名古屋市港区/戸田駅)
最終更新日:2025/02/14


- 保険診療
妊娠中、生まれた直後、学童期に入ってから……。時期は違えど「わが子に障害がある」と知ったとき、不安にならない親はいないだろう。そんな親たちのために、「子どもが成長した後も継続してリハビリテーションに取り組める場所をつくりたい」と2009年に開業した「たわだリハビリクリニック」。同院には、脳性まひや筋ジストロフィー症、染色体異常などを起因とした運動障害がある0歳から70代までの幅広い年代の患者が通う。小児リハビリテーションを軸に長年障害児医療に携わってきた院長の多和田忍先生は、「私ができることをすべてお渡ししたい」と、温かなまなざしで熱意を込めて語る。ゆっくりと成長していく子どもたちと、それを支える家族を見つめ、支え続けてきた多和田先生に、同院の取り組みについて話を聞いた。
(取材日2025年1月22日)
目次
一人ひとりの成長と現状を捉え、人生そのものを応援する。本人が有する能力を最大限生かせるように
- Q小児リハビリテーションにはどのような方が通っていますか?
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A
▲前回と比べて良くなったのか悪くなったのかを診断する
愛知県を中心に三重、岐阜、静岡からの来院が多く、東京や京都など遠方から通われる方もおられます。疾患もさまざまで、脳性まひや筋ジストロフィー症、先天性疾患、てんかん、神経発達症の一つである発達性協調運動症など、主に運動機能に問題がある方になります。遠方からの来院が多いのは、「シーティング」といって椅子や車いすに快適に座るためのサポートの専門性の高さがクチコミで広がり、「ここならしっかり診てもらえそう」と信頼を寄せていただいていることが大きいのかもしれませんね。0歳から70代後半まで幅広い年齢層の方が通院されており、特に成人後も継続的に診療が必要な脳性まひの方が多いのも特徴ではないでしょうか。
- Q開業から15年。どんな想いで子どもたちと向き合っていますか?
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A
▲子どもと接するときが一番幸せで元気をもらえると語る多和田院長
「私ができることをすべてお渡ししたい」という想いでやってきました。正直に言えば、私のできることは限られています。病気を治すことも、障害を完全になくすこともできません。では「私にできることは何なのか」それを常に考えながら診療をしています。例えば脊柱側弯症や股関節の脱臼など、悪化する前に異常を見つけ、適切な治療へつなげることが大切です。私ができる治療はリハビリテーションと装具、ボツリヌス療法などの保存療法という手段ですが、それ以上の処置、例えば手術や入院が必要な場合は、私の手を超えます。だからこそ、できるだけ多くの専門の先生方とつながり、信頼できるネットワークを構築することにも力を注いできました。
- Q障害があることをご家族が受け入れるのはとても難しいですよね。
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A
▲家族から話を聞き、子どもの体を優しく触りながら確認する
ええ。涙を流される親御さんもいらっしゃいます。お子さんが成長するにつれ、明るく前向きに受け止められる方も多いですが、最初からそうなれるわけではありません。でも出会ってきた患者さんの中には、パラスポーツの大会で優勝した方や、社会に出て活躍されている方もいます。コミュニケーションが取れなかった子が笑ってくれたり、歩いたり、どの子も成長していく姿を見せてくれるんです。ご家族は、悩み、葛藤しながらも、やがて乗り越えていかれます。そしてその先には「この子に勇気をもらった」「この子のおかげで、私の毎日は充実している」とおっしゃる方がたくさんおられます。私はそんな姿を見てさまざまなことを教えてもらいました。
- Q家族は子どもに対して、どのように接することが大切でしょうか?
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A
▲障害があることを特別と思い過ぎないでほしいと語る院長
お子さんを思うからこそ、「できないことが多い」「歩けないかもしれない」と不幸に思ってしまうこともあると思います。でも、障害があっても、その子なりに成長し、家族にとって大切な宝物であることに変わりありません。その子の成長と人生を応援していくことが大切だと思っています。障害があっても幸せに生きている方をたくさん知っていますし、逆に一見健常に育っても大きな困難に直面することは多々あります。だからこそ、私はどのお子さんにも自然に接することを大切にしています。親御さんたちには、「障害があるから特別な接し方をしなければならない」と考えすぎず、まずは目を見て心で話しかけることを意識くださるといいと思います。
- Qクリニックではどのような治療を提供していますか?
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A
▲その子にとってベストな姿勢で撮れるように院長自ら体を支える
リハビリテーションが中心ですが、装具の作成も重要な役割を担っています。例えば、足や手の変形を矯正し、悪化を防ぐための装具のほか、背中の側弯に対する装具も作製しています。また、筋緊張が強い方にはボツリヌス療法を行うこともあります。さらに、椅子や車いすの座位姿勢を適切に調整するシーティングにも注力しています。姿勢は筋緊張や側弯、呼吸・嚥下機能に影響を与えるだけでなく、本人の能力を最大限に生かすためにも適切なサポートが欠かせないからです。また、診療ではエックス線撮影などを活用し、客観的な数値で変化を確認し、患者さんやご家族が前向きに治療に取り組めることを大切にしています。