井坂 奈央 先生の独自取材記事
Dクリニック東京ウェルネス
(千代田区/東京駅)
最終更新日:2024/07/29

ビジネスパーソンや旅行者が行き交う東京駅から徒歩3分のところにある「Dクリニック東京ウェルネス」は、オンライン診療と対面診療の両方に対応するクリニック。新型コロナウイルス感染症の流行以前からオンライン診療に注力してきたノウハウを生かして、現在では主に睡眠時無呼吸症候群とそれに関わる生活習慣病の管理、花粉症などのアレルギー性鼻炎の治療など、忙しく働く人の健康維持に欠かせない診療を提供している。2024年6月からはCPAP療法を行う患者に向けてのオンライン診療も開始。「忙しくて通院が難しい人にこそ睡眠時無呼吸症候群を未治療で放置してしまっている人が多い印象です。突然死にもつながる病気のため、オンライン診療の活用により低下させていきたい」と話す井坂奈央先生に、診療の特徴について話を聞いた。
(取材日2023年8月24日/情報更新日2024年6月19日)
突然死リスクもある睡眠時無呼吸症候群を専門的に診療
先生は睡眠障害をご専門とされているのですね。

日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医として、もとは耳鼻咽喉科におけるサブスペシャリティーとして睡眠障害の診療を担ってきました。診療を重ねるうち、睡眠の重要性を再確認。さらに深く追求したいという思いが強まり、大学病院や専門医療機関などで診療科の枠を超えた総合的な睡眠障害の診療に携わってきました。こうした経験から、当院でも多くご相談を受けている睡眠時無呼吸症候群(SAS)に加えて、不眠症やナルコレプシーといった過眠症にも幅広く対応できます。
睡眠時無呼吸症候群について教えてください。
睡眠中に呼吸が浅くなったり、止まったりといったことを繰り返す病気です。寝ている間のことなので自覚されている方は少なく、ご家族やパートナーから指摘されて症状に気づいたという方がほとんどです。自覚できる症状としては日中の眠気や集中力低下などになり、その社会的損失の大きさが近年問題視されています。全身の血中酸素濃度が低下することで心臓や血管に負担がかかり、高血圧や動脈硬化、糖尿病などの疾患リスクが高まります。中には脳卒中や心不全など、突然死や後遺症につながる重篤な病気を引き起こすケースがあり、早めに治療に取り組むことが重要です。
睡眠時無呼吸症候群の治療はどのようなものですか。

重症であれば経鼻的気道持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)を行います。眠る際に鼻に装着したマスクから圧力をかけた空気を送り込み、気道を広げることで睡眠中の呼吸を安定させることをめざす方法です。感覚的には視力低下に用いる眼鏡のようなもので、症状がある限り継続する必要があります。CPAPに頼らない根治をめざす治療としては、マウスピースや外科手術などもあります。いずれも顎の骨にアプローチすることで気道を広げることを図る方法です。さらに、食事や運動など生活習慣の改善により、CPAP卒業をめざすことも可能です。睡眠時無呼吸は肥満の方に多く、症状があることで痩せにくくなる病気でもあります。
状況によりオンラインと対面の併用でシームレスに対応
ところで、クリニックの特徴はどういったところがありますか。

ビジネスパーソンが多い立地であることから、当院では、そういった忙しい人々に時間を取らせない、かつ、しっかりとした診療を行うことをコンセプトとしています。新型コロナウイルスの流行下でオンライン診療が普及しましたが、当院ではそれ以前から積極的にオンライン診療に取り組んでいたことも特徴の一つであると言えます。特に、大きな社会的損失につながっていることが指摘されている睡眠時無呼吸症候群は、忙しく働くビジネスパーソンにこそ多い病気です。兆候を自覚されていながら適切な治療を受けられていない方、これまでに治療の継続を断念してしまった方などに、ぜひ当院の利便性を活用していただきたいと思います。
貴院の診療の強みはどういったところでしょうか?
緩急をつけて診療ができることが強みです。オンラインのみ、対面のみにこだわることなく、それぞれの患者さんの症状や状況に合わせてシームレスに対応できます。検査や処置が必要な際には対面で、それ以外の診療や経過観察はオンラインでといったように、シーンに合わせて両者を切り替えながら、適切な診療を行うことができます。とにかく手軽なオンライン診療と、対面による充実した診療の両方の良さを使い分けていただけるのがメリットです。今年度の診療報酬改定に伴って、2024年6月からはCPAP療法を行う患者さんにオンライン診療が提供できるようになりました。初診は対面での診療となりますが、2回目以降はオンラインで診療を受けることができます。通院の負担を減らし、もっと気軽に治療を受けてもらえるような体制づくりとして当院も早速取り入れています。
オンライン診療のメリットとして感じていらっしゃることはありますか。

通院に関わる移動時間や待ち時間がないことはもちろん大きなメリットですが、それに加えて専門性の高い診療を場所を選ばず受けることができるメリットも大きいと感じています。私が主に診ている睡眠障害は、専門的に診療する医療機関が限られており、お住まいの近くに受診先を見つけられないということも。そうした方でもオンラインであれば気軽に受診していただけます。また、オンライン診療では患者さんはご自宅などから診察を受けることになるので、診察室よりもリラックスされている様子で、いろいろなお話が出てくるほか、親子で続けて診療ができるというメリットもあります。説明に用いる資料などもデータでご提供できるので、後からご家族に説明される際にも便利です。
睡眠を見直すことが覚醒時の活動充実につながる
睡眠時無呼吸症候群で貴院を受診するメリットは?

睡眠時無呼吸症候群は内科や精神科で診療することが多いのですが、耳鼻咽喉科的アプローチができることは大きなメリットでしょう。風邪などで鼻が詰まり寝苦しさを感じたことは誰にでもあると思いますが、鼻腔内の問題が睡眠の質に関わることはよくあります。当院ではファイバースコープを用いて鼻腔内の状態を確認したり、花粉症などアレルギー性鼻炎がひどくなる時期には症状に合わせた薬を処方することも可能です。オンライン診療と特に親和性の高い舌下免疫療法も実践しており、睡眠の治療と合わせてご利用いただくことができます。また、糖尿病や高血圧など、睡眠時無呼吸症候群との深い関連が指摘されている生活習慣病を専門とする医師もおり、総合的に診療できるのも強みです。
先生が睡眠の診療に力を入れるようになったきっかけは何ですか。
恩師との出会いがきっかけで、睡眠の面白さに惹かれました。いまだ謎が多い睡眠ですが、研究によりさまざまなことがわかってきています。何より、睡眠と覚醒は表裏一体であり、切り離せないもの。覚醒時の活動を充実させるためには、睡眠を見直すことが欠かせないのです。特に働き盛り世代に多い睡眠時無呼吸症候群は、生産性低下や事故率上昇などで社会経済に大きな損失を与えています。治療を通して皆さんの睡眠安定をめざし、社会に貢献していければと考えています。
快眠をめざすために、日常生活で心がけるべきことがあれば教えてください。

スムーズに入眠し、眠りのリズムを整えるためには、深部体温を下げることが重要になります。そのためには眠りにつく前に、一度体を温めるのが効果的です。床に入る90分ほど前に、湯船に浸かるのがお勧めです。また、寝具を工夫することでも効果が期待でき、特に枕の選び方は大切です。頭からの熱を効率良く逃がせる通気性の良い枕を選びましょう。これらに加え、もし睡眠中に呼吸の乱れがあるようなら、早めに受診し治療することが欠かせません。
読者に向けてひと言メッセージをお願いします。
近年、睡眠の質への興味・関心が高まっているようです。さまざまなサプリメントなどを試すといった話もよく聞きますが、睡眠時無呼吸症候群があっては意味がありません。睡眠時無呼吸症候群は、覚醒時のパフォーマンスを低下させるだけでなく、突然死にもつながる恐ろしい病気です。ご家族やパートナーの睡眠中の様子に気がかりがあれば、ぜひご指摘ください。もしも指摘を受けたなら、「たかが睡眠」と軽視することなく、専門の医師にご相談いただくことを強くお勧めします。