大学病院と同様の2つの検査で
「生活の役に立つ補聴器」へ調整
たけすえ耳鼻科クリニック
(那珂川市/博多南駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
自然な加齢現象として起こる聴力の低下。周囲とのコミュニケーション不足を解消するために補聴器を購入する人も多いが、「ただ音を大きくするだけでいい」という間違った認識も散見され、その調整は素人では非常に難しい。「たけすえ耳鼻科クリニック」では聴覚の専門家である耳鼻科の医師や言語聴覚士とともに、音場検査・実耳測定という、大学病院レベルの機器を使った2つの検査を実施。「実生活で役に立つ補聴器」をめざし、具体的な使用場面を想定した細かい調整を行っている。また検査室は、車いすでも入室可能なバリアフリーに対応した広々とした空間。生活する上で納得のいく「聞こえ」に出会うための補聴器選びや同院の取り組みについて、院長である武末淳先生に詳しく話を聞いた。
(取材日2021年5月7日)
目次
聴覚を専門とする医師のもと、高精度の音場検査・実耳測定を行い、「実生活で役に立つ補聴器」へと調整
- Q年齢の変化に伴い、聞こえにも変化が生じるそうですね。
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A
▲「実生活で役に立つ補聴器」をめざすと語る武末院長
変化には大きく4つが挙げられます。1つ目は「小さい音が聞こえにくい」。しかし単純に大きくすればいいのではありません。なぜなら、大きくしすぎると、2つ目の「音割れやを反響を起こす」につながり、音としては聞こえても情報として認識できなくなるからです。3つ目は弁別能という「言葉の聞き取り能力の衰え」です。音は入ってくるものの、情報として分析できる範囲が減ってしまう状態です。4つ目は「速度分析力の衰え」。早口での内容がわかりにくくなる状態です。この4つを解決するためには、「小さすぎず、大きすぎず、はっきり、ゆっくりとお話しすること」が重要です。これを意識していただくだけでかなり聞こえ方は変わります。
- Qこちらの医院で行っている補聴器の診察の特徴を教えてください。
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A
▲まずは耳の病気の有無を診てもらう
聞こえ方、中でも補聴器の相談があれば、まずは私が耳の病気の有無などを診察で確認します。そこで補聴器の選択が可能だと判断すれば、週に1回外来を担当してくださっている九州大学の名誉教授であり、私の恩師でもある白石君男先生に診療をバトンタッチします。白石先生は聴覚検査機器の開発にも携わってこられた聴覚障害のエキスパートであり、さらに言語聴覚士でもあります。その先生のもとで補聴器のさまざまな調整を行える点は、当院の大きな強みの一つであると考えています。
- Qどんな検査を行いますか?
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A
▲検査については看護師さんによる説明からスタート
まず1つ目が「音場検査」です。補聴器をつけた状態でスピーカーから音を聞き、実際の生活の中でどのような聞こえ方になっているのかを調べます。2つ目が「実耳測定」です。こちらも補聴器をつけた状態で、小さなマイクを鼓膜近くに設置し、実際に耳の中でどのように聞こえているのかを調べ、補聴器を細かく調整します。現在はデジタル補聴器になり、複数のチャンネル、例えば「マスクをしている時」「静かな時」「人混みにいる時」など設定できるようになりました。これらを細かく調整することで、患者さんの納得いく補聴器に近づけていきます。いずれの検査機器も大学病院レベルのものを導入し、検査室はバリアフリーにも対応しています。
- Q補聴器を購入する際に気をつけたい点は何でしょう?
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A
▲患者によって求める聞こえ方は異なる
生活の役に立つかどうか、です。前述したように、音が聞こえても情報が得られなければ、補聴器の役割を果たせていないとも言えます。ですから生活を送る上で実用性があるのかどうかを患者さんには常に考えてもらっています。特に「どんな場面での聞こえの改善が必要か」という点はしっかり確認します。補聴器は魔法の道具ではありません。「なんとなく全部が良くなる」ということは、残念ながら基本的に期待できないのです。一番必要な部分にターゲットを絞り、そこを中心に調整していくのが重要なのです。そのため2〜3ヵ月のお試し期間を設けています。その間に「生活で役に立たない」と判断されれば、無理に補聴器を使う必要はありません。
- Q補聴器の調整には、どのくらいの時間がかかりますか?
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A
▲聴覚の専門家である耳鼻科の医師や言語聴覚士とともに取り組む
補聴器の調整にかかる回数はおおよそ3〜4回。2週間に1回ほど来院してもらいますので、平均で2〜3ヵ月ほどの時間がかかります。当院では「こういう条件での聞こえを改善したい」とターゲットを絞った上で、音場検査と実耳測定を行い、細かな調整を行うので、補聴器の精度も格段に上がります。先ほども説明したように、年配の方はある程度の音量であれば言葉の聞こえ方の回復が期待できますが、そのまま音量を上げても逆に情報の取得の精度が悪くなってしまいます。そうでなければ、実生活での聞こえの改善は望めません。そのピンポイントでデリケートな調整を専門家が行うために必要なのが、音場検査と実耳測定なのです。