ストレスなどで多様化するめまい
原因を見極め、機能回復をめざす
たけすえ耳鼻科クリニック
(那珂川市/博多南駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
良性発作性頭位めまい症、メニエール病、突発性難聴など、いわゆる「末梢性めまい」に分類される良性のめまいの原因は、現在、非常に多様化している。パソコン作業による肩凝りや眼精疲労、職場での人間関係といった心理的ストレスも原因の一部だと考えられている。「たけすえ耳鼻科クリニック」では先進の検査機器を使用し、患者一人ひとりの原因をしっかりと見極めながら、めまいに対する不安のケアも実施。「今日は何ができたのか」という毎日の記録をもとに、「めまいが起きなかった」という成功体験を積み上げることで、体の機能とともに、患者のめまいに対する認識も再構築していくことが大切だと語る武末淳院長に、めまいの検査や治療法などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2021年5月7日)
目次
ストレスや肩凝りからも起きるめまい。リハビリテーションや運動で平衡機能構築を図り、再発への不安もケア
- Qめまいでの診察の流れを教えてください。
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A
▲めまいがある場合は検査を実施
めまいがある場合、まず4つの検査を行います。1つ目は聴力検査で聴力の低下などがないかを確認します。2つ目は重心動揺検査。体に揺れが生じているかを調べます。3つ目は赤外線カメラを使用した眼振の検査。これは耳石と呼ばれるカルシウムの塊が三半規管の平衡感覚を刺激することで症状が出ます。この3つはめまいの診断には欠かせない要素です。4つ目は自律神経の測定です。これは当院が独自に導入しているもので、寝不足や過労、ストレスなどといっためまいの要因と考えられる項目をピックアップし、症状の評価の一助にしています。これらの検査を行うことで、患者さんお一人お一人のめまいの要因は何なのかを絞りこんでいくのです。
- Qめまいの原因は何なのでしょうか?
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A
▲めまいの原因はさまざま
私たち耳鼻科が担当しているめまいでは、三半規管の機能の乱れによるめまいが最も多く見られます。ものを見るのは目、音を聞くのは耳ですが、平衡感覚は単一の要素によって成り立つのではありません。三半規管によるもの、視覚による空間認識、そして深部知覚といって筋肉などを介した体の位置情報の感覚といったさまざまな情報をかけ合わせて、体の姿勢を制御しています。そして自律神経はその制御の調整を担っています。現在はデジタル機器の普及などにより、パソコン操作による肩凝りや目の酷使、仕事のストレスによる自律神経の乱れなど、体の一部だけではない、多様な生活スタイルによる要因が、めまいの原因として考えられています。
- Qいくつもの情報で、体の平衡感覚が保たれているんですね。
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A
▲メンタル的な要素がめまいの原因の場合もある
ですから一つの箇所が壊れたとしても、ほかの要素で補う“代償機能”が働くことで、めまいという症状を制御・治療することは可能なのです。良性発作性頭位めまい症やメニエール病、突発性難聴など内耳を中心としためまいは「末梢性めまい」と呼ばれ、治療が可能なめまいといわれています。めまいを治療してもなかなか治らないという場合は、この代償機能が完成しない、もしくはその機能を壊す力がより強いのだと考えられます。その要因の一つとして、近年ではメンタル的な要素がフォーカスされるようになりました。めまいに対するPTSDがあるなど、不安要素が強いという方もこれにあたります。
- Qそういった理由から、リハビリ治療も行っているのですね。
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A
▲自宅で取り組むリハビリのための配布物も用意されている
代償機能を最大限に発揮するためには、体を動かすことが重要です。眼球や頭を動かしたり、歩行訓練をすることで、平衡機能をつくり直していくのです。薬は急性期の症状に対して用いますが、あくまで補助的な役割として使用しています。大事なのは「まためまいが出るのではないか」という不安を抱えた患者さんの心のケア。そのためにも患者さんには日々メモを書いてもらっています。「今日は自分でトイレに行けた」「部屋の中を歩けた」「家の外に出た」「買い物に行けた」など、自分の行動範囲を認識し、少しずつその範囲を広げていく。「まためまいが出るかも」ではなく「今、めまいなく歩けている」とポジティブに認識することが大事なのです。
- Q検査結果のデータも、行動の認識に活用するのですね。
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A
▲自身がどういった状態かを知る意味でも、検査は重要
毎回の検査は、ご自身の状態がどのように変化しているのかを知る機会だと考えています。赤外線カメラには録画機能がありますし、重心動揺検査や聴力検査、自律神経の測定もデータを保存し、写しは毎回患者さんにお渡ししています。グラフを比較しながら「かなり正常範囲に近づいてきましたね」、眼振の画像を見ながら「前回より症状が減っていますね」など確認することで、患者さんの治療へのモチベーションにしてもらいたいのです。こうしたデータでの表現・評価ができるようになった点は、私たちにとっても大きな進歩。今後もできる限り患者さんにとってわかりやすい情報をお伝えできるよう、さまざまな方法を導入していきたいと考えています。