こちらの記事の監修医師
公立学校共済組合 関東中央病院
皮膚科部長 鑑 慎司 先生
けっせつせいこうはん結節性紅斑
最終更新日:2022/02/25
概要
皮下脂肪に炎症が起こり、皮膚に小さな卵くらいまでの大きさのやや膨らんだ赤色や紫色の斑点(結節)がたくさんできる病気。最も多いのはすねの前面の皮膚への発症で、腕などに生じることもある。患部には圧痛があり、発熱や倦怠感、関節痛など全身症状をともなうこともある。細菌やウイルスに感染した際や薬剤へのアレルギー反応として生じる場合と、全身に炎症が起きるベーチェット病などの部分症状として生じる場合などがあり、原因が多岐にわたるためかなり広い疾患を含む。20~30代の若い女性に多く発症する。有病率は10万人に5人弱といわれている。
原因
原因はさまざまだが、最も多いのは溶連菌などの細菌、ウイルス、真菌などへの感染アレルギーだと考えられており、これをきっかけに皮下脂肪に炎症が起き、しこりのある紅斑がたくさん発生する。抗生物質や経口避妊薬などの薬剤に対するアレルギーが原因で生じることもある。またベーチェット病、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、サルコイドーシスなどの自己免疫疾患、白血病や悪性リンパ腫を含む悪性腫瘍を抱えている人にも出やすいとされている。まれではあるが、ハンセン病患者に生じることもある。罹患者の3分の1程度は原因不明ともいわれていて、発症の経緯には非常に多くの要因を含むため、問診や検査を通じた原因の鑑別を行い、もととなっている病気や薬剤を特定することが重要となる。
症状
膝から足首にかけてのすねの部分に、直径1~5mm程度、大きいものは10cmほどの赤や紫の斑点が多数できる。色の境界線は不鮮明で、あざのように時間が経つにつれて青っぽい茶色へと変化する。患部は押すと痛みをともない、熱を帯びていてしこりのような硬さがある。最も多いのは膝下への発症だが、重症の場合は太ももや腕にまで広がることもある。通常は2週間から1ヵ月で消えるが、繰り返す場合もある。熱や全身のだるさ、のどの痛み、関節痛といった風邪に似た全身症状が出ることもある。溶連菌感染症の場合は発熱、結核の場合は咳、炎症性腸疾患の場合は下痢など、発症の原因と疑われる病気特有の症状も併発するため、患部だけでなく全身状態を確認する必要がある。
検査・診断
皮膚の特徴的な症状からおおよその診断が可能。また血液検査で炎症の程度などを調べる。結節性紅斑以外にも、バザン硬結性紅斑やスイート病、結節性多発動脈炎、深在性エリテマトーデスなど、似たような症状が出る病気があるため、それらと鑑別し診断を確定させるためには、皮膚を一部切り取って顕微鏡で詳しく調べる病理検査(皮膚生検)を行う。また発症の原因となっている病気を調べるため、胸部エックス線撮影、結核の検査、咽頭培養検査による溶連菌の検出などを行うほか、発症の約2週間前からの異変の有無、既往歴などを確かめて参考にする。
治療
横になり、下肢を安静にすることが一番大切で、症状が軽い場合には対症療法として炎症を抑える非ステロイド性抗炎症薬やヨウ化カリウムが用いられ、患部を冷却することもある。ステロイドの内服ができない糖尿病などの患者に対しては、ヨウ化カリウムが有効である。多くの場合は安静と薬の内服だけで快方に向かう。症状の強い場合や、なかなか治らない場合には、ステロイド剤の内服が一般的である。全身症状が強い場合には入院も検討する。通常の結節性紅斑の場合は2週間から1ヵ月経過すると軽い色素沈着のみが残り回復する。重症の場合は数個の痕が残ることもある。基礎疾患が原因で発症している場合には、基礎疾患そのものの治療を要するため、それぞれの科と連携して同時に治療を進めていく。溶連菌などの感染症には抗生物質が用いられ、薬剤アレルギーの場合は被疑薬の使用を中止する。
予防/治療後の注意
安静、下肢挙上が治療にも予防にもなる。
こちらの記事の監修医師
皮膚科部長 鑑 慎司 先生
2000年3月東京大学医学部医学科卒業。同大学附属病院の皮膚科で研修後、2006年3月に同大学院博士課程を修了。その後同大学附属病院皮膚科助教や、関東労災病院皮膚科にて医長を務める。Oregon Health & Science University博士研究員、東京大学医学部附属病院皮膚科講師などを経て、2012年4月より現職。日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本レーザー医学会レーザー専門医。
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