
こちらの記事の監修医師
昭和大学歯科病院
口腔リハビリテーション科教授 高橋 浩二 先生
こうおんしょうがい 構音障害
最終更新日:2024/02/19
概要
適切な発音ができず、コミュニケーションで困ることがある状態を構音障害といいます。構音障害を引き起こす原因はさまざまで、原因によって治療を行う診療科も異なります。適切に発音するには、多くの器官が絶妙なタイミングで正確に動く必要があり、例えば唇や舌、顎が適切な位置で滑らかに、素早く動き、同時に喉の声帯が振動して音源として働く必要があります。音源である声帯以外の器官の動きに障害が生じ、正しい音として聞き取れない状態が構音障害です。一方、音源である声帯の動きが障害されて声が出にくかったり、どもってしまったり、知的な遅れにより話せる言葉が少なかったり、失語といった症状がある場合は、構音障害ではなく別の言語障害に分類されます。
原因
構音障害を原因別に分類すると、器質性構音障害、運動障害性構音障害、聴覚性構音障害、機能性構音障害の4つに大別されます。器質性構音障害とは、発音するための器官である唇や舌などの形態に異常があり、適切に発音できない状態で、口腔がんの手術後や外傷、口蓋裂など生まれつきそれらの器官に異常がある場合にみられます。運動障害性構音障害とは、脳や神経の病気により発音する時に唇や舌などの筋肉を適切に動かす指令が適切に働かず、発音に障害が生じる状態で、脳卒中や交通外傷による脳損傷や、パーキンソン病や脳性まひなどの神経難病でみられます。聴覚性構音障害は、いわゆる難聴により、手本となる正しい発音や自分の発音を聞き取れないために、正しく発音することを学習できず、発音に障害が生じる状態をいいます。機能性構音障害は、上記のような原因はまったくないにもかかわらず、正しく発音できない音がある状態です。
症状
正しく発音できないことが構音障害に共通する症状ですが、原因によってさまざまな症状があります。器質性構音障害では、手術後の唇や舌、上顎の形などにより音が全体的にこもったり、形態の異常があるために特殊な発音の癖を身につけていたりすることがあります。運動障害性構音障害では、舌などが速く正確に動かないため全体的に音がつながったように聞こえたり、リズムや速さが乱れたりします。1音なら正しく言えても、会話になるとリズムや速さが必要なので、不明瞭になりやすいのが特徴です。聴覚性構音障害では、聞き取りにくい音に“ひずみ”が生じやすく、「高い音だけ聞きにくい」など、聴覚障害の種類や程度によって“ひずみ”が生じる音もさまざまです。機能性構音障害では、いわゆる赤ちゃん言葉(例:せんせい→てんてい)のように、他の音に置き換わる場合や、正常とは異なる発音の癖を身につけてしまい独特な音の“ひずみ”を呈する場合があります。
検査・診断
まず医師や歯科医師が検査を行います。発音に関与する各器官の形態や動きを診察し、構音障害の原因疾患の有無を確認します。原因となる疾患や障害に対する治療が必要であれば行っていきます。次に、言語聴覚士が発音の検査を行います。会話の観察や、1音ずつの発音の検査から、どの音がどのように誤るかを聴き分け、構音障害の種類と程度および治療法を判断します。
治療
治療法には大別して外科的治療、発音補助装置の適用、構音訓練の3つがあります。外科的治療(手術)は、発音に関与する器官の形態を整え、発音しやすい状態にするために医師や歯科医師が行います。発音補助装置は、歯科医師が作製します。口腔がんの手術後の大きな欠損を塞ぐための特殊な形態の義歯のほか、舌と上顎を接触しやすくする装置、鼻漏れを防止する装置、手術後や外傷後に位置がずれた下顎を元の位置に誘導する装置など個々の患者の状態に合わせ工夫された装置が作製されます。また作製時には歯科医師と言語聴覚士が協同して、発音がより改善するよう形態を調整する場合もあります。なお、外科的治療後や発音補助装置装着後には次に述べる言語聴覚士による構音訓練が行われます。構音訓練は言語聴覚士が担当します。舌など発音に関与する器官の運動能力を高め、正しい発音が行えるよう練習します。外科手術後など、発音に関与する器官の形態変化や運動機能の低下のため正しく発音することができない場合は、本来の発音法とは異なる方法で代償的に発音する方法を指導する場合もあります。聴覚性構音障害では聴覚障害に対する治療を行った後に構音訓練を行います。
予防/治療後の注意
口腔がんの術後や脳卒中の後遺症などによる構音障害の場合は、元どおりの発音に戻すことは困難ですが、時間をかけて根気よく構音訓練を続けていくことで、徐々に改善へとつながるでしょう。パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症などの進行性疾患の場合は、症状の進行に合わせて構音訓練だけでなく、筆談や電子機器の使用などを含めたコミュニケーション手段の確保を検討します。幼児期には、舌や唇を動かすことを遊びとして楽しく行い、さらに年齢に合った硬さの食べ物を食べることが、発音のための細かい動作の獲得につながります。話せる言葉(語彙)が少ないなど、発音だけでなく言語全体の発達が心配な場合は、まず、その原因を診断することが大切になります。気になることがあれば、かかりつけの医師や、健診時に保健所などで相談するようにしてください。

こちらの記事の監修医師
昭和大学歯科病院
口腔リハビリテーション科教授 高橋 浩二 先生
1987年昭和大学大学院歯学研究科修了後、同大学歯学部第一口腔外科学教室へ入局。1990年には米国フロリダ州タンパ軍役軍人病院にて臨床研究員を務め、Dr.Michael Groherに師事する。帰国後は癌研究会附属病院(現・がん研究会有明病院)での勤務や、昭和大学歯学部口腔リハビリテーション科教授などを経て現職。東京医科大学客員教授と帝京大学医学部非常勤講師も兼任する。専門は摂食嚥下障害の診断と治療、構音障害の診断と治療、いびき症・睡眠時無呼吸症候群の歯科的治療、補綴的口腔機能改善装置・顎補綴物による各種口腔機能障害患者の治療、頭頸部癌治療後患者のQOLの早期改善など。歯学博士。日本口腔外科学会口腔外科専門医。
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