こちらの記事の監修医師
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院
菅原 英和 院長
きんいしゅくせいそくさくこうかしょう(えーえるえす)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
最終更新日:2022/04/25
概要
体を動かすための筋肉が痩せていく病気で、筋肉そのものではなく、運動神経系が選択的に障害を受ける進行性の神経疾患。脳からの運動神経への指令が伝わらなくなることにより体が動かなくなり、筋肉が痩せていく。感覚や内臓の機能は通常保たれる。国内の患者数は約1万人と報告されており、指定難病の一つ。多くの場合は遺伝しないが、一方で、全体の約5%は家族内で発症することがわかっており、家族性ALSと呼ばれる。最もかかりやすい年齢層は60~70歳台で、比較的男性に多く認められることが特徴。病気になってから死亡までの期間は約2~5年とされてきたが、医療の発達により長期療養も可能に。中には10数年の長期間にわたってゆっくりした経過をたどるケースもある。
原因
筋萎縮性側索硬化症は1869年、フランスの著名な神経病学者によって発見されたが、発症の原因やメカニズムはいまだに詳しくは解明されていない。神経の老化と関連があるといわれており、興奮性アミノ酸の代謝異常、フリーラジカルとの関係を指摘する説もあるが、決定的な根拠はない。筋肉が徐々に痩せていく原因は、筋肉を動かす運動神経のニューロンが広く変異することによって障害を受け、「体を動かせ」という脳の指令が伝わらなくなるため。全体の5%程度は家族性ALSと呼ばれる遺伝性のものと確認されている。家族性ALSのうち約20%はスーパーオキシド・ジスムターゼという酵素遺伝子の異常が関わっているとされ、そのほかにも原因遺伝子が徐々に解明されつつある。
症状
脳から脊髄、脊髄から末梢神経を通って、筋肉を動かす命令を出している運動神経に不具合が生じるため、体が動かなくなり、四肢の筋力が低下する。腕にその症状が現れると、ふたを開けたり手を挙げたりするのが困難になり、足に至ると歩行や立ち座りが難しくなる。話したり食べたりする機能にも運動神経が関わっているため、声が出しにくくなる構音障害、水や食べ物の飲み込みが困難になる嚥下障害なども現れる。よだれや痰が増え、呼吸が難しくなることも。また、患者の約20%が認知症を発症し、性格の変化などを引き起こすといわれる。一方で、眼球の筋肉は維持され、感覚神経や自律神経には支障がない。視力・聴力、内臓機能、排尿機能などにも異常は見られない。
検査・診断
呼吸筋のまひや、運動ニューロンに障害を来すさまざまな病気と区別し、それらを除外することで診断をつける。エックス線やMRI、CT等の画像診断、筋電図検査のほか、他の病気との区別に必要であれば脳脊髄液を採取して調べる髄液検査が用いられる。神経系の所見、臨床検査の所見、脳腫瘍や脊椎症、末梢神経障害など他の神経変性疾患の除外などを経て、総合的に判断していく。特に針筋電図などの電気生理学的検査の結果は、運動ニューロン障害の有無を判断する上で重要となる。初期における診断は難しく、経過観察をしながら数年かけて確定することもある。
治療
現在の医療では完治は期待できないが、病気の進行を遅らせる作用のあるリルゾールという内服薬や、エダラボンという点滴薬などを用いた治療法がある。また、筋肉や関節の痛みに対する対症療法を行い、症状を軽くしていくことがとても重要になる。具体的には毎日のリハビリテーションで残存機能を維持すること。必要に応じて補助具やロボットスーツを使ったリハビリも保険診療で認められている。また症状が出る前から呼吸筋を鍛えることによって、呼吸障害を遅らせることもできる。病気に対する不安などから起こる不眠には睡眠薬や安定剤を使用することも。呼吸困難が生じたら、鼻マスクや気管切開による呼吸の補助が可能。嚥下障害には食物の形態や食べ方の工夫がある。さらに進行した場合には、胃ろうで栄養補給する方法が一般的。症状が進行して会話や動作が困難になる前に、家族との新しいコミュニケーション手段を習得することも大切だ。
こちらの記事の監修医師
菅原 英和 院長
1992年東京慈恵会医科大学を卒業。消化器外科を志望していた同大学での研修医時代、「プラスの医療」といわれるリハビリテーション科の医学的部分に興味を持ちリハビリテーション科に転身。東京都リハビリテーション病院を皮切りに大学病院や都立病院のリハビリテーション科勤務を経て、2010年同院に着任、2016年院長に就任。医学博士、日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医。
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