こちらの記事の監修医師
社会福祉法人恩賜財団 済生会横浜市東部病院
西本 周平 先生
かんせん乾癬
最終更新日:2022/01/04
概要
免疫の異常によって皮膚や関節に特徴的な発疹などが起こる病気。感染症ではないため周囲の人にうつることはない。約半数の患者にかゆみがみられる。患者の約90%が皮膚のみに症状が現れる「尋常性乾癬」で、そのほか関節炎を併発する「関節症性乾癬」、発疹が全身に及ぶ「乾癬性紅皮症」、咽頭炎の後などに小型の発疹が多発する「滴状乾癬」、紅斑に膿疱を伴い、発熱などの強い炎症反応が起こる「汎発性膿疱性乾癬」がある。慢性で発疹が繰り返し出る病気だが、治療により症状が出ない状態を維持できるケースも。
原因
乾癬の患部では、皮膚の細胞の増殖が活発になり、角質と表皮が厚くなる。これには免疫機能の異常が関与していると考えられている。本来、免疫機能は体を守るシステムで、細菌やウイルスなどが体内に侵入するのを防ぐ役目を果たしているが、免疫機能に異常が起こると、異物ではなく自分自身に反応し、炎症を引き起こしてしまう。乾癬は、Th17という本来は細菌やカビに対する防御の役割の免疫反応が過剰に皮膚の細胞を刺激することによって生じていると考えられている。
症状
一般に乾癬といえば「尋常性乾癬」を指す。皮膚の一部に赤い発疹ができ、その表面に厚くなった角層が付着し剥がれ落ちるのが特徴である。かゆみの症状は約半数の患者にみられ、入浴時や、アルコール、強い香辛料を摂取したときなど、体が温まるとかゆみが強くなることがある。発疹はこすれるなどして慢性的に刺激を受けやすい頭皮や生え際、肘、膝、臀部、下腿などに現れやすい。また、関節症性乾癬の場合は腱などの筋肉と骨の付着する部位に炎症が起こり、関節炎よる痛みが現れる。
検査・診断
まずは問診、患部を診る視診、患部を触る触診によって皮膚の状態を調べる。また、乾癬と区別しにくい症状がある場合には、局所麻酔をして皮膚を切り取り顕微鏡で調べる皮膚生検を行う。関節に痛みがあればエックス線撮影やMRI、エコーなどの画像検査で異常の有無を確認する。抗体(生物学的製剤)療法を行う場合には胸部エックス線検査や肝炎ウイルス・結核などの感染症の検査も行う。この病気は喫煙やメタボリック症候群で悪化しやすいと考えられているため、血圧、コレステロールなどの脂質検査や糖尿病などの検査も同時に実施する。
治療
乾癬は慢性の病気であり、症状が悪化したり軽減したりする状態を繰り返すため、その時の症状に応じて外用療法や内服療法、光線療法、抗体療法から治療効果と副作用などを考慮して治療法が選択される。通常はステロイド外用薬やビタミンD3外用薬で炎症を抑える外用療法からスタート。症状の範囲が広い場合やかゆみを伴う場合、また関節炎が強い場合などには内服療法が選択される。これに紫外線を照射する光線療法を加えた3つが基本的な治療法だが、これらの治療で十分な効果が得られない場合、乾癬の原因物質をピンポイントで抑える治療として生物学的製剤を使う抗体療法が検討される。乾癬は皮膚症状などの身体的なつらさだけでなく、肌を見られることや夏場に薄着ができないことなど日常生活の不便さも伴う。 そのため、治療方針を決める上では乾癬の症状だけでなく、苦痛の程度や、どこまで治したいかという患者の希望、ライフスタイルなども考慮される。
予防/治療後の注意
規則正しい生活とバランスのとれた食生活が重要である。カロリーの取り過ぎや過度の肉体的・精神的ストレスは症状の悪化につながるので避けたほうが良い。喫煙は乾癬の症状を悪化させ、治療効果を下げるため、喫煙者は禁煙が望ましい。風邪や気管支炎などの感染症により悪化することもあるため、それらの予防も重要である。入浴時に硬いタオルでこすったり、締めつけの強い衣服の着用により皮膚がこすれたりすることも悪化につながるので注意が必要だ。日光浴が推奨されているが、逆に日光浴により症状が悪化する人もいるため適度な範囲にとどめることが望ましい。自分自身の日常生活において何が乾癬の症状を悪化させる原因になっているか認識しておくことも重要で、それまでと異なる症状が見られたら早めに医師に相談し、適切な診断、治療を受けるべきである。
こちらの記事の監修医師
西本 周平 先生
2006年慶應義塾大学卒業。専門分野は皮膚病一般で、特に専門としている領域は乾癬、小児皮膚科。日本皮膚科学会皮膚科専門医の資格を持つ。
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