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井上眼科成田クリニック 井上 順治 院長

こちらの記事の監修医師
井上眼科成田クリニック
井上 順治 院長

もうまくじょうみゃくへいそくしょう網膜静脈閉塞症

概要

目の奥にある網膜全体に広がる静脈の一部が詰まって血管がむくんだり(浮腫)、破れて出血したりする病気。網膜は目に入った光を電気信号に変えて脳へ送る機能を持っているが、血管が破れて網膜に血液が広がるとこの機能が障害されるため、視力や物の見え方に異常が出る。この病気の約8割は、眼球内で枝別れした静脈の一部が閉塞する「網膜静脈分枝閉塞症」で、網膜の一部分に出血が見られる。一方眼球から脳へとつながる網膜中心静脈で閉塞が起こった場合を「網膜中心静脈閉塞症」と呼び、網膜の全体に出血が見られる。

原因

網膜静脈閉塞症は、網膜に通っている静脈の血流が、血栓(凝固した血液)によってせき止められることで引き起こされる。血栓ができる原因の多くは動脈硬化だ。高血圧糖尿病高脂血症などによって、網膜に通っている動脈の壁が厚く硬くなると、動脈に接している静脈が圧迫されて血流が滞る。そのために血液が凝固して血栓ができ、静脈が閉塞する。静脈内の圧力が高まると、網膜へと血液や水分が漏れ出て、眼底出血を起こしたり、網膜がむくんだりする。動脈硬化の原因として最も多いのが高血圧であることから、中高年以降に発症することが多い。白血病多血症など血液の粘度が高まる病気や、血管自体の炎症、全身性エリテマトーデスといった疾患がある場合は、若年でも発症することがある。

症状

血管が詰まった場所と出血やむくみの程度によって症状は大きく異なる。眼底出血がある場合は出血が広がっている部分の視野が欠け、網膜浮腫があると視力が低下する。特に黄斑に出血やむくみ(黄斑浮腫)があると、極端に視力が低下する。いずれの症状も突然現れることが特徴だ。血管が閉塞した場所が視神経に近いほど症状は重く、末端に近く出血が狭い範囲に限られている場合は症状が出ないこともある。また、血管が閉塞して酸素の供給が滞ると、本来の血管の代わりにもろい新生血管が作られることがあり、この血管が硝子体内部に伸びると、硝子体出血や網膜剥離を起こすことがある。さらに新生血管が虹彩(こうさい)まで伸びると、血管新生緑内障(新生血管が眼球内の液体の排出口をふさぐことで眼球内の圧力(眼圧)が上昇し、視神経が障害される病気)といった合併症の原因となる。

検査・診断

眼底検査によって網膜に異常がないかどうかを調べる。すでに眼球内の出血が多い場合、眼底検査では網膜の状態が確認できないので、代わりに超音波(エコー)検査で網膜の血流の具合を調べる。自管閉塞しておこる血流の程度やその範囲をより具体的に調べるために、蛍光眼底造影検査を行うこともある。網膜の層構造を断面的に観察できる光干渉断層計(OCT-A)を使用し、黄斑のむくみ(黄斑浮腫)の程度を調べる。

治療

静脈閉塞を起こした直後の急性期には、血管強化薬や網膜循環改善薬などを用いて、閉塞した血管への血流を再開するための処置が行われる。視力が低下している場合は、網膜光凝固術、硝子体内注射、硝子体手術などによる治療が行われる。網膜光凝固術は、血流が途切れた血管をレーザーで凝固させることで異常な血管が新たに生まれるのを防ぐ治療法。硝子体内注射は、黄斑浮腫に対して行われる治療で、むくみや新生血管の発生を抑制する効果のある薬剤などを硝子体内に注射する。硝子体手術は、黄斑浮腫を改善する目的で行う場合と、硝子体出血などの合併症を治療するために行なう場合とがある。血流が改善した場合や、閉塞した部分によっては、自然に良くなることも多いので、眼科医師の管理の下で経過観察する。

予防/治療後の注意

高血圧や動脈硬化が主な原因のため、内科的な治療が必要になる場合も。また、食事内容のコントロールや定期的な運動などが予防につながる。治療による視力の回復は、黄斑への影響の程度によって差があり、黄斑浮腫が高度な場合や、症状が長引いて黄斑の視細胞が変性してしまった状態になると、視力が回復しないことが多い。発症後3か月から1年以上経過した慢性期には、硝子体出血、血管新生緑内障、網膜剥離といった合併症に注意が必要になる。また、時期をずらしてもう片方の眼に発症することもあるので、眼科検査を欠かさず受けることが望ましい。

井上眼科成田クリニック 井上 順治 院長

こちらの記事の監修医師

井上眼科成田クリニック

井上 順治 院長

2001年順天堂大学医学部卒業後、同大学医学部附属順天堂医院眼科入局。2003年順天堂大学医学部附属浦安病院眼科勤務。同病院で約10年間、網膜硝子体を専門に手術を行う。2005年からは2年間ハーバード大学スケペンス眼研究所に留学。2012年から西葛西・井上眼科病院勤務。副院長を経て2016年院長に就任。