こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生
まんせいぜんりつせんえん慢性前立腺炎
最終更新日:2022/01/05
概要
前立腺は膀胱の下にあるクルミくらいの大きさの臓器で、精嚢とともに精液をつくる役割や射精、尿失禁予防に関係しているとされる。慢性前立腺炎は、細菌感染によって激しい炎症を起こす急性前立腺炎と区別され、陰嚢と肛門の間にある会陰部に痛みや不快感があるなど下半身にさまざまな症状が現れる。30~40代に多い疾患で、熱はなく症状も比較的軽いが、特効薬はなく長期的な治療が必要になることも多い。細菌が感染して起きる細菌性のタイプと、細菌感染が確認できない非細菌性のタイプ、前立腺液や尿に白血球が見られず細菌感染もないが自覚症状はある非炎症性のタイプもある。また、明らかに炎症を起こしているにもかかわらず、自覚症状のない場合もある。
原因
大腸菌や腸球菌などの細菌に感染して起きる急性細菌性前立腺炎からの移行によって生じることもあるが、原因がよくわからないケースも多い。非細菌性の場合はクラミジアやマイコプラズマ感染が原因の場合もある。長時間のデスクワークや自動車運転など、長時間座ったままの姿勢を取り続ける人に多く、飲酒、ストレス、疲労、冷えなどによって体の抵抗力が低下することも、慢性前立腺炎を発症する要因となる。
症状
会陰部や下腹部、足の付け根などの痛みや違和感、不快感のほか、頻尿、残尿感、排尿の後に尿が漏れる、尿道の違和感、血尿、射精痛など、さまざまな症状が現れる。いずれも症状は比較的穏やかで、発熱はない。
検査・診断
肛門から指を挿入して、肛門直上で前立腺を触診する直腸診を行い、腫れや圧痛の有無などを確認する。また前立腺をマッサージし、尿道から出てくる前立腺圧出液を採取し、白血球の有無や数、細菌の有無などを調べる。必要に応じて尿検査や血液検査を行うこともある。
治療
治療は薬物療法と生活指導が中心となる。薬物療法では、抗菌剤や抗炎症作用のある薬を内服する。慢性炎症を生じた前立腺には抗菌薬が届きにくいため、急性前立腺炎よりも長期間の服用が必要となり、時には、数ヵ月間継続することが必要な場合もある。細菌性の場合やクラミジアなどによる前立腺炎の場合は、抗菌剤により症状が改善することが多い。症状によっては、漢方薬や植物製剤(セルニルトン)、筋肉弛緩剤、精神安定剤などが効果的なこともある。症状が改善しない場合は別の薬に変えたり、いくつかの薬を組み合わせたりするなど、粘り強い治療が必要になるケースが多い。前立腺マッサージを行うこともある。
予防/治療後の注意
陰茎を清潔に保つこと。飲酒や過労、緊張、冷え、長時間の座位、刺激物の多量摂取、慢性的な骨盤底への物理的刺激(トラック、タクシーのドライバーや自転車通勤者)などはリスク因子となるため、日常生活で意識して改善することが大切。長時間のデスクワークや自動車の運転の際は、合間に席を立ったり、車から降りたりして少し体を動かすことを心がけ、自転車やバイクに長時間乗ることも避ける。飲酒は控え、疲れやストレスをためないようにすることも重要だ。入浴で体を温めると症状が改善することも。また、水分を摂取することは治療にも効果的という。
こちらの記事の監修医師
泌尿器科科長/講師 宍戸 俊英 先生
1994年東京医科大学医学部卒業。同大学病院、癌研究会附属病院(現・がん研究会有明病院)勤務、杏林大学医学部付属病院泌尿器科講師などを経て2014年より現職。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。
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