
こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
まんせいふくびくうえん(ちくのうしょう)慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
最終更新日:2022/01/13
概要
鼻腔(鼻の中)の周囲、骨の中に左右4ヵ所ずつある空洞を副鼻腔という。この副鼻腔が風邪などのきっかけで炎症を起こし、それが長引いて慢性的に(一般的には3ヵ月以上)続くものを慢性副鼻腔炎といい、副鼻腔にずっと膿がたまっている状態となる。そのため「蓄膿症」とも呼ばれてきたが、粘膜が腫れるだけで、膿はない場合もある。また、鼻の中に「鼻茸」と呼ばれるポリープができることもある。風邪などによって副鼻腔炎になっても、適切な治療をすれば治ることが多く、1ヵ月未満で治るものは「急性副鼻腔炎」という。長引いて慢性副鼻腔炎にならないため、早期に受診することが必要とされる。
原因
風邪やインフルエンザなどによりウイルスや細菌が副鼻腔に入り込むことで起こることが多いが、副鼻腔の一つが上側の歯の歯根近くにあるため、虫歯や歯周病が原因で起こることもある。また、近年は原因不明で治りにくい慢性副鼻腔炎「好酸球性副鼻腔炎」が増えており、成人で喘息などアレルギー体質の人に起こりやすいとされている。多くのケースで、副鼻腔と鼻腔をつないで粘液などを流している「自然口」が閉じてしまって膿が排出できず、さらに炎症が悪化して膿がたまるという悪循環に陥ることが、炎症の慢性化につながっている。
症状
鼻が詰まる、ドロドロとした粘りのある黄色い鼻水が出る、喉にたんが絡む、鼻から喉へ大量の鼻水が垂れる後鼻漏(こうびろう)、においがわかりにくくなる嗅覚障害などの症状が出る。頭痛や目の奥、おでこ、頬の辺りに痛みを感じることがあり、痛みが出る場所は炎症を起こした副鼻腔の位置によって異なる。また、鼻づまりによって集中力の低下や睡眠障害を招くことも。鼻とつながっている中耳にも影響し、急性中耳炎などを併発することもある。ごくまれなケースとしては、目や脳に近い副鼻腔に炎症が起きた場合、ものが二重に見えたり、視力が低下したりといった視覚異常や、髄膜炎などにつながることもある。
検査・診断
鼻の詰まりなど特徴的な症状が見られるかどうかを診察で確認する。症状のみからの診断が困難な場合は、エックス線検査で副鼻腔内に液体がたまっているかを確認したり、CT検査で炎症の有無や範囲、その程度を調べたりする。また、鼻の通りやすさを評価する鼻腔通気度検査のほか、内視鏡検査で鼻の粘膜を直接確認することもある。
治療
鼻水の吸引や洗浄、副鼻腔への薬剤の噴霧を行うほか、抗菌薬(マクロライド系抗生剤)を、常用量より少ない量で長期間(目安3ヵ月)服用する薬物療法が基本。必要に応じてアレルギーを抑える薬なども投薬する。それでも改善が見られない場合は、鼻の穴から内視鏡を入れて、副鼻腔内のポリープや粘膜を切除する外科療法を行う。手術後も3ヵ月程度、投薬や鼻の洗浄を続ける。ほとんどの感染性の慢性副鼻腔炎は、薬物療法と外科療法で完治する。「好酸球性副鼻腔炎」の場合はステロイド内服薬などで治療し、必要があれば外科治療も施すが、再発することが多く、完治までの治療法はまだ確立されていない。
予防/治療後の注意
予防の基本は、風邪をひかないようにすること。風邪をひいたら十分な睡眠と休養を取り、長引かせないようにすることが重要。特に鼻風邪の場合は鼻の中に鼻水をためないようにし、市販の鼻洗浄器を使用するなど、薄めの食塩水で鼻洗浄をするのもよい。市販の点鼻薬は、細菌感染などの原因を除去するものではなく、鼻づまりを解消するための血管収縮薬であることが多い。このため、即効性はあるが、長期間使い続けていると、症状を悪化させる危険性が指摘されているので、注意が必要だ。

こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
2006年杏林大学卒業。同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科や佼成病院を経て、2020年に開業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。専門分野は耳鼻咽喉科一般。
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