
こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院 婦人科
田中 京子 先生
ぼうこうえん膀胱炎
最終更新日:2022/01/04
概要
やわらかく伸縮性のある粘膜が伸び縮みすることによって、尿をためる役割を果たしている「膀胱」が炎症を起こす病気。ほとんどの場合、大腸や直腸などに潜んでいる腸内細菌などが尿道から侵入して、膀胱で増殖することによって起こるが、薬剤の影響(一部の抗アレルギー薬や抗がん剤によって発症する)、放射線治療の副作用など、膀胱炎の原因は多岐にわたる。疲れがたまったりして免疫力が落ちると、膀胱の中の細菌の量が増えやすくなり、膀胱炎になりやすくなる。また女性は男性よりも尿道の出口から膀胱までの距離が短く、細菌が膀胱にたどり着きやすいため、膀胱炎を起こしやすい。
原因
肛門のまわりやデリケートゾーンにいる大腸菌が尿道から膀胱に侵入することによって起こることが多い。疲れやストレスがたまっているときなど、体の抵抗力が落ちているときになりやすい。膀胱は尿を多くためるほど機能が低下するため、トイレに行くのを長時間がまんすると発症のリスクが高まる。さらに女性の場合は月経のときに生理用品を長く交換せずにいることも、発症のきっかけとなるので注意。また、女性の尿道と肛門・性器が近く、その距離が男性の4分の1ほどしかなく、排便のときにも尿道口に細菌が入りやすいため、男性よりも膀胱炎になりやすい。閉経後の女性は腟にいる常在菌が減っているため、膀胱炎を繰り返しやすい傾向にある。さらに尿道から侵入した細菌が腎臓にまでたどり着いて炎症を起こすと、下腹部や腰に痛みが生じて、腎不全にもつながる腎盂腎炎になることも。
症状
主な症状は、10分前後といった短い間隔で頻繁に起こる尿意、排尿の終わり頃の痛み、尿意切迫感(急に耐えがたいほどの強い尿意を感じること)、はっきりと目でわかるほどの血尿、残尿感などが挙げられる。白血球や炎症を起こして剥がれた膀胱の粘膜が混ざることで尿が白濁したり、においがきつくなったりすることもある。1回あたりの尿が少なくなることも特徴。また、膀胱炎では発熱はほとんどの場合でみられないが、腰痛や発熱といった症状が現れて、腎臓の腎孟にまで炎症が広がってしまうと、下腹部の不快感や痛みなどが伴う腎盂腎炎になっている場合もある。
検査・診断
膀胱炎の特徴である排尿のときの痛みや頻尿・残尿などが現れているかなどを患者からヒアリングした後、遠心分離した尿の中に正常よりも白血球が多く含まれていないかを、顕微鏡で調べる尿検査が行われることが一般的だ。また、大腸菌やブドウ状球菌、連鎖球菌など、膀胱炎の原因となっている菌を特定する尿細菌培養検査、どのような抗生物質が効くかを調べる薬剤感受性検査を併せて行うことも多い。また、血尿がひどい場合や、短期間に膀胱炎のような症状を繰り返す場合は、結石、腫瘍、膀胱機能障害などが潜んでいる可能性があるため、必要に応じて超音波検査なども実施する。
治療
炎症を起こす原因となっている大腸菌などを殺すための抗生剤の飲み薬を使うことが一般的。ほとんどが3日以内、遅くとも1週間以内には症状が治まってくる。軽症であれば、自然治癒することも多い。効果が不十分であるときは抗生剤の種類を変えたり漢方を用いたりすることで対応する。また、治療にはニューキノロン系の薬が頻繁に使用されるが、その多くは妊婦への投与が禁忌とされている。膀胱炎は妊娠可能な年齢の女性が発症するケースが多いため、必ず妊娠の可能性がないかどうかを医師に伝えること。また、治療中は温かい飲み物などで水分を十分に摂取することを心がけて、普段よりもたくさん尿を出すことによって、膀胱で増殖してしまった菌を尿ごと体外へ排出するようにする。治療が遅れると、腎盂腎炎になって高熱が出ることもあるため注意が必要だ。
予防/治療後の注意
膀胱炎の予防には、過度のアルコールは避けて、水分を十分に摂ることが重要だ。膀胱に細菌が繁殖しやすくなるので、尿はなるべく我慢しないこと。排尿・排便の後は、前から後ろに拭くことで、大腸菌などを尿道に侵入させないように気を配ることも重要である。また、ダイエット、疲れ、ほかの病気などで抵抗力が落ちていると膀胱炎になりやすいため注意が必要。また、月経の前後には雑菌が繁殖しやすいので、清潔な状態を保つことも大切だ。便秘がちな人は、便通の改善が膀胱炎の予防につながる。

こちらの記事の監修医師
田中 京子 先生
慶応義塾大学卒業後、同大学病院、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て、東邦大学医療センター大橋病院の准教授へ就任。日本産婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格を持つ。
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