
こちらの記事の監修医師
公益財団法人日産厚生会 玉川病院
脳神経外科副部長 御任 明利 先生
すいとうしょう水頭症
最終更新日:2021/12/27
概要
脳には脳室と呼ばれる空洞があり、この中にある脈絡叢(みゃくらくそう)という部分から脳と脊髄の表面を循環している脳脊髄液(髄液)という無色透明な液体が作り出されている。水頭症は、この脳脊髄液の循環障害により、脳室が広がった状態をいう。脳室に脳脊髄液がたまると頭蓋骨の内面に大脳を押しつけるような形になり、さまざまな脳の障害を引き起こす。また2つのタイプがあり、脳室内において髄液が流れる経路が狭くなっていたり、閉塞していたりして起こるものを「非交通性水頭症」、脳室内には閉塞部分がなく、脳脊髄液を作り出すことや吸収の問題によって起こるものを「交通性水頭症」という。前者は小児、後者は成人や高齢者に多い傾向がある。
原因
非交通性水頭症に関しては、脳脊髄液が流れる循環経路をふさいでしまう原因に、頭蓋内出血、髄膜炎、脳室炎、脳腫瘍、中枢神経の先天的な異常などがある。一方、交通性水頭症は、頭蓋骨内部の圧力(脳圧)に異常が見られないものを「正常圧水頭症」といい、原因がはっきりしているものを「続発性正常圧水頭症」、原因不明なものを「特発性正常圧水頭症」と呼び分類しているが、続発性正常圧水頭症は脳腫瘍、くも膜下出血、外傷などが原因となる。特に、くも膜下出血については、出血が見られてから1~2ヵ月後に約30%の確率で水頭症を起こすというデータもあり、注意深く経過観察をすることが重要といわれている。
症状
発症する月齢・年齢と水頭症のタイプによって症状は異なる。まず小児の場合は、非交通性水頭症が多いが、新生児や乳児では頭囲の拡大、嘔吐、うとうとすることが多い、些細な刺激で泣いたり怒ったりする、前頭部の突出といった症状が見られる。幼児や学童では、頭痛や嘔吐、視神経乳頭のむくみ、眼球を外側に動かす神経がまひする、筋肉や腱の意図しない周期的な収縮・弛緩などが現れる。成人の場合、まず非交通性水頭症では脳圧が高くなるため、頭痛や嘔吐、意識障害などが見られ、急激に悪化することがある。交通性水頭症は、脳脊髄液がたまっても脳圧が正常であることが多く、歩行障害、認知症、尿失禁といった症状が特徴的。
検査・診断
新生児や乳児においては、頭蓋骨が完全にくっついておらず、脳脊髄液がたまるにつれて頭囲も大きくなる。したがって、頭囲を測ることが重要な指針となる。2~3歳になり頭蓋骨の成長が終了すると頭囲の変化は見られなくなるため、以降の時期では診察で頭痛、嘔吐、意識障害、目の異常などを確認した上で、CT検査やMRI検査を行い、脳の状態を詳しく調べる。また、高齢者に多い特発性正常圧水頭症の場合は、歩行障害や尿失禁の有無、認知機能をチェックするほか、CT検査、MRI検査と併せて髄液タップテストという検査を行う。これは、背骨に針を刺して脳脊髄液を少量抜き取る検査で、前後で歩行や排尿、認知機能に変化が見られるかどうかを調べる。これにより症状が改善された場合は、特発性正常圧水頭症であると診断される。
治療
症状を引き起こしている原因によって治療法は異なるが、脳脊髄液の循環経路や産出・吸収に異常を来しているケースが多いため、主にたまり過ぎた脳脊髄液を調節する治療が行われる。具体的な方法としては、いわゆるバイパス手術となる。脳室にカテーテルを挿入し、脳脊髄液を腹腔に流して脳圧をコントロールするシャント手術や、背骨の中の脊髄液を腹腔に流す腰椎-腹腔シャント手術が行われることもある。また、非交通性水頭症に対しては内視鏡で脳室に穴を開けてくも膜下腔とつなぎ、脳脊髄液が流れ出る道を作る内視鏡的第三脳室底開窓術がある。内視鏡的第三脳室底開窓術はシャントを入れなくて済むため、シャント手術で心配される合併症のリスクがないというメリットがある。こうした手術は全身麻酔をした状態で行われ、1時間程度で終了する。
予防/治療後の注意
シャント手術は、術後にシャントが異物で詰まったり、脳脊髄液の量や流れる方向、圧力を調節するバルブが破損したりといったトラブルが起こる可能性がある。また、シャント機能が効き過ぎて脳脊髄液が過剰に排出されてしまい、脳室が縮小してしまうことも。そのため、頭痛、吐き気、嘔吐といった、脳圧の変化によって生じる症状が現れた場合には注意が必要で、症状や画像を評価して適切な圧調整を行う。シャントが細菌に感染することもあり、発熱のほか、シャントを入れた経路に沿って皮膚が赤くなったりした場合は早急に医師に相談すること。シャントの感染症は髄膜炎、脳室炎、腹膜炎を起こすことがあり、場合によってはシャントを取り替えなければならないこともある。

こちらの記事の監修医師
脳神経外科副部長 御任 明利 先生
1984年東邦大学医学部卒業。ジョンズ・ホプキンズ大学に留学し、帰国後は東邦大学医学部脳神経外科に。2016年より現職。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医。専門分野は水頭症、認知症。
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