長引く歯痛や頭痛、顔面痛
顔の奥に膿がたまる上顎洞炎の可能性も
武田耳鼻咽喉科
(富士見市/みずほ台駅)
最終更新日:2022/09/30
- 保険診療
例えば歯の根の治療(根管治療)を何度繰り返しても改善につながらない、長く歯痛、頬部痛、頭痛に悩まされている、鼻を中心に顔が痛い、そんな症状の人はいないだろうか。そんな時はぜひ上顎洞炎も気にしてみてほしい。数多くの患者のCT画像を解析し、上顎洞炎について研究を重ね精通している「武田耳鼻咽喉科」の武田桃子院長は、歯性上顎洞炎と診断されるまでに時間がかかってしまい苦しむ患者を数多く診てきたという。今はCTを撮影すれば比較的早期に診断が可能で、内視鏡手術で治療も短期間で行える上顎洞炎。それだけに、迷わずに気軽に相談・セカンドオピニオンを求めてほしいと武田院長は訴える。そんな武田院長に受診のタイミングや治療方法などについて詳しく聞いた。
(取材日2022年8月31日)
目次
CTの撮影で診断がつけられる上顎洞炎。早めに耳鼻咽喉科で相談を
- Q上顎洞炎とはどのような病気なのですか?
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A
上顎洞は顔の骨にある空洞(副鼻腔)の一つでほっぺたの空洞です。上顎洞炎とは、何らかの原因でその上顎洞周辺に膿がたまっている状態のことをいいます。副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、あるいは蓄膿症といった病気は多くの方がご存じだと思います。膿がたまっていても顔の骨に囲まれた場所ですから、顔がはれたりむくんだりすることはありません。症状は歯の痛み、頭痛、頬の痛み、鼻水、鼻詰まり、痰の絡む咳などですが、CTでお顔を撮影すると膿がたまっている部分が白くなりますので、すぐに診断がつけられます。長く放置したりこじらせたりすると膿が広がり、目のほうへいってしまうと、ごくまれなケースですが失明に至る可能性もあります。
- Q何が原因で起こる病気なのでしょうか?
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A
歯周病や虫歯などで歯の根っこの治療を経験された方は多くいらっしゃるでしょう。その根っこ部分の治療が終了した場合でも後に歯根部直上の上顎洞に炎症が広がるケースも多く、炎症が強いと骨が溶けて膿がどんどん上顎洞内に広がっていくことになってしまいます。またインプラントに伴う外科的処置に関連して発症するケースもありました。患者さんによっては強い痛みが出て、点滴で対応せざるを得ない方もおられます。歯の痛みとして感じる方が多いですが、歯科医院を受診するも症状がなかなか改善せず、歯科医院から耳鼻咽喉科を紹介され、CT撮影をして上顎洞炎と判明するというケースもあります。
- Qどのような時に耳鼻咽喉科を受診すれば良いでしょうか?
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A
歯痛、頭痛、頬の痛み、鼻水、鼻詰まり、痰の絡む咳などが続く場合。また、歯科で根管治療を行っても痛みが治まらず、抜歯を勧められたときは、抜歯前に一度耳鼻咽喉科でCTを撮影されてもいいと思います。またインプラントなど何らかの人工物を歯に埋め込んだ後に、顔の痛みや鼻水などの症状が出たときも念のために耳鼻咽喉科でのCT撮影をお勧めしたいですね。治療期間に関わらず、歯の痛みが出たら歯科と同時に耳鼻咽喉科を受診されてもいいと思います。患者さんの鼻の構造やポリープが症状を悪化させることもありますし、何もなければ安心していただけると思います。気軽にセカンドオピニオンとして受診してください。
- Q具体的にどのように治療を行うのでしょうか?
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A
まずCTを撮影し、炎症の有無、範囲、鼻の構造やポリープの有無などを調べます。上顎洞炎と診断されたら症状に応じてまず服薬での治療を行います。緊急を要するような重症の場合は、すぐに手術を行うこともあります。服薬での治療で症状が改善につながらない場合は、上顎洞周辺にたまった膿は自然に排出されることはありませんから、抜歯をして膿が流れ出るのを促すか、内視鏡による鼻の手術で膿を吸い出すか、いずれかの外科的な方法で膿を取り除いていきます。いずれの方法を取るかは患者さんのご希望も伺って決めていきます。
- Q外科的治療方法の違いを教えてください。
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A
抜歯をして膿を出す場合、すべての膿が排出できないケースもあります。その場合は追加で内視鏡で鼻の手術を行います。手術では膿を排出するためのルートも確保しますので基本的に1回の手術で済みます。手術は日帰り、所要時間は1時間程度、全身麻酔で行います。内視鏡での手術ですからお顔に傷をつける心配はありません。症状に応じて手術後に服薬治療も行う場合があります。再度、膿がたまっても、手術により膿の出口が大きく確保されているため内服治療と鼻内の吸引処理だけで済むことがほとんどです。