ストレスなどで多様化するめまい
原因を見極め機能回復をめざす
たけすえ耳鼻科クリニック
(那珂川市/博多南駅)
最終更新日:2024/12/12
- 保険診療
良性発作性頭位めまい症、メニエール病、突発性難聴など、いわゆる「末梢性めまい」に分類される良性のめまいの原因は、現在、非常に多様化している。パソコン作業による肩凝りや眼精疲労、職場での人間関係といった心理的ストレスも原因の一部だと考えられている。「たけすえ耳鼻科クリニック」では先進の検査機器を使用し、患者一人ひとりの原因をしっかりと見極めながら、めまいに対する不安のケアも実施。「今日は何ができたのか」という毎日の記録をもとに、「めまいが起きなかった」という成功体験を積み上げることで、体の機能とともに、患者のめまいに対する認識も再構築していくことが大切だと語る武末淳院長に、めまいの検査や治療法などについて詳しく話を聞いた。
(取材日2024年10月8日)
目次
ストレスや肩凝りからも起きるめまい。リハビリテーションや運動で平衡機能構築を図り、再発への不安もケア
- Qめまいでの診察の流れを教えてください。
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A
めまいがある場合、まず4つの検査を行います。1つ目は聴力検査で聴力の低下などがないかを確認します。2つ目は重心動揺検査。体に揺れが生じているかを調べます。3つ目は赤外線カメラを使用した眼振の検査。これは耳石と呼ばれるカルシウムの塊が三半規管の平衡感覚を刺激することで症状が出ます。この3つはめまいの診断には欠かせない要素です。4つ目は自律神経の測定です。これは当院が独自に導入しているもので、寝不足や過労、ストレスなどといっためまいの要因と考えられる項目をピックアップし、症状の評価の一助にしています。これらの検査を行うことで、患者さんお一人お一人のめまいの要因は何なのかを絞りこんでいくのです。
- Qめまいの原因は何なのでしょうか?
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A
最近特に感じるのは、社会的背景が多分に影響しているということ。そのため、原因はさまざまですが、耳鼻科領域では、三半規管の機能の乱れによるめまいが最も多く見られます。平衡感覚は、三半規管、視覚による空間認識、深部知覚といって体の位置情報の感覚といった情報をかけ合わせて成り立ちます。現在はパソコン操作による肩凝りや目の酷使、仕事のストレスによる自律神経の乱れなど、多様な生活スタイルによる要因がめまいの原因として考えられています。当院では、保険適用となったビデオヘッドインパルス検査(vHIT)という平衡感覚の神経を測定できる検査を新たに導入。より詳細にめまいの原因を調べることが可能になりました。
- Qいろんな要素や働きが結びついているのですね。
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A
そのため、原因を調べるためのヒアリングや検査に時間をかけます。これは当院の大きな特徴。一つの箇所が壊れても、ほかの要素で補う“代償機能”が働くことで、めまいの制御・治療につなげられると考えています。良性発作性頭位めまい症やメニエール病、突発性難聴など内耳からくるめまいは「末梢性めまい」と呼ばれ、治療が可能なめまいといわれています。治療してもなかなか改善が見られない場合は、この代償機能が完成しない、もしくはその機能を壊す力がより強いのだと考えられます。その要因として、近年ではメンタル的な要素がフォーカスされるようになりました。めまいに対するPTSDがあるなど、不安要素が強い方もこれにあたります。
- Qそういった理由から、リハビリも行っているのですね。
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A
代償機能を最大限に発揮するためには、体を動かすことが重要です。眼球や頭を動かし、歩行訓練をすることで、平衡機能をつくり直していくのです。症状を訴えられる患者さんには真面目な方が多く、リハビリも熱心。患者さんには日々「今日は自分でトイレに行けた」「買い物に行けた」などメモを書いてもらっていますが、やりすぎのことも。リハビリ後に休憩が必要な場合は要注意。大事なのは「まためまいが出るのではないか」という不安を抱えた患者さんの心のケアですから、「今、めまいがなく歩けている」とポジティブに認識することが重要なのです。急性期の症状には薬も用いますが、当院ではあくまで補助的な役割として使用しています。
- Q検査結果のデータも、行動の認識に活用するのですね。
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A
毎回の検査は、ご自身の状態がどのように変化しているのかを知る機会だと考えています。赤外線カメラには録画機能がありますので、重心動揺検査や聴力検査、自律神経の測定もデータを保存し、写しは毎回患者さんにお渡ししています。グラフを比較しながら「正常範囲に近づいてきましたね」、「前回より症状が減っていますね」など確認することで、治療へのモチベーションにしてもらいたいのです。めまいは時系列での判断が重要で、初診と2回目受診の際に同じ症状とは限りません。初診と2回目受診、別々のクリニックに行った場合、診断名が変わる可能性も。背景が複数あることも少なくないため、長期的に診て判断することが大事なのです。