
こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
かいんとうがん下咽頭がん
最終更新日:2022/01/04
概要
下咽頭はいわゆる喉仏の奥にあり、口の中と食道をつないでいる部分で、ここにできるのが下咽頭がんである。下咽頭は梨状陥凹、輪状後部、咽頭後壁という3つの部分からなり、下咽頭がんは、がんのできる部位により「梨状陥凹がん」、「輪状後部がん」、「咽頭後壁がん」に分けられる。最も多いのが梨状陥凹がんで、全体の60~70%を占める。梨状陥凹は、食道と気道の分かれ道で飲食物を飲み込むと同時に気道にふたをして誤飲を防いでいる喉頭蓋のそばにある。梨状陥凹はくぼんでいて食べ物や飲み物がたまりやすく、下咽頭の中で最も飲酒や喫煙によるダメージを受けやすい。一方、輪状後部がんは全体の20%を占め、鉄欠乏性貧血が関わっているといわれている。いずれも長年の慢性刺激が関係していることから、50歳以降で多く発症し、60~70歳頃にピークがある。
原因
梨状陥凹がん、咽頭後壁がんには長年の飲酒、喫煙による慢性刺激が深く関与していると考えられている。飲酒、喫煙の習慣が男性に多いことから、男性に多く見られる。一方、輪状後部がんは慢性の鉄欠乏性貧血が関与しているといわれている。鉄欠乏性貧血が女性に多いことから、女性に多く発症する。また、下咽頭がんの患者の25~30%に食道がんが見つかっている。これは食道がんの発生も、飲酒や喫煙と深い関係があることが原因だと考えられている。近年はパピローマウィルスによる発がんも問題となっている。
症状
初期症状はほとんどないが、人によっては食べ物が喉に詰まるような感じを覚えることもある。症状が進むと、食べ物を飲み込んだときに喉にひりつくような痛みを伴う。さらに悪化すると、食べ物を飲み込むたびに耳の辺りにまで痛みを感じたり、声がかすれたり、呼吸に障害が出たりする。また、頸部に腫れやしこりのようなものがみられる場合、頸部リンパ節にがんが転移している可能性が高い。
検査・診断
触診で頸部の腫れやしこりの状態をチェックし、喉頭鏡検査や内視鏡検査で咽頭の状態や声帯の動きを確認する。また、食道がんや胃がんを併発していないかどうかも調べる。下咽頭がんが疑われる場合には、組織の一部を採取し、がん細胞があるかどうかを顕微鏡で確認する生検を実施。がんの大きさや広がり、リンパ節やほかの臓器への転移の有無などを調べるために、CT検査、MRI検査、超音波検査、PET検査、腫瘍マーカー検査などを行う。これまで咽頭がんは早期に発見することは難しいとされてきたが、内視鏡技術の進歩により、非常に小さながんの発見も可能になってきている。
治療
下咽頭は食べ物の飲み込みに大きく関わるだけでなく、発声や呼吸にも関わる位置にあるため、治療においては何らかの機能の犠牲を伴うことが避けられないというのが現状である。がんが大きくなればなるほど治療に伴う機能低下も大きくなる。その点も考慮しながら、放射線治療、手術、および抗がん剤を投与する化学療法を組み合わせた治療が行われる。手術は、早期のものは経口的に内視鏡下に切除可能であるが、咽頭を保存してがんに侵された部分だけを切除するものや、進行した状態では全咽頭を摘出する。咽頭を摘出した場合、そのままでは発声機能が失われてしまうため再建手術も必要となる。
予防/治療後の注意
喫煙や飲酒、鉄欠乏性貧血などが主な原因として考えられていることから、食生活を改善したり、飲酒や喫煙を控えたりすることが予防につながる。治療後の療養生活では規則正しい生活、バランスのとれた食事や適度な運動を心がけることが大切だ。また治療に伴い、口腔内の細菌が原因で感染症になることがある。その予防のためには、口の中を常に清潔で潤った環境に保つことが重要である。安静が必要な期間を過ぎてからは、機能回復のための適切なリハビリテーションが必要となる。また、頭部や頸部に二次がんが発生するリスクが高いことから、経過観察のため、定期的に入念な診察を受けることが必要である。

こちらの記事の監修医師
ふくろうの森耳鼻咽喉科
院長 中村 健大 先生
2006年杏林大学卒業。同大学医学部付属病院耳鼻咽喉科や佼成病院を経て、2020年に開業。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医。専門分野は耳鼻咽喉科一般。
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