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こちらの記事の監修医師
神奈川県立こども医療センター
形成外科部長 小林 眞司 先生

あぺーるしょうこうぐん アペール症候群

概要

生まれたばかりの赤ちゃんは2歳になるまでに脳の大きさが4倍になるため、頭蓋骨が7つのピースに分かれて急激な成長に対応しています。それぞれのピースのつなぎ目を頭蓋縫合といいますが、この頭蓋縫合が早期にくっついてしまう病気を頭蓋骨縫合早期癒合症と呼んでいます。「アペール症候群」は顔面骨縫合早期癒合も合併するために症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症の一つです。頭蓋・顔面の縫合線が早期にくっついてしまうことで、頭蓋骨や顔面骨の成長に支障を来し脳の発達が阻害されたり、眼球が突出したりと、頭蓋や顔面にさまざまな異常を引き起こします。そのほか、「クルーゾン症候群」や「ファイファー症候群」などがあり、いずれも頭蓋骨や顔面の異常などを引き起こします。中でも、アペール症候群の場合は、手足の隣り合う指がくっついてしまう骨性合指(趾)症を伴うのが特徴です。また、患者の約50%に精神発達や運動発達の遅れがあることがわかっています。

原因

他の頭蓋骨縫合早期癒合症と同様に、遺伝子の突然変異によってアペール症候群が引き起こされます。中でも、fibroblast growth factor receptor2 (FGFR2)という遺伝子の5つの変異が関連していることがわかっています。なお、発生頻度が非常にまれな病気であり、イギリスでは約16万出生に1人、神奈川県では15万出生に1人といわれています。

症状

頭蓋骨や顔面骨の縫合線が早期にくっついてしまうことで、どんどん大きくなる脳の成長に対応できず、頭蓋や顔面などが正常に発育できなくなります。頭蓋では、頭蓋内の圧力が高くなる頭蓋内圧亢進症、脳に過剰な脳脊髄液がたまる水頭症などの異常が起こります。クルーゾン症候群でみられる小脳が陥入するキアリ奇形は起こりにくいと言われています。顔面では、中顔面を構成する骨の成長が妨げられるため、眼球が突出したり、受け口になったり、気道がふさがれ呼吸に支障を来すなどの異常が起こります。また、外耳道狭窄・閉鎖、伝音性難聴がみられるケースも見られます。アペール症候群では、手足の指がくっついてしまう骨性合指(趾)症を伴います。そのほか、肩関節・肘関節形成不全や心・血管奇形、口蓋裂水腎症、停留睾丸、発汗過多、消化器系の奇形など、全身に症状が表れることも珍しくありません。なお、患者の約50%に精神発達や運動発達の遅れがみられます。

検査・診断

頭蓋骨や顔面の特異的な変形がみられるため、ほとんどの場合は診察だけで症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症と診断されます。さらに、骨性合指(趾)症を伴っている場合は、アペール症候群が疑われます。新生児期には睡眠時無呼吸の有無の他に、先天的な心・血管奇形がないかを優先的に調べます。また、頭蓋や顔面、頚椎の異常など詳細を診断するために、MRI検査やCT検査を行います。必要に応じて、消化管や腎・泌尿器、関節、視力、聴力、口腔内など、全身のあらゆる検査を行い、確定診断につなげます。

治療

先天的な心・血管、消化器の奇形がある場合は、重症度によって最優先で手術を行うこともあります。さらに、脳の急速な成長に追いつくために、頭蓋骨を広げる形成手術が必要です。重度な睡眠時無呼吸がある場合は、経鼻チューブ、気管内挿管、気管切開術を行うこともあります。また、合指症手術や口蓋形成術を1歳前後に行います。必要に応じて、頭蓋骨顔面領域の骨延長術や中耳炎に対する術、矯正治療など、さまざまな治療を進めていきます。長い期間にわたって対処療法を進めていくだけでなく、成人後に顔面の最終修正術などを行うことも珍しくありません。

予防/治療後の注意

アペール症候群の場合、頭蓋骨や顔面の異常だけでなく、骨性合指(趾)症をはじめとするさまざまな合併症を全身に伴います。そのため、年齢や症状、成長などに応じて、対処療法かつ経年的治療を行っていくことになります。長い期間にわたって向き合っていく必要がある病気ですので、定期的に専門の医療機関を受診し、適切な治療や経過観察を受けていくことが重要となります。

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こちらの記事の監修医師

神奈川県立こども医療センター

形成外科部長 小林 眞司 先生

山形大学医学部卒業後、横浜市立大学 形成外科入局。横浜市立大学救命救急センターなどでの勤務を経て、1997年より神奈川県立こども医療センターに勤務。2006-2007年 ハーバード大学マサチューセッツ総合病院形成外科リサーチフェローを経て、2008年神奈川県立こども医療センター形成外科科長、2010年より現職。専門は口唇口蓋裂、クルーゾン・アペール・ファイファー症候群などの頭蓋縫合早期癒合症、頭蓋顎顔面領域の疾患