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神奈川県立こども医療センター 形成外科部長 小林 眞司 先生

こちらの記事の監修医師
神奈川県立こども医療センター
形成外科部長 小林 眞司 先生

ふぁいふぁーしょうこうぐん ファイファー症候群

概要

生まれたばかりの赤ちゃんは2歳になるまでに脳の大きさが4倍になるため、頭蓋骨が7つのピースに分かれて急激な成長に対応しています。それぞれのピースのつなぎ目を頭蓋縫合といいますが、この頭蓋縫合が早期にくっついてしまう病気を頭蓋骨縫合早期癒合症と呼んでいます。 「ファイファー症候群」は顔面骨縫合早期癒合も合併するために「症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症」とも呼ばれます。頭蓋・顔面の縫合線が早期にくっついてしまうことで、頭蓋骨や顔面骨の成長に支障を来し脳の発達が阻害されたり、眼球が突出したりと、頭蓋や顔面にさまざまな異常を引き起こします。他に「クルーゾン症候群」や「アペール症候群」などがあります。いずれの症候群も頭蓋縫合の早期癒合によって頭蓋骨や顔面の異常などを引き起こします。ファイファー症候群の場合、幅広く平坦な鼻根や小さな鼻、低い位置で形成された耳、幅広で短く外反した手足の指、隣り合う指同士がくっついてしまう皮膚性合指などがみられるのが特徴です。症状は軽度なものから精神・運動発達の遅れがある重度なものまで多岐に及びます。

原因

非常にまれで、現時点において病気が発生するメカニズムや正確な発生頻度は確認されていません。他の頭蓋骨縫合早期癒合症と同様に、主に遺伝子の突然変異によってファイファー症候群は引き起こされることがわかっています。中でも、fibroblast growth factor receptor1,2(FGFR1、FGFR2)という遺伝子の異常が関連していることが判明しています。

症状

頭蓋骨や顔面骨の縫合線が早期にくっついてしまうことで、どんどん大きくなる脳の成長に対応できず、頭蓋や顔面などが正常に発育できなくなります。その結果、頭蓋では、頭蓋内の圧力が高くなる頭蓋内圧亢進症、脳に過剰な脳脊髄液がたまる水頭症、小脳が下がり陥入するキアリ奇形などの異常が起こります。顔面では、中顔面を構成する骨の成長が妨げられるため、眼球が突出したり、受け口になったり、気道がふさがれ呼吸に支障を来すなどの異常が起こります。ファイファー症候群の特徴としては、幅広く平坦な鼻根や小さな鼻、低い位置で形成された耳、幅広で短く外反した手足の指、隣り合う指同士がくっついてしまう皮膚性合指などが挙げられます。これらの症状は個人差が大きく、軽症の場合は手術後の予後は良好だといわれています。重度な場合は、精神・運動発達に支障を来し、クローバー型の頭蓋になったり、眼球突出の程度が強かったり、巨舌などが見られます。

検査・診断

頭蓋や顔面の特異的な変形がみられるため、ほとんどの場合は診察だけで症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症と診断されます。さらに、ファイファー症候群の特徴であるクローバー型の頭蓋や幅広で短く外反した手足の指、皮膚性合指などがみられると、ファイファー症候群が疑われます。頭蓋内圧亢進症状、水頭症、キアリ奇形など脳の異常などを確認するために、MRI検査やCT検査を実施します。新生児期には、睡眠時無呼吸の有無も確認します。他には頚椎の検査、目の検査、聴力・中耳の検査、口腔内の検査なども行っていきます。

治療

生後に頭蓋骨縫合早期癒合症と診断されると、脳の急速な成長に追いつくために、頭蓋骨を広げる形成手術が必要です。重度の眼球突出がある場合も早めの頭蓋骨の手術が必要になります。また、重度な睡眠時無呼吸がある場合は、経鼻チューブ、気管内挿管、気管切開術を行います。首の骨(環椎と軸椎)が脱臼していると環軸椎の固定術を行うこともあります。その後は年齢や症状、成長などに合わせて、さまざまな対処療法を進めていきます。基本的に短期間の治療や手術で完治することはなく、手術は複数回に及びます。具体的な治療としては、頭蓋内圧亢進症状に対する骨延長手術などの頭蓋形成手術、水頭症に対するシャント手術、キアリ奇形に対する減圧手術、頭蓋・顔面領域の骨延長術、中耳炎の手術、合指症の手術、歯科矯正治療、顔面の再手術や噛み合わせの治療などを行っていきます。

予防/治療後の注意

ファイファー症候群は難病にも指定されている病気です。症状は個人差が大きいため、軽症の場合は手術後の予後は良好だといわれています。とはいえ、短期間の治療や手術によって完治する病気ではないため、定期的に専門の医療機関にて適切な治療や経過観察を受けることが大切です。

神奈川県立こども医療センター 形成外科部長 小林 眞司 先生

こちらの記事の監修医師

神奈川県立こども医療センター

形成外科部長 小林 眞司 先生

山形大学医学部卒業後、横浜市立大学 形成外科入局。横浜市立大学救命救急センターなどでの勤務を経て、1997年より神奈川県立こども医療センターに勤務。2006-2007年 ハーバード大学マサチューセッツ総合病院形成外科リサーチフェローを経て、2008年神奈川県立こども医療センター形成外科科長、2010年より現職。専門は口唇口蓋裂、クルーゾン・アペール・ファイファー症候群などの頭蓋縫合早期癒合症、頭蓋顎顔面領域の疾患