
こちらの記事の監修医師
神尾記念病院
院長 神尾 友信 先生
みかくしょうがい味覚障害
最終更新日:2022/01/04
概要
舌の表面の乳頭と呼ばれる部分や口の中の粘膜には、食べ物の味を感じる感覚器官である味蕾(みらい)があります。味蕾には多数の神経が通っていて、味の情報はこの神経から脳の中枢へと伝わります。味覚障害は、何らかの原因で味蕾や神経、あるいは脳に異常が起きて、味が感じられなくなる、異常な味を感じるようになるといった状態を指します。また、風邪・鼻炎などで嗅覚に障害が起きると、それだけで食べ物の味もわかりにくくなる現象が起きます。味覚障害を引き起こす原因はさまざまです。味覚障害になると、食事量減少や偏食が起きるため栄養状態にも影響し、また、腐った物を食べてもわからなくなる危険も伴います。別の病気が隠れている可能性もあるため、医療機関を受診することをお勧めします。
原因
味覚障害のほとんどは、舌や口腔の異常によって起こります。何らかの原因で味を感じる味蕾が減少、萎縮したり、唾液の分泌が減少したりして味を感じにくくなり、唾液中に分泌された異常な物質が異常な味として感じられます。また、まれに脳腫瘍や脳外傷、脳手術の合併症などによって発症することもあります。味覚障害の原因として多くみられるのが、加齢と亜鉛不足、唾液の減少です。加齢によって舌の乳頭が萎縮することで、味蕾の数が減少し、唾液の分泌も減少します。シェーグレン症候群という、唾液や涙の分泌を減少させる中年女性に多い病気も味覚障害の原因となります。亜鉛は新陳代謝に必要な物質ですが、味蕾は特に新陳代謝が盛んな器官のため、不足すると味覚障害につながります。亜鉛不足を引き起こす代表的な病気は貧血です。また、偏食や薬の副作用、口腔カンジダ症、口内炎、舌炎、歯周病、風邪、新型コロナウイルス感染症でも味覚障害が出ることがあります。
症状
味覚障害の症状で多いのは「味覚低下」です。「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」、「うま味」の5つの基本味覚をはじめとするほとんどの味覚が鈍くなり、「味がしない」「味がわからない」と感じるようになります。また、人によっては、ある特定の味だけが感じにくくなる場合もあります。それに対し、「異味症」という症状が出現することもあり、これは「いつもとは違う味がする」、「何も食べていないのに、常に甘い味や苦い味、塩辛い味などを感じてしまう」といった症状です。風邪による味覚障害は鼻炎による嗅覚の障害を伴いますが、新型コロナウイルス感染症による味覚障害は、嗅覚障害がなくても重度の味覚障害を来す場合があるとされています。
検査・診断
味覚そのものの検査には、舌に微弱な電流を流して神経の伝達を調べる電気味覚検査、甘味、塩味、酸味、苦味の4種類の味をつけたディスクを舌の上に乗せ、どの濃さでわかるかを調べる濾紙ディスク検査、溶液を口に含んでもらい何の味がするか答えてもらう全口腔検査などがあります。さらに唾液の量やpHを調べる検査、亜鉛や鉄の欠乏状態を調べる血液検査、舌の表面の炎症、構造、血流などを確認する検査などを行います。必要に応じて唾液腺機能を調べる核医学検査や嗅覚の検査、原因となる他の病気を調べるためにCT、MRIなどの検査も行うことがあります。
治療
味覚障害の原因が判明した場合は、その原因に応じた治療を行います。貧血が原因である場合は、鉄剤で治療し、亜鉛不足が明らかな場合は亜鉛補充療法を行います。唾液の分泌が少ないときは唾液分泌を促進する薬もあります。口腔カンジダ症は原因となる真菌に対し、うがい薬や口腔に貼る薬などで治療します。舌炎、口内炎も薬で治療し、歯周病は歯垢除去などのケアを行います。また、他の病気の治療で薬を服用している場合、薬の副作用で味覚障害が生じることがありますが、この場合は原因となる薬の服用を中止し、別の薬に変更します。味覚障害を起こす可能性がある薬には高血圧治療薬、抗不安薬、抗生物質、抗アレルギー薬、抗がん剤などがあります。放射線治療で唾液腺機能が傷つけられた場合も同様です。こうした原因がどれも当てはまらなかった場合は、ストレスなどに起因する心因性の味覚障害も考えられるため、その場合は抗不安薬や抗うつ薬などで心の治療を行います。
予防/治療後の注意
味覚障害を予防するには、味蕾の新陳代謝を促す亜鉛をはじめ、ビタミンB12、B2、鉄分、水分などが不足しないよう、バランスの良い食事と水分摂取を心がけましょう。亜鉛の摂取推奨量は1日で男性なら10mg、女性なら8mg。亜鉛は過剰摂取すると銅の吸収阻害につながるため過剰に摂取することは禁物です。医師・歯科医師のアドバイスに従って栄養補給しましょう。味を感じるためには、口腔内に水分が必要ですから、唾液が少ない人は唾液腺のマッサージや、食べる前にうがい、お茶を飲むといった工夫をするのも良いでしょう。

こちらの記事の監修医師
院長 神尾 友信 先生
千代田区神田で創業100年を越える神尾記念病院の4代目院長。先代院長急逝により2009年から院長代行を務め、2010年1月に院長に就任した。「患者に安心感・満足感を感じてもらえる医療」の提供に日々努めながら、病院全体のチームワークを高めることにも力を注ぐ。鼻腔・副鼻腔手術のスペシャリスト。
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