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こちらの記事の監修医師
日本医科大学付属病院
副院長/消化器外科部長 吉田 寛先生

かんこうへん肝硬変

概要

長期にわたって肝臓に慢性的な炎症が起こり、肝細胞が破壊・修復を繰り返すと、肝臓内に結合組織が大量に増える(線維化、やけど後のケロイドに似ている)。そして線維化が進むと、本来はやわらかい肝臓が全体的に硬く小さくなる。この状態を肝硬変といい、肝硬変により硬くなった肝臓は基本的に元の状態には戻らない。肝硬変が悪化すると、消化管出血、腹水やむくみ、黄疸など肝機能の低下や血流障害による症状が現れ、最悪の場合は正常な機能を果たせない肝不全や、肝臓がんに発展する。一方、初期の肝硬変では肝機能はある程度保たれているため、早期に原因を取り除き線維化の進行を食い止めることが重要になる。

原因

長期にわたる慢性的な炎症が肝硬変の主な原因である。その炎症を引き起こす原因として多いのが肝炎ウイルス感染で、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが全体の8割近くを占める。その他、アルコールの過剰摂取、自己免疫性肝炎、薬物による肝障害など、原因はさまざま。中でもアルコールは、肝臓病と切っても切り離せない関係にあるが、飲酒量が適量以下にもかかわらず脂肪肝から肝炎、肝硬変へと発展する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)も増えているため注意が必要。指定難病の一つである自己免疫性肝炎は、免疫システムが自らの肝細胞を破壊してしまう病気で、治療が遅れて肝硬変に至るケースが見られる。中年以降の女性に多く発症するが、近年は男性の罹患者も増えており、子どもや若い人の発症も珍しくはない。

症状

肝機能が保たれている初期の肝硬変は「代償性肝硬変」と呼ばれ、多くは無症状だが、食欲不振、全身の倦怠感、体重減少を訴える患者もいる。病状が進んだ肝硬変は「非代償性肝硬変」といい、黄疸、鼻や歯茎などの出血、手のひらの周辺部が赤くなる「手掌紅斑」、首や胸・頬に赤い発疹ができる「クモ状血管腫」など肝機能の低下に伴う症状が現れる。肝臓で分解できなくなったアンモニアが血中に増加すると肝性脳症となる。肝性脳症を発症すると意識障害から昏睡状態に陥ることも。また、重度の合併症である門脈圧亢進症を発症することも多い。門脈は肝臓に送り込まれる血液の8割近くを供給する大事な血管であるが、肝臓が硬くなることにより門脈血流が肝内に流入しにくくなり門脈圧が亢進する。その結果、腹水、食道胃静脈瘤破裂・出血、肝性脳症などさまざまな症状が出現する。なお、肝硬変では肝臓がんの発症リスクが非常に高くなる。

検査・診断

問診、身体の診察、血液検査、超音波やCTによる画像検査などの結果から総合的に診断する。問診では、アルコール摂取歴、輸血の経験、血縁者にウイルス性肝炎の患者はいないかなどを確認。血液検査では、門脈圧亢進症によって減少する血小板の数値や、肝線維化マーカーの上昇、肝臓で分解されるはずのアンモニアの血中濃度などを調べる。その上で肝硬変を疑う場合は、腹部超音波やCTを用いて肝臓表面の凹凸、門脈系血管の走行異常、腹水の有無を診るほか、細い針を刺して肝臓の一部を取り、組織を検査する肝生検を実施することもある。これらの検査を通じて、肝硬変の原因を知ることはもちろん、重症度、合併症を評価することも重要となる。

治療

肝硬変によって硬くなった肝臓を元の健康な状態に戻すことは難しい。そのため治療では、残された肝機能を維持し、新たな合併症や肝臓がんを予防することを目標にする。代表的なものが、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス療法。薬物を用いてウイルスの排除・減少を図る。また、抗ウイルス療法が適応しないケースなどには、肝炎を鎮静化させて病状悪化を防ぐ肝庇護療法を行う。これにはグリチルリチン製剤といった抗炎症薬が用いられる。一方、自己免疫異常によって起こる肝炎は、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤で病状をコントロールしていく。並行して、肝硬変による合併症の治療も必要である。例えば腹水や浮腫は、塩分や水分を控えた生活を心がけながら、利尿薬やアルブミンの投与を実施。食道静脈瘤は内視鏡的治療やIVR(Interventional Radiology=インターベンショナルラジオロジー)という画像化治療を行い、それらの治療に奏功しない場合は手術を行うこともある。その他、重症度や年齢、生活環境などを加味して治療を進めていく。

予防/治療後の注意

肝硬変の原因として特に多いのが、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染。これらのウイルスは血液や体液を介して感染するため、血液や体液に触れる機会のある人は注意をすること。また、ウイルスに感染していないかを確認するなど、日頃から自分の肝臓の状態を把握することが予防や早期発見につながる。肝硬変に限らず、アルコールが肝臓病の原因となることは多く、飲酒の習慣がある人は適量をたしなむようにしたい。すでにアルコール性肝炎を発症している場合は、アルコールを断つことを含めた生活習慣の立て直しが必要。場合によっては、アルコール依存症専門医への相談も検討する。一方、近年注目を集めている「非アルコール性脂肪性肝疾患」は、食生活の乱れや運動不足によって悪化し、肝硬変に至るケースも確認されているので、脂肪分を控えたバランスの良い食事、適度な運動など、正しい生活習慣を心がけること。

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こちらの記事の監修医師

日本医科大学付属病院

副院長/消化器外科部長 吉田 寛先生

1986年日本医科大学卒業。1992年同大学大学院修了。同大学多摩永山病院外科部長、病院長を経て、2018年に同大学消化器外科主任教授、同大学付属病院副院長に就任。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。