全国のドクター8,977人の想いを取材
クリニック・病院 160,767件の情報を掲載(2021年9月26日現在)

  1. TOP
  2. 症状から探す
  3. 手がふるえるの原因と考えられる病気一覧
  4. アルコール依存症
  1. TOP
  2. こころの病気一覧
  3. アルコール依存症
077

こちらの記事の監修医師
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター
教育情報部長 真栄里 仁 先生

あるこーるいぞんしょうアルコール依存症

概要

お酒の飲み方を自分の力でコントロールできなくなり、飲酒が手段から目的に変わってしまうことをアルコール依存症と呼びます。一旦依存症になってしまうと、自分でも良くないことだとわかっていてもお酒が止まらなくなり、200以上の健康問題の原因となります。日本ではアルコール依存症の患者が100万人以上いると推定されていますが、実際にアルコール依存症として治療を受ける患者数は5万人前後にすぎません。アルコール依存症というと、だらしないなど本人の性格の問題と思われがちですが、大きな業績を残した音楽家や作家、政治家などにもアルコール依存症の人は数多くいます。アルコール依存症になると、病気であることを隠し自分一人でお酒の量を減らしたり止めようしたりしますが、結局はうまくいかずに元の飲み方に戻ってしまいます。しかしアルコール依存症も他の病気と同じように治療法があり、回復される人も数多くいます。できるだけ症状の軽いうちに医療機関を受診し、回復をめざしていきましょう。

原因

アルコールは麻薬と共通する作用がある依存性薬物の一種です。アルコール依存症は飲酒する人なら誰しもかかる可能性のある、脳の報酬系という神経回路が関係する脳の病気です。アルコール依存症となる原因には、大量飲酒、生まれつきお酒を分解する能力が高い体質、未成年からの飲酒などがあります。それ以外にも、うつやパニック障害、摂食障害などの精神的な苦痛を和らげるために、薬代わりに飲酒していくうちに飲酒量が増大しアルコール依存症へとつながることがあり、特に女性や若年層でアルコール依存症は問題となっています。

症状

少量のアルコールは心筋梗塞を減らすなどの体に対し良い効果もありますが、大量の飲酒を長期間続けると、理性では抑えがきかない強い飲酒欲求、お酒に対する慣れが生じてお酒の量が増える(耐性)、アルコールが抜けると神経のバランスが崩れて手の震えや幻覚などが出現する離脱症状など、さまざまな症状が出てきます。また依存症の特有の症状として、飲酒による問題や依存症であることを否定する「否認」があり、受診や治療の妨げとなり悪循環に陥りがちです。また体の合併症では肝臓が有名ですが、それ以外にも脳萎縮、高血圧、膵炎、食道がん、大腸がんなど体のほとんどの臓器に多様な病気を引き起こします。また本人だけでなく、妊娠中の女性の飲酒は、生まれてくる赤ちゃんに奇形や精神発達遅滞を引き起こすこともあります。精神科の合併症では、うつやパニック、女性の摂食障害などが比較的多く見られます。合併症の存在は飲酒問題を悪化させるとともに、元の病気を悪化させる要因にもなっています。

検査・診断

日本では主にWHOの診断基準(ICD-10)の「依存症候群」の診断基準が使われており、①飲酒への渇望、②飲酒コントロール喪失、③耐性、④離脱症状、⑤飲酒中心の生活、⑥否認、のうち過去1年間に3項目以上満たす場合を依存症と診断しています。また 2013年に発表された米国精神医学会の診断基準(DSM-5)も研究などではよく使われています。その中では、従来の依存や乱用に代わって「アルコール使用障害」という概念が提唱されており、軽症の人から重症の人まで幅広くカバーできるようになっています。同診断基準は依存や乱用に関係した11項目からなっており、2〜3項目が該当すれば軽症、4〜5項目が該当すれば中等症、6項目以上が該当すれば重症と判定されます。

治療

アルコール依存症の治療の目標は断酒が原則ですが、軽症で合併症がない場合は飲酒量低減を目標とすることも許容されています。治療手法としては、カウンセリングや病気の教育、断酒を続けるための具体的な技術の習得、安心して断酒できる生活環境のサポートといった社会心理的治療が主になります。薬物療法は、離脱期に使われる離脱症状を抑える抗不安薬、離脱期終了後に使われる人工的に下戸にする「抗酒剤」や、飲酒欲求を抑える「断酒補助剤」などがありますが、いずれも薬さえ飲めば断酒できるようなものではなく、心理社会的治療との組み合わせが必要になります。他にも、最近は軽症アルコール依存症者を対象にした飲酒量低減のための薬も利用されるようになってきました。治療導入のタイミングは、昔は本人が飲酒問題を理解し、断酒を自ら決意するまで周囲は手を出さないというやり方が基本でしたが、最近はアルコール依存症者が飲酒問題を理解し、治療に結び付きやすいように、早期の段階から周囲が積極的に依存症者や家族をサポートする手法が標準的になっています。また、医療機関以外で断酒継続に重要な組織としては、断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)といった自助グループがあります。自助グループは共通の問題を抱える依存症当事者が自由意志で参加し、対等な立場でコミュニケーションを行い回復していくための共同体で、断酒の為だけでなく、仲間との交流を通した心理・社会的な回復を図るための場としての役割も担っています。

予防/治療後の注意

アルコール依存症の予防としては、まずは飲み過ぎないことです。お酒で赤くならない男性の場合1日平均20g(ビール500ml)がリスクの低い飲酒の目安になります。また一旦依存症になった場合には、なるべく早く、軽症のうちに専門の医療機関を受診し、治療を受けることが大切です。ただアルコール依存症は治療を受けたとしても1年後には約7割の患者さんは元の大量飲酒に戻ると報告されているように、とても再発しやすい病気ですから、地域でどのように過ごされるかも重要です。最近は都道府県・政令指定都市ごとに依存症の専門病院や相談窓口の整備が進められていますので、ご本人、ご家族だけで問題を抱え込まず、早めに相談してください。

077

こちらの記事の監修医師

独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター

教育情報部長 真栄里 仁 先生

1996年群馬大学医学部卒業後、琉球大学精神病態医学講座入局。2003年に国立久里浜病院(現・久里浜医療センター)へ異動し、アルコール関連の分野に長く携わる。これまで女性アルコール依存症患者の治療、アルコール・精神デイケア、復職支援プログラムなどを担当し、現在は中年男性アルコール依存症病棟医長。他に研修などの企画・運営にも携わっている。