
こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院 婦人科
田中 京子 先生
ふいくしょう不育症
最終更新日:2022/01/04
概要
妊娠はするが、流産、死産や新生児死亡などを繰り返してしまう状態のこと。ほぼ同義語に「習慣流産」があるが、これらは妊娠22週以降の死産や生後1週間以内の新生児死亡は含まれない。何回流産を繰り返すと不育症であるといった定義は決まっていないが、一般的には2回連続した流産・死産があれば不育症と診断されることが多く、2回以上流産を繰り返した場合を「反復流産」、3回以上繰り返した場合を「習慣流産」といい原因を調べた方がよい。また、出産経験があり、2人目以降が続けて流産や死産となる場合は、続発性不育症として検査や治療を行なうことも。
原因
まだ解明していない点が多く、詳細な検査を実施しても約半数は原因が特定できない。最も多いのは、胎児の染色体異常とされている。リスク因子として、胎児の遺伝子異常、子宮形態異常、甲状腺の異常(機能亢進症や機能低下症)、夫婦の染色体異常、抗リン脂質抗体陽性、凝固因子異常の第XII因子欠乏症、プロテインS欠乏症などがあげられる。また、肥満、糖尿病、飲酒・喫煙、カフェインの大量摂取、精神的なストレスなどの生活習慣も関連性が高いといわれている。
症状
妊娠しても胎児が育たず、流産や死産を繰り返してしまう。1回の自然流産は珍しいことではなく、そのほとんどは、受精卵の偶発的な染色体異常とされている。ただ自然流産が2回続く場合は、偶発的なもののほかに、夫婦のいずれかに何らかの原因がある可能性も否定はできない。また、3回以上流産を繰り返している場合は、積極的な検査と治療・管理が必要となる。出産経験があっても2人目以降続けて流産や死産となる続発性不育症の場合も検査や治療を行うことがある。
検査・診断
3回以上流産を繰り返している場合や原因不明の死産の場合は検査を推奨している。妊娠歴、肥満、喫煙、カフェインの大量摂取、精神的なストレスなどを問診にて確認。甲状腺機能、下垂体ホルモン、卵巣ホルモンについて調べる内分泌(ホルモン)検査、エックス線や内視鏡、超音波(エコー)検査で子宮の形を評価する検査、自分の体に対する抗体を調べる自己抗体検査、血の固まりやすさを調べる凝固系検査、夫婦それぞれの染色体の数や状態を調べる夫婦染色体検査などがある。流産のリスクや流産率が分かる夫婦染色体検査では、万一、染色体構造異常が見つかっても、流産回数は多くても、子供を持てる確率は一般の人と変わらないという。基本的な検査以外は健康保険適応外となる。
治療
リスク因子に応じた治療法を選択する。内分泌異常(糖尿病、甲状腺機能異常)に対しては、薬物療法をはじめ、それぞれに対する治療と管理を行い、正常化をめざす。子宮形態異常においては、タイプによっては必ずしも治療の必要はないが、先天的な子宮奇形や子宮内腔を変形させる子宮筋腫などがある場合には手術を行うことがある。だが、手術後、子宮内膜が癒着して不妊症になるケースも。また、抗リン脂質抗体陽性や第XII因子欠乏やプロテインS欠乏に対しては、低用量アスピリンの内服やヘパリン注射などによる抗血栓療法を行うことで流産率の減少が期待できる。胎児の染色体異常は大量免疫グロブリン療法を行っている大学病院などもある。夫婦の染色体異常は流産回数こそ多いが、子どもを持てる率は一般と変わらないという。原因不明の場合、最近プロゲステロンの投与を用いることが検討されることも。また、理由は明らかではないが、カウンセリングを受けた方が次回の妊娠成功率が高いといわれているので、専門家に相談するとよい。
予防/治療後の注意
約半数は原因が判明していないものの、最も多いのは胎児の染色体異常で偶発的なもの。甲状腺の異常(機能亢進症や機能低下症)や糖尿病は正常化すると成功率が上昇するので、治療を開始しよう。肥満、飲酒・喫煙、カフェインの大量摂取、精神的なストレスなど、関連性が高くリスク因子となる生活習慣の改善に努める。理由は明らかではないが、カウンセリングを受けた方が次回の妊娠成功率が高いといわれているので、不安を抱えるよりも不育症の外来など専門家を受診するとよい。

こちらの記事の監修医師
田中 京子 先生
慶応義塾大学卒業後、同大学病院、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て、東邦大学医療センター大橋病院の准教授へ就任。日本産婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格を持つ。
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