流産を繰り返す「不育症」とは
その原因と治療法を知る
まつみレディースクリニック三田
(港区/三田駅)
最終更新日:2021/12/24
- 保険診療
妊娠はするけれども2回以上の流産、死産を繰り返す「不育症」。近年、少子化が進み妊娠や出生数が減少しているが、その一方で、女性の初産年齢の高齢化により、流産や不育症の割合が増えているといわれている。そもそも不育症とは、どのような状態を指すのだろうか。不育症と診断された場合、どのような治療法があるのだろうか。長年先端的な不妊治療に携わり、不育症の治療にも力を入れる東京・三田の「まつみレディースクリニック三田」の松見泰宇(まつみ・ひろたか)院長に、不育症の原因や治療法について聞いた。
(取材日2021年2月4日)
目次
患者の不安や悩みに寄り添いながら、適切な診査・診断、治療を行う
- Q不育症とは、どのような状態を指すのでしょうか?
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A
妊娠しても、2回以上の流産や死産を繰り返して元気な赤ちゃんを授かることができない状態を「不育症」と呼びます。年齢にもよりますが、1回の自然流産は決してまれなことではなく、妊娠した人の10~15%に起こりえます。流産の原因で最も多いのは、胎児の染色体異常とされ、ほとんどの流産は偶発的なものです。しかしこれを繰り返す場合は、母体側、父親側、または双方に流産を繰り返す原因がある可能性が考えられるのです。現在、妊娠を希望しているのに1年以上妊娠しない「不妊症」はよく知られていますが、不育症は認知度が低く、当院に相談に来て初めて知る方もいらっしゃいます。
- Q不育症は、珍しいことなのでしょうか。
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A
一般的に妊娠した人の10~15%に流産は起こるとされますが、特に妊娠10週までは流産してしまうリスクが高いです。年齢が上がるとリスクも高まる傾向にあるため、原因がはっきりしない流産や死産を経験された方は、専門クリニックに相談されるのが良いと思います。当院では不育症の検査や治療に力を入れていますが、インターネットで調べ、1回の流産で自身の不育症を疑い検査を希望される方、不妊専門の他のクリニックに通いながらも、当院で不育症の相談を希望される方もいらっしゃいます。不育症は珍しいことではありませんし、適切な治療により克服をめざせる病気だと思います。「自分だけかも」と殻に閉じこもる必要はありません。
- Q不育症の原因は、どんなところにあるのですか?
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A
不育症の原因は多岐にわたっていますが、胎児の染色体に原因がある場合、子宮内の環境に原因がある場合の大きく2つが挙げられます。子宮内の環境に原因がある場合、子宮の形態の異常、ホルモン異常、血液の固まりやすさの異常、免疫の異常、これらの4つのうちどれかが要因となっている可能性があります。精神的なストレスにより血管が収縮してしまうことや、食生活の乱れにより妊娠に必要な栄養が足りていないことなども、リスク因子として挙げられます。検査により原因を究明し、適切な診断、治療を行うことも大切だと思います。
- Qどのような検査や治療を行うのでしょう?
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A
当院では、血液検査、超音波検査、子宮鏡検査などを行い不育症の原因を探り、患者さんの希望も踏まえて、治療を進めます。例えば、血液が固まりやすい場合は血栓を防ぐための薬を処方する、子宮形態に異常がある場合は外科的治療を行う、甲状腺ホルモンの異常があれば、甲状腺機能を正常化させる、免疫異常にはステロイドを投与する、栄養不良の場合は妊娠中に必要なビタミンDや葉酸の摂取を勧めるなど、個々に適したサポートを行います。また、ドクターやスタッフとの対話により患者さんのストレスや不安をやわらげるアプローチとして「テンダー・ラビング・ケア」にも力を入れています。
- Qテンダー・ラビング・ケアは、どのようなことをするのですか?
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A
投薬や外科的な治療を施すのでなく、患者さんに優しく寄り添い、治療や体についての不安や悩みをじっくりお伺いします。これは不育症に対するアプローチの一つとして知られています。不育症のメカニズムは、まだ医学的に十分に解明されていない部分もあり、統計では不育症の約6割の方は検査をしても明らかな異常が特定できませんが、ドクターに話を聞いてもらいアドバイスを受けることで、患者さんのメンタルの安定につながると考えられています。適切なカウンセリングを通じて、元気な赤ちゃんを授かるためのサポートを行うのです。当院では、妊娠されてからしばらくは週に1度通院して、テンダー・ラビング・ケアを受ける方が多いです。